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終わらせるための魔法使い――魔物パンデミックと、壊れた世界の正しさ――  作者: 自ら(Youtubeで朗読ver投稿中‼️)


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第18話「亀裂の予兆」

翌日、レッドゾーンで、俺は異変に気づいた。


魔物が、いない。


いつもなら、数時間歩けば数匹の魔物と遭遇する。だが、今日は違う。午前中を丸々歩いても、一匹も見つからない。


俺は立ち止まって、周囲を見回した。


静かすぎる。不気味なほどに、静かだ。風の音、自分の足音、それだけしか聞こえない。魔物の咆哮も、気配も、何もない。


左腕が呟く。


「ああ。魔物が、どこかへ移動している」


「どこへ」


「分からない。だが、一定の方向へ向かっている」


俺は魔物が向かっている方向を確認した。北だ。


「調査する」


俺は北へ向かった。


街を進む。崩壊したビル、錆びた車、草が生えた道路。変わらない光景だ。だが、何かが違う。空気が、重い。まるで、何かが起きる前の、嵐の前の静けさのような。


歩き続けると、遠くで光が見えた。


巨大な光だ。まるで太陽が地上に落ちたかのような、眩しい光。空間が歪んでいるように見える。


俺は慎重に光の方向へ向かった。足音を消して、ビルの影を利用しながら進む。


やがて、広場に出た。


そこに、「それ」があった。


巨大な亀裂。


以前、俺が見た亀裂よりも、はるかに大きい。高さは20メートル以上、いや、もっとあるかもしれない。幅も15メートルはある。まるで世界そのものが裂けているかのようで、亀裂の向こうからは不気味な光が漏れている。光は脈打つように明滅していて、まるで生き物のように見える。


亀裂の周囲には、空間の歪みがある。空気が揺らいでいて、まるで陽炎のように景色が歪んで見える。近づくと、耳鳴りがする。低い音が、頭の中に響く。


左腕が警告する。


「これは危険だ」


「何だ」


「新しい亀裂だ。しかも、強い魔物が出てくる」


「どれくらい強い」


「分からない。だが、S級の可能性もある」


S級。一年前、美咲を殺したあの魔物と同じ級だ。


俺は亀裂を見つめた。


そのとき、後ろで足音が聞こえた。


俺は振り返った。


桐生が立っていた。


桐生も俺を見て、少し驚いた顔をする。


「お前も、来たか」


桐生が言う。


「調査か」


「ああ」


桐生が亀裂に近づいてくる。俺の隣に立つ。


二人で、亀裂を見る。


沈黙が続いた。亀裂から漏れる光が、二人の顔を照らしている。桐生の顔には、深い皺が刻まれていて、疲労の色が見える。だが、その目は鋭く、まだ何かを守ろうとする意志が宿っている。


やがて、桐生が口を開いた。


「これは危険だ」


「ああ」


「報告しなければならない。避難を呼びかける」


桐生がそう言って、俺を見る。


「お前も、協力してくれ」


俺は少し考えた。


協力する。それは、人々と関わることだ。また、誰かを失うかもしれない。


だが、この亀裂から何かが出てくれば、グリーンゾーンも危険だ。長谷川も、陽菜も、冴も、皆が危険にさらされる。


俺は頷いた。


「…考える」


桐生が少し驚いた顔をする。だが、すぐに笑顔を見せた。


「それで十分だ」


桐生が亀裂から離れる。


「行くぞ。ここは危険だ」


俺も亀裂から離れた。


二人で広場を去る。


だが、俺は振り返って、亀裂をもう一度見た。亀裂は相変わらず脈打っている。光が強まったり弱まったりして、まるで何かが内側から押し出そうとしているかのようだ。空気が震えている。地面も、微かに揺れている。まるで巨大な心臓が地中に埋まっていて、その鼓動が地表に伝わってくるかのような感覚だ。


左腕が呟く。


「あの亀裂から、何が出てくるのか」


「分からない」


「戦うのか」


俺は答えなかった。


戦えるのか。あの亀裂から出てくる魔物と。


一年前、S級魔物と戦った。美咲が死んだ。俺が暴走した。集落が崩壊した。


また、同じことが起きるのか。


俺は歩き続けた。桐生と共に、広場を離れる。


グリーンゾーンへ向かう途中、桐生が口を開いた。


「お前、いくつだ」


「21だ」


「若いな」


桐生が少し笑う。


「俺が21のときは、まだ警察学校にいた。毎日訓練ばかりで、辛かったが、仲間がいた」


桐生が遠くを見る。


「今は、一人だ」


俺は何も言わなかった。


桐生は続けた。


「娘が生きていれば、お前くらいの年齢だった」


「そうか」


「娘は、優しい子だった。人を助けるのが好きだった。お前とは、違うな」


桐生が少し笑う。


「だが、お前も、本当は優しいんだろう」


俺は答えなかった。


桐生は何も言わなくなった。


二人で、静かに歩く。


夕方、俺はアパートに戻った。


部屋に入って、窓の外を見る。


遠くに、亀裂の光が見える。ここからでも見えるほど、巨大な光だ。街の向こうで、光が脈打っている。


左腕が呟く。


「戦うのか」


俺は左腕を見た。


「分からない」


「逃げるという選択もある」


「逃げても、追ってくる」


「そうか」


左腕は何も言わなくなった。


俺は窓の外を見続けた。


亀裂の光が、次第に強まっているように見える。まるで何かが近づいているかのように、光が激しく明滅している。空気が重い。息苦しい。胸が締め付けられるような感覚だ。


俺は窓を閉めた。


だが、不安は消えない。


何かが、来る。


それは確実だ。


俺はベッドに横になった。天井を見る。


明日、何が起きるのか。亀裂から、何が出てくるのか。俺は、戦えるのか。


分からない。


ただ、一つだけ分かることがある。


平和な日々は、もう終わる。


読んで下さりありがとうございました!

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