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終わらせるための魔法使い――魔物パンデミックと、壊れた世界の正しさ――  作者: 自ら(Youtubeで朗読ver投稿中‼️)


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第17話「灯火の誘い」

その日の午後、俺がグリーンゾーンの街を歩いているとき、女性が声をかけてきた。


「柊慎吾さん、ですね」


俺は立ち止まった。


女性が立っている。30代くらいで、知的な雰囲気を持っている。スーツを着ていて、髪を後ろで束ねている。目は冷静だが、どこか優しさもある。


「誰だ」


俺は警戒した。


「私は二階堂冴。灯火の会の代表です」


女性――冴が名乗る。


灯火の会。陽菜が所属している組織だ。避難民を守るために作られたと聞いている。


「用件は」


「単刀直入に言います。一緒に避難民を守りませんか」


冴が言う。その声は落ち着いていて、自信に満ちている。


俺は即座に答えた。


「断る」


冴は驚いた顔をしなかった。まるで、この答えを予想していたかのように、ただ頷いた。


「即答ですね」


「興味がない」


「なぜですか」


「俺は誰も守らない」


冴が少し考えてから、口を開いた。


「あなたの力があれば、多くの人を守れます」


「俺には関係ない」


「本当に、そう思いますか」


冴が俺を見る。その目は、まるで俺の心を見透かしているかのようだ。


「過去に、何かあったのですね」


俺は何も答えなかった。


冴は続けた。


「無理強いはしません。ただ、もし気が変わったら、いつでも灯火の会に来てください」


冴はそう言って、去ろうとした。だが、立ち去る前に振り返った。


「またお会いしましょう」


冴は去っていった。


俺は、ただそこに立っていた。


左腕が呟く。


「興味はない」


俺は歩き始めた。


その日の夕方、冴は灯火の会の拠点に戻っていた。


拠点の一室で、冴は窓の外を見ていた。夕日が沈んでいく。


ドアがノックされる。


「入って」


冴が言う。


陽菜が入ってきた。


「代表、柊さんとお話しできましたか」


「ええ。でも、拒絶されたわ」


陽菜が少し顔を曇らせる。


「そうですか…」


冴は陽菜を見た。


「焦らなくていいのよ。時間をかけましょう」


「はい」


陽菜が頷く。


「あの人は、使える駒だわ。でも、無理強いはしない。それでは逆効果よ」


冴が言う。陽菜は少し複雑な顔をしたが、何も言わなかった。


陽菜が部屋を出た後、冴は再び窓の外を見た。


冴は、柊慎吾に興味を持っていた。強力な魔法使いで、単独でレッドゾーンに入れる。そんな人間は貴重だ。灯火の会にとって、有用な存在だ。


だが、それだけではない。


冴は、慎吾の目を見た。あの目には、痛みがある。自分を責めている目だ。


冴は、その目を知っている。


なぜなら、冴自身も、同じ目をしているから。


冴には、過去がある。


魔物が出現する前、冴は高校で教師をしていた。国語の教師で、生徒たちに慕われていた。冴は教えることが好きだった。生徒たちの成長を見るのが、喜びだった。


だが、魔物が出現した日、全てが変わった。


学校に魔物が襲ってきた。生徒たちがパニックになる。冴は生徒たちを守ろうとした。避難誘導をして、安全な場所へ連れて行こうとした。


だが、全員は守れなかった。


何人かの生徒が、魔物に襲われた。死んだ。


冴は、自分の無力さを痛感した。教師として、生徒たちを守るべきだった。だが、守れなかった。


それから、冴は灯火の会を作った。生き残った人々を守るために。教え子たちを守れなかった贖罪として。


冴は窓の外を見続けた。夕日が完全に沈んで、夜が来る。


「生き残った人々を、守る」


冴は呟いた。


「それが私の贖罪」


一方、俺はアパートに戻っていた。


部屋に入ると、ドアがノックされた。


俺はドアを開けた。


長谷川が立っていた。手には、大きな鍋を持っている。


「柊くん、今日は特別だ」


長谷川が笑顔で言う。


「温かい料理を作ったんだ。一緒に食べよう」


俺は戸惑った。


「いえ、俺は…」


「遠慮するな。一人で食べるより、二人で食べた方が美味しいんだよ」


長谷川が部屋に入ってくる。鍋をテーブルに置く。


「待っててくれ。器を持ってくる」


長谷川が自分の部屋に戻って、すぐに器とスプーンを持って戻ってきた。


鍋の蓋を開ける。中には、シチューが入っている。野菜と肉が入っていて、いい匂いがする。


長谷川がシチューを器によそって、俺に渡す。


「食べて。冷めないうちに」


俺は器を受け取った。スプーンで一口食べる。


美味しい。


温かくて、優しい味だ。野菜の甘みと、肉の旨味が混ざり合っている。


長谷川も食べ始める。


「どうだい」


「…美味しいです」


「そうか。良かった」


長谷川が笑顔を見せる。


二人で、静かに食事をする。


やがて、長谷川が口を開いた。


「一人は辛いだろう」


俺は何も答えなかった。


「無理するな」


長谷川が続ける。


「頼ってもいいんだよ。人間は、一人では生きられない」


俺は長谷川を見た。


「俺は…」


「何も言わなくていい。ただ、覚えておいてくれ。お前は一人じゃない」


長谷川がそう言って、笑顔を見せる。


俺は、何も言えなかった。


食事が終わって、長谷川が鍋を片付ける。


「また来るよ」


長谷川が言う。


「ありがとうございました」


俺は頭を下げた。


長谷川が部屋を出た後、俺は窓の外を見た。


夜空に星が見える。


長谷川の優しさ。桐生の言葉。冴の提案。陽菜の笑顔。


俺の周りに、人々が集まっているが、俺はまだ関われない。


また、失うのが怖い。


俺は左腕を見た。左腕は何も言わなかった。


俺はベッドに横になった。天井を見る。


シチューの温もりが、まだ体に残っている。


久しぶりに、温かい気持ちになった。


だが、それも、すぐに消える。


俺は目を閉じた。


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