表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終わらせるための魔法使い――魔物パンデミックと、壊れた世界の正しさ――  作者: 自ら(Youtubeで朗読ver投稿中‼️)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/17

第16話「陽菜の執着」

翌日、レッドゾーンで、俺はまた陽菜と遭遇した。


俺がB級魔物と戦っているとき、突然、光の矢が飛んできた。


俺は振り返った。


陽菜が立っていた。いつもの笑顔で、杖を持っている。


「また来ました!」


陽菜が明るく言う。


俺は魔物に向き直った。B級魔物は、熊のような姿で、体長は3メートル以上ある。俺に向かって襲いかかってくる。


俺は火炎魔法で応戦する。だが、陽菜の支援魔法が邪魔だ。光の矢が魔物に当たるが、威力が弱い。魔物は怯まない。それどころか、陽菜の攻撃で魔物の注意が分散して、俺の攻撃のタイミングが狂う。


俺は左腕の力を使った。黒い炎が魔物を包む。魔物が咆哮する。燃える。やがて倒れる。


戦闘が終わった。


俺は陽菜を見た。


「邪魔だ」


俺は言った。


陽菜の笑顔が少し揺らぐ。


「でも、お手伝いできましたよ」


「お前は弱い。戦場に来るな」


陽菜が少し顔を曇らせる。だが、すぐに笑顔を作る。


「強くなりたいんです」


「なぜ」


「守りたい人がいるから」


俺は陽菜を見た。守りたい人。そんなものがあるのか。


「俺には関係ない」


俺は言った。


「二度と来るな」


俺は去ろうとした。


だが、陽菜が叫んだ。


「教えてください!」


俺は振り返った。


陽菜が必死な顔をしている。笑顔ではない。初めて見る、真剣な顔だ。


「強くなる方法を、教えてください」


「教えられない」


「なぜですか」


「お前は、才能がない」


俺は言った。


陽菜が息を呑む。


「お前の魔法は弱い。支援魔法しか使えない。戦闘には向いていない」


「でも…」


「諦めろ」


俺は去った。


陽菜の声が、後ろから聞こえた。


だが、俺は振り返らなかった。


その日の夕方、陽菜は一人、廃墟の建物の影で座っていた。


涙を堪えている。だが、涙が溢れてくる。


陽菜は顔を手で覆った。


「才能がない」


柊の言葉が、心に刺さる。


陽菜は知っている。自分が弱いことを。支援魔法しか使えないことを。戦闘には向いていないことを。


だが、それでも、強くなりたい。


なぜなら。


陽菜の心に、記憶が蘇った。


二年前、魔物が出現した日のことだ。


あの日、陽菜は弟と一緒に公園にいた。弟の名前は、陽太。中学生で、陽菜より五歳年下だった。明るくて、よく笑う子だった。陽菜は弟が大好きだった。


公園で、二人は話していた。陽太の学校のこと、陽菜の大学のこと。他愛のない話。


そのとき、空が裂けた。


突然、空間に亀裂が現れて、不気味な光が漏れてくる。人々が空を見上げる。何が起きたのか、誰も分からない。


そして、亀裂から、「それ」が出てきた。


魔物だ。


犬のような姿だが、巨大で、牙が鋭く、目が赤く光っている。


人々がパニックになる。悲鳴が上がる。皆、逃げ始める。


陽菜も、陽太の手を引いて走った。


「お姉ちゃん!」


陽太が叫ぶ。


「大丈夫!走って!」


陽菜が答える。


二人で走る。公園を出て、街を走る。だが、魔物が追ってくる。速い。あっという間に距離が縮まる。まるで獲物を追う獣のように、魔物は容赦なく追いかけてくる。


陽菜は走り続けた。息が切れる。足が痛い。だが、止まれない。止まれば、死ぬ。


そのとき、陽太が転んだ。


地面に倒れる。膝を擦りむく。血が出る。


陽菜は立ち止まった。


振り返る。陽太が地面に倒れている。魔物が近づいている。もう、数メートルしか離れていない。


陽菜は迷った。


戻るべきか。陽太を助けるべきか。


だが、戻れば、自分も死ぬ。魔物は速い。二人とも、逃げられない。


陽菜の頭の中で、何かが囁いた。


「逃げろ」


「自分だけでも、生き延びろ」


陽菜は、一歩、後ろに下がった。


陽太が陽菜を見た。


「お姉ちゃん!」


陽太が叫ぶ。その声には、恐怖がある。助けを求める声だ。


だが、陽菜は、もう一歩、後ろに下がった。


そして、陽菜は、走った。


陽太を置いて、逃げた。


後ろで、陽太の悲鳴が聞こえた。


「お姉ちゃん!」


「助けて!」


だが、陽菜は走り続けた。涙を流しながら、ただ走った。耳を塞ぎたかった。陽太の声を聞きたくなかった。だが、耳は塞げない。走りながら、陽菜は陽太の悲鳴を聞き続けた。


やがて、悲鳴が止んだ。


陽菜は立ち止まった。


振り返る。


遠くに、魔物が見える。魔物の口に、血がついている。


陽太の姿は、見えない。


陽菜は叫んだ。


その日から、陽菜は変わった。


笑顔を作るようになった。明るく振る舞うようになった。人々を助けるようになった。


なぜか。


贖罪のためだ。


陽太を見捨てた自分を、許せないから。だから、他の人々を守ろうとしている。笑顔で、明るく、希望を与えようとしている。強くなろうとしている。


だが、それは偽りだ。陽菜の笑顔は、作り物だ。心の底には、罪悪感と悲しみがある。


陽菜は涙を拭いた。


立ち上がる。


「諦めない」


陽菜は呟いた。


「強くなる。絶対に」


「そして、あの人を、助ける」


なぜ、柊慎吾を助けたいのか。


なぜなら、彼は陽菜と同じ目をしているから。痛みを隠している目を。自分を責めている目を。


陽菜は、放っておけない。


陽菜は灯火の会の拠点に戻った。


拠点では、人々が夕食の準備をしている。子供たちが走り回っている。


陽菜が入ると、子供たちが駆け寄ってきた。


「陽菜お姉ちゃん!」


陽菜は笑顔を作った。


「ただいま」


子供たちが陽菜に抱きつく。陽菜は子供たちの頭を撫でる。


だが、陽菜の笑顔は、作り物だ。


夜、陽菜は自分の部屋で、鏡を見ていた。


鏡の中の陽菜は、笑っていない。疲れた顔をしている。目に光がない。まるで、魂が抜けたかのような顔だ。


陽菜は笑顔を作った。いつもの、明るい笑顔を。


「大丈夫」


陽菜は自分に言い聞かせる。


「大丈夫。私は、強い」


だが、鏡の中の陽菜は、本当は笑っていない。


陽菜は窓の外を見た。星が見える。


陽太は、今、どこにいるのだろう。


天国にいるのだろうか。


それとも、陽菜を恨んでいるのだろうか。


陽菜は知らない。


ただ、陽菜は、生きている。


陽太の分まで、生きている。


そして、人々を守っている。


それが、陽菜の贖罪だ。


読んで下さりありがとうございました!

★★★★★評価と[[[ブックマーク]]]、リアクションお願いします!

Youtubeにて作品公開中!

http://www.youtube.com/@mizukara-h2z

ご感想やご質問など、ぜひコメントでお聞かせください。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ