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終わらせるための魔法使い――魔物パンデミックと、壊れた世界の正しさ――  作者: 自ら(Youtubeで朗読ver投稿中‼️)


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第12話「希望という名の騒音」

レッドゾーンで、俺はB級魔物と戦っていた。


大型の魔物で、体長は3メートルほどある。熊のような姿だが、牙が鋭く、爪が長い。俺に向かって襲いかかってくる。


俺は避けて、火炎魔法を放った。炎が魔物を包む。だが、魔物は怯まない。毛皮が厚くて、炎が届かない。


左腕の力を使う。黒い炎が生まれて、魔物に向かう。今度は効いた。魔物が咆哮する。燃える。


だが、その瞬間、横から光の矢が飛んできた。


魔法だ。


光の矢が魔物に当たる。魔物が怯む。


俺は振り返った。


女性が立っていた。


20歳くらいだろうか。明るい表情で、笑顔を見せている。手には杖を持っている。魔法使いだ。


女性が明るい声で言った。


「お手伝いします!」


俺は魔物に向き直った。魔物が再び俺に向かってくる。俺は黒い炎で魔物を焼き尽くした。魔物が倒れる。動かなくなる。


戦闘が終わった。


俺は女性を見た。女性は笑顔のままだ。


「邪魔だ。消えろ」


俺は言った。


女性の笑顔が少し揺らいだ。だが、すぐに元に戻る。


「でも、お手伝いできましたよ」


「必要ない。二度と来るな」


俺は火炎魔法を使った。女性の足元に炎を放つ。地面が焼ける。


女性が後ずさる。だが、まだ笑顔を保っている。


「次は当てる」


俺は言った。


女性は少し考えてから、頷いた。


「分かりました。でも、また来ます」


女性はそう言って、去っていった。


俺は女性の背中を見送った。何だ、あれは。明るすぎる。この世界で、あんな笑顔を見せられる人間がいるのか。


左腕が呟く。


「興味はない」


俺は歩き始めた。


だが、女性の笑顔が頭から離れなかった。あの笑顔は、作り物だ。無理に笑っている。そう感じた。


その日の夕方、俺はグリーンゾーンのアパートに戻った。


部屋に入って、窓の外を見る。夕日が沈んでいく。


左腕が呟く。


「あの女は、お前と同じだ」


俺は左腕を見た。


「痛みを隠している。笑顔の裏に、何かがある」


「…関係ない」


「そうか」


左腕は何も言わなくなった。


俺は窓の外を見続けた。夕日が完全に沈んで、夜が来る。


一方、女性――陽菜は、灯火の会の拠点に戻っていた。


灯火の会は、避難民を守るために作られた組織だ。元学校の建物を拠点にしていて、数十名の人々が協力して生活している。


陽菜が拠点に入ると、子供たちが駆け寄ってきた。


「陽菜お姉ちゃん、おかえり!」


「ただいま」


陽菜が笑顔で答える。子供たちが陽菜に抱きつく。陽菜は子供たちの頭を撫でた。


「今日も魔物と戦ったの?」


「うん。でも、大丈夫。怪我してないよ」


子供たちが安心した顔をする。陽菜は笑顔を保ったまま、奥の部屋に向かった。


部屋には、女性が一人いた。30代くらいで、知的な雰囲気を持っている。灯火の会の代表、二階堂冴だ。


「おかえりなさい、陽菜」


冴が言う。


「ただいまです」


陽菜が座る。


「例の魔法使いには会えた?」


「はい。でも、拒絶されました」


陽菜が報告する。冴は少し考えてから、頷いた。


「そう。でも、諦めないのでしょう」


「はい」


陽菜が笑顔で答える。冴はその笑顔を見て、少し眉をひそめた。


「無理しないでね」


「大丈夫です」


陽菜はそう言って、部屋を出た。


陽菜は自分の部屋に戻った。小さな部屋で、簡易ベッドと小さな机だけがある。窓から外が見える。


陽菜は窓の外を見た。夜空に星が見える。


そして、陽菜の心に、記憶が蘇った。


二年前、魔物が出現した日のことだ。


陽菜は弟と一緒にいた。弟は中学生で、陽菜より五歳年下だった。二人で公園にいたとき、突然、空が裂けた。


亀裂が現れて、魔物が出てきた。


人々が逃げ惑う。陽菜も弟と一緒に走った。


だが、魔物が追ってきた。速い。あっという間に距離が縮まる。


陽菜は走り続けた。だが、弟が転んだ。


陽菜は振り返った。弟が地面に倒れている。魔物が近づいている。


陽菜は迷った。戻るべきか。だが、戻れば、自分も死ぬ。


陽菜は、逃げた。


弟を置いて、逃げた。


後ろで、弟の悲鳴が聞こえた。


陽菜は走り続けた。涙を流しながら、ただ走った。


やがて、悲鳴が止んだ。


陽菜は後ろを振り返った。弟の姿はなかった。魔物が、そこにいた。血がついている。


陽菜は叫んだ。


あの日から、陽菜は変わった。笑顔を作るようになった。明るく振る舞うようになった。人々を助けるようになった。


なぜか。


贖罪のためだ。


弟を見捨てた自分を、許せないから。だから、他の人々を守ろうとしている。笑顔で、明るく、希望を与えようとしている。


だが、それは偽りだ。陽菜の笑顔は、作り物だ。心の底には、罪悪感と悲しみがある。


陽菜は窓の外を見続けた。星が綺麗だ。だが、陽菜には、その美しさが見えない。


陽菜は呟いた。


「諦めない」


あの魔法使い――柊慎吾を、助ける。なぜなら、彼は陽菜と同じ目をしているから。痛みを隠している目を。


陽菜は、放っておけない。


陽菜はベッドに横になった。天井を見る。


そして、陽菜は鏡を見た。部屋の隅に小さな鏡がある。


鏡の中の陽菜は、笑っていない。疲れた顔をしている。目に光がない。


陽菜は笑顔を作った。いつもの、明るい笑顔を。


「大丈夫」


陽菜は自分に言い聞かせる。


「大丈夫。私は、強い」


だが、鏡の中の陽菜は、まだ笑っていなかった。

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