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終わらせるための魔法使い――魔物パンデミックと、壊れた世界の正しさ――  作者: 自ら(Youtubeで朗読ver投稿中‼️)


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第10話「孤独への回帰」

目が覚めた。


体が重い。まるで鉛が詰まっているかのように、動かすのが辛い。


俺はゆっくりと起き上がった。周囲を見る。


焼け野原だ。


集落があった場所は、全てが焼けている。建物は崩れ、地面は黒く焦げている。まるで戦場の跡地のようで、いや、実際にここは戦場だったのだろう。俺が引き起こした、一方的な破壊の痕跡だ。


人の気配はない。皆、逃げたのだろう。俺から。化け物から。


俺は立ち上がった。足元がふらつく。


美咲は、どこだ。


俺は周囲を探した。焼けた瓦礫の中を、歩く。


そして、見つけた。


美咲の遺体だ。


焼けている。顔も、体も、全てが焼けている。だが、それでも美咲だと分かる。いつも優しい笑顔を見せてくれた美咲が、今は焼け焦げた遺体となって、地面に横たわっている。


俺が、焼いた。


俺が、美咲を殺した。


守るはずだった。守ると決めた。だが、守れなかった。それどころか、俺が殺した。


俺は美咲の遺体の前に座り込んだ。


「ごめん」


俺は呟いた。


「ごめん、美咲さん」


だが、美咲は答えない。もう、二度と笑顔を見せることはない。


左腕が呟く。


「俺のせいだ」


「違う。俺の責任だ」


俺は立ち上がった。


美咲を、埋葬しなければ。


俺は近くの瓦礫を片付けて、地面を掘った。素手で掘る。手が痛い。爪が割れる。だが、止まらない。


穴を掘って、美咲の遺体を、そっと横たえた。


土をかける。美咲の顔が、土に覆われていく。もう、見えなくなる。


墓を作った。瓦礫で墓標を立てる。


俺は墓の前に座った。


「ごめん」


また、呟いた。


「また、守れなかった」


母。妹。高橋。三田。そして、美咲。


皆、死んだ。俺が、守れなかった。


「もう、誰とも関わらない」


俺は立ち上がった。


「一人で、生きる」


左腕が何か言おうとしたが、俺は聞かなかった。


俺は集落を去った。


荷物を持って、一人で歩き始めた。


どこへ行くのか、分からない。ただ、ここから離れたかった。美咲の墓から、焼け野原から、全てから離れたかった。


街を歩く。廃墟の街を、一人で歩く。


冬が来ていた。雪が降り始めている。冷たい雪が、俺の顔に当たる。


俺は歩き続けた。


それから、一年間、俺は放浪した。


東京を離れて、他の都市へ行った。横浜、川崎、千葉。どこも同じだった。廃墟と魔物しかない。人はいない。いや、時々、生存者を見かけることはあった。だが、俺は関わらなかった。すぐに去った。もう、誰とも関わりたくない。また失いたくない。


俺は一人で生き延びた。魔物を倒し、食料を集め、ただ生きた。


季節が変わった。冬が終わり、春が来た。桜が咲いた。誰も見ない桜が、廃墟の街で咲いている。まるで人類の滅亡など関係ないかのように、自然は変わらず巡っている。


春が終わり、夏が来た。暑い。汗が流れる。俺は川で水を浴びた。


夏が終わり、秋が来た。紅葉が美しい。だが、誰も見ない。


秋が終わり、また冬が来た。


一年が経った。美咲が死んでから、一年が経った。


俺は、まだ生きている。


なぜ生きているのか、分からない。生きる理由も、目的も、何もない。ただ、生きている。


放浪を始めて一年が経ったとき、俺は再び東京に戻ることにした。


なぜか。自分でも分からない。ただ、東京に戻りたかった。


東京に、全てがあった。家族も、仲間も、全て。そして、全て失った。


だから、東京に戻る。


俺は東京へ向かって歩いた。数日かけて、東京に辿り着いた。


東京は相変わらず廃墟だった。崩壊したビル、錆びた車、草が生えた道路。何も変わっていない。まるで時間が止まっているかのように、東京はあの日のままだった。


俺はかつての自宅に行った。


瓦礫の山になっている。母と妹の墓がある。


俺は墓の前に座った。


「ただいま」


俺は呟いた。


「また、来たよ」


墓は何も答えない。


「俺は、弱かった」


俺は続けた。


「守れなかった。母さんも、妹も、高橋さんも、三田さんも、美咲さんも」


「皆、死んだ」


「俺が、守れなかった」


俺は顔を上げた。


「もう、誰とも関わらない」


「一人で、生きる」


「そして、いつか、死ぬ」


俺は立ち上がった。


東京のレッドゾーンで生活を始めることにした。


廃墟となったマンションの一室を拠点にした。窓から外が見える。街が見える。廃墟の街が。


俺は魔物を倒して、食料を集めて、ただ生きた。


誰とも話さない。左腕とだけ話す。


左腕も、最近はあまり話さなくなった。俺が答えないから。


時間が過ぎていく。


数ヶ月が経った。


俺は変わらない。ただ、生きている。


朝になれば、魔物を倒しに行く。夕方になれば、マンションに戻る。夜になれば、眠る。そして、また朝が来る。


同じ日が、繰り返される。


変化はない。


ある日、左腕が呟いた。


「このままでいいのか」


「これでいい」


「寂しくないのか」


「慣れた」


左腕は何も言わなくなった。


俺は窓の外を見た。


夜明け前だ。空が少し明るくなってきた。新しい一日が始まる。だが、昨日と同じ一日だ。


俺は立ち上がって、武器を手に取った。


今日も、魔物を倒しに行く。


マンションを出る。街を歩く。


廃墟の街を、一人で歩く。


朝日が昇り始めている。オレンジ色の光が、崩壊したビルを照らしている。まるで世界が燃えているかのような色だ。


俺は歩き続ける。


魔物の気配を探す。


そして、時間は現在に繋がる。


魔物出現から、二年が経った。


俺は、まだ生きている。


「終わらせる」


あの日、そう言った。


だが、何を終わらせるのか。


魔物を終わらせるのか。この世界を終わらせるのか。それとも、自分を終わらせるのか。


分からない。


ただ、生きている。


孤独に、虚無に、ただ生きている。


それが、今の俺だ。

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