第8話 魔法への疑問
夕焼けが空を赤く染め、小麦畑はまるで黄金の波のように揺れている。
勇者はテーブルに座り、窓の外の幻想的な風景を眺めていた。
少し体が痛いかな?電撃魚を捕まえる為、久しぶりに動いたからな。
テーブルの上にはパンと肉・魚・野菜が並ぶ。
どれもシンプルな献立だが、異世界料理としてはどれも美味しそうだ。
その食卓には、勇者、リサ、リサの両親、村長。
村長?!
何でいるの?
僕はね、既に肉派に改宗しているんだから。
ここは肉派の集会所なんだよ!
皆、食事前に感謝の祈りをしていた。
「今日も、食事にありつけること教会を通じて神に感謝を致します」
違うんだよね。『教会』じゃないんだよね、これが。
「いただきます」
僕も食事前の感謝の祈りをして食事を始める。
「食事にありつけることを、「きょうかい」のミラさんを通じて神に感謝を」
周りが一瞬「んっ??」となった。
この魚、意外と美味しいじゃないか。
肉派になってしまったけど、時々は魚も良いかも!
異世界のグルメを堪能していると、リサが僕に質問をしてきた。
「勇者様、今日魚を捕まえる時に魔法を見せてくれましたが、他にもどのような魔法が使えるのですか?」
「色々使えますよ。見ててください」
勇者は指先を軽く動かすと、炎がバチッと燃え上がった。
「これね、簡単な魔法だけど、薪に火をつける時とか便利だよね!」
リサは目を見開き喜び、両親と村長は動きが止まり驚いた。
しかも『簡単に出た炎』にも驚いていた。
一般人からすると魔法など使えない。指先から火を出すなんて奇跡に近い。
そんな奇跡を容易く扱う勇者様は、本当に伝説の勇者でないのかと思い直していた。
「あとね、少し難しくなるけど、こんなことも出来るよ。
あっ、時間がない急がないと!」
勇者はスプーンをテーブルに置き、目を閉じ集中する。
まぶたが上がり、白目になった。
数秒後。
――― 目の前から勇者の姿が消えた。 ―――
「えっ! どこ?」
三人とも声を失った。人が突然消える事ってあり得るのか?
勇者が座っていた席には確かに誰もいない。
窓の外から声が聞こえる。
「おーい、ここだよ!」
窓の外を見ると勇者が笑顔で手を振っていた。
理解が追いつかない。
勇者はまた、一瞬で席にもどり、食事の続きを始めた。
リサは目を輝かしながら尋ねた。
「勇者様、これは転移魔法ですか?」
「うん。これ少し難しいんだ」
リサは更に疑問をぶつけた。
「炎魔法はすぐ出ました。でも物体浮遊や今の転移魔法の時は少し時間がかかった気がします。
しかも、白目になってませんでしたか?」
「うん。そうだね。良く気付いたね。さすがリサだ!」
「一体どのような仕組みになっているのですか? 魔法って何ですか?」
勇者は、再度スプーンを置き、話を始めた。
「リサ、魔法についてどこまで知っているの?」
「私が知る限りでは、自然界のすべてに、魔法の力となる物が存在して、その物を集める事で魔法が使えると、教会の神官様がおっしゃってました」
「あぁー。あいつら適当に答えてるな。正しく説明するのが面倒だからって」
「えっ、違うのですか?」
「うん、全然違うね」
「本当の事、教えてください!とても興味があるんです!」
リサは更に目を輝かしながら勇者を見つめてきた。
(ンフフッ! そんな見つめられたら教えちゃおうかな!)
「えっとですね、魔法の本当の仕組みを教えましょう!」
「と、その前に一回目薬さしておきます。白目は痛くなるんだ」




