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異世界転生チート勇者様、私に惚れているらしく、他の何にも興味がないらしい  作者: よつ丸トナカイ
【第5章】何かと不穏な空気が

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第69話 我慢の日々

 長雨による災害から1週間ほどたつのだが、状況は全く好転していない。

 普段の仕事をする為の人手も足りないし、何より商品不足が日々深刻になっている。


 特に食料品のうち、小麦とカボチャが全くこの街に入ってこない。

 主食である小麦は備蓄があるから良いが、この街で人気があるカボチャは完全に姿を消してしまった。



 マーズフォレト領主、マルデリア伯爵はため息をつきながら、娘のマーガレットに話しかけていた。

「一週間後には、国王陛下をお迎えする花見会が開催されるというのに」


 この花見会は毎年行われ、自然と神に感謝を伝えるという国家的な神事である。

 しかも今年は10年振りにこの街で開催されるので、いつもはフォレト地方領街にいるフォルファード侯爵がこの街に前もって滞在しているのもそれが理由なのだ。


 そして、この花見会では領民も料理が振舞われる。

 自由に参加できる花見会なので多くの領民が楽しみにしているのだ。




「お父様、花見会で用意する料理のうち、昨今のカボチャ不足が影響して、定番のカボチャを使用した料理が出来なくなってしまいました」


 伯爵は腕組みをしながら天井を見つめていた。

「しょうがない。材料を変えて料理を作るか。マーガレット、その手配任せられるか?」

「はい、リサさんと相談して新しい食材での料理を準備いたします」

「よろしく頼む。花見会で出された料理が美味しくないとなると、本当に私の首が飛んでしまうよ」


 冗談とも思えないその言葉に、マーガレットは笑みを見せる事が出来なかった。





 その後、新しい料理を相談する為に、僕たちの宿屋にマーガレットが訪れてきた。

 僕たちはその相談を快く引き受け、宿屋の主人にも話を聞いてもらう事にした。

 彼はカボチャを使用しなくても、いつも美味しい料理を作ってくれるから相談相手には適材だと思ったからだ。



 宿屋の主人は僕たちの話を聞いて何度か軽く頷いている。

 僕たちの方へ視線を向けると自信ありげな表情で伝えてきた。

「そうか。そういう事なら俺に任せな。誰もが満足できる料理や、お菓子を作ってみせるよ!」


 マーガレットは主人の両手を握り笑顔で見つめていた。

「本当ですか! どうかよろしくお願いいたします!」

「こんな、可愛い娘さんに頼まれてしまったら断れなくなるよな」


 彼の冗談で僕は思わず笑みがこぼれた。

 リサも同様だ。

 災害が発生してから町全体、そして僕たち自身から『笑み』が消えてしまった。

 だけど、ほんの少しだけど久しぶりに笑った気がした。



 僕は両手をパンと合わせて、みんなに話した。

「さて、大変な状況になっているけど、とにかくその『花見会』だけは成功させよう」


 リサも頷いた。

「そうですね。この街の暗い気分を吹き飛ばすには、花見会はピッタリです」




 料理については宿屋の主人とマーガレットに任せるとして、問題は食材の確保だ。

 リサは、手に持った資料を見ながら教えてくれた。

「私の組織の人達の調査では、どうやらこの街では商品不足ではなかったのです」


「えっ、それってどういう事? 以前からお店に並んでいる商品が少なくなってきていたよね」

「はい。今、この街に入ってくる商品は先日の大雨の災害で完全に今はストップしています。

 ところが大雨以前はこの街に入ってくる商品の量は以前と変わらないのです。」


 僕はその説明に理解が出来ない。大雨の以前から商品不足は確かだったからだ。

「それは、一体どういう事なの」



「つまり、お店に流れる前に誰かが買い占めていたようなのです。」

「一体誰が、何の目的で?」



 リサは手元の資料をめくりながら情報を探していた。

「誰というのは分かりません。ただ、街に繋がる街道に山賊が増えたのはその買い占めを隠すためのカモフラージュのようです」


「あぁー、犯人と目的が全然わからない」

 僕は、手を組んで天井を眺めた。


「やっぱり、例の悪徳領主かな? 商品不足により花見での準備が出来なくなったという理由で伯爵からこの統治権を奪い取ろうとしているのだろうか」


「はい、その線が一番強いかと思います。

 この花見会は国王陛下をお招きする重要な行事なので、そこでの準備不足は領地を支配する貴族の質を問われますから」


「ほんと、悪い侯爵だな」


 リサは、少し黙り込んでいた。


「ん?どうしたの?」

「いいえ、何でもないです」


 再びリサは手元の書類をめくりながら話を続けた。

「でも、これらは闇の組織が動いていて、どんなに情報を追ってもその侯爵様までは辿り着けないのです」


「ふーん。教科書通りの闇の組織の使い方だね」

「えっ?」

「何でもない」


「その結果小麦は少なくなるし、カボチャはほぼこの街から見かけなくなりました。」

「そうだね」


「ルビーの価格も暴落しているんですよ!」


 僕は思わず手に持っていたコップを落としてしまった。

「あっ、それは…、僕が原因です。」


 リサはフッと笑顔になり言った。

「冗談ですよ。知ってます」



 完全に忘れていたけど、ルビー事件の様な事は二度としたく無い。

 なんせあの後ギルドから、すっごく叱られてトラウマになってしまった。


 大人になっても、あんなに怒られる事あるんだと思ったよ。


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