第67話 最悪の災害
「勇者様、大変です!」
朝起きて外を眺めていると、息を切らしたリサが僕の部屋の中に飛び込んできた。
「どうしたんですか?」
「先日勇者様たちが訪れた山奥の村で土砂災害が発生したらしいです」
僕はその話を聞いて、頭の中が真っ白になった。
一泊しかしていない村だったが、そこで堪能した料理、そして出会った人々は、僕の記憶の中に強く残されている思い出の場所となっているからだ。
「村の人達は無事なの?」
リサは首を横に振った。
「情報が無いので詳しくは分かりません。あの村を中心に大規模な土砂災害が発生して、
多くの村や橋が流されたそうです。今私が知っている情報はそこまでです。」
「そうですか。もっと詳しい情報が欲しいな」
「ならば、私の組織の人を数人村へ向かわせましょう」
「それは止めた方がいい。災害が発生した場所はとても危険だ。王国が探索や救護活動を始めるだろうから、その人たちに任せた方がいい。
あと、冒険者の召集がかかるかもしれない。ちょっと冒険者ギルドへ行ってくる」
僕は急ぎ準備をして冒険者ギルドへ向かった。
向かう途中、店頭に並んでいる商品が更に少なくなっている事に気づいた。
影響で物資も止まっているのだろう。
転生前の世界ではインターネットにより地球の裏側で発生した出来事でもほんの数秒で世界中を駆け巡る。しかしこの世界で情報が伝達されるまで数日かかるのも珍しくない。
いや、数日なら早い方だ。
冒険者ギルドへ入ると多くの冒険者と職員で混乱していた。
怒号が飛び交い、中には故郷の被害を想像して泣いている者もいる。
僕たちのんびり倶楽部も合流して情報交換をしていた。
その時、複数の依頼がギルドから緊急発報された。
職員が一斉に掲示板に緊急依頼の書類を張り出しはじめた。
それを見た冒険者が騒ぎ出した。
「数年ぶりの緊急発報だ! 俺たちのパーティは準備できているか!?」
「おい、あの依頼見てみろよ。お前の故郷じゃないか?」
僕は掲示板に張り出された一枚の緊急依頼の書類を手に取った。
――― 緊急依頼 山奥の村の状況確認
状況が許せば、救出作業。
他の仲間も内容を確認したようで、お互い目を合わせて頷いた。
僕は、準備してきた装備を背中にかつぎ、しゃがんで靴紐を締めなおした。
そして立ち上がると目を閉じて静かに自分の頬を両手で軽く叩いた。
数秒の沈黙の後、つぶやいた。
「よし、行こう!」
僕の呼びかけに、仲間は無言で強く頷き、一言も交わさずにギルドの建物を後にした。
――― どうか、村の人が無事でありますように ―――
僕たちが村へ向かう足取りは、気づけば駆け足になっていた。




