第63話 ギルドへの依頼失敗報告
目を開くと知らない天井だった。
確か昨夜は、お腹一杯に料理を堪能して、いつのまにか寝てしまったんだ。
僕は周りを見渡すと、ここは寝室だ。
きっと誰かが食堂で寝ていた僕を、ここまで運んでくれたに違いない。
ベッドから飛び起きて朝支度をするため、洗面所へ向かった。
既に他の三人は起きており、笑顔で僕を迎えてくれた。
「やっと目が覚めましたか。早く準備をして街へ戻りましょう!」
青の勇者はそう話すと既にまとめられている荷物の確認をしていた。
マジソンは少し申し訳なさそうな表情で僕たちに告げた。
「僕はもう少しこの村に残ります。皆さん先に帰っててください!」
青の勇者は首をかしげて尋ねた。
「マジソンさん、どうされましたか。体の具合でも悪いのですか?」
「えっ、ちょっと野暮用があって…」
僕は昨晩の食事の時のマジソンの様子を思い出してピンときた。
「青の勇者君、マジソン君にも春が来たのかも」
その言葉を聞いたエルミアは、目を輝かせていた。
「マジちゃん! 本当!? 相手は誰ですか?」
エルミアくらいの年齢の女性は恋バナに興味があるのだろう。
色々と聞き出そうと質問攻めをしていた。
「まあまあ、落ち着いて。彼も困っているじゃないか。
本格的に恋バナを聞くのは彼が街に帰ってからにしましょう!」
「それ、良いっすね! マジちゃん、ちゃんと聞かせてよ!」
マジソンはエルミアのテンション爆上げに少し苦笑いをしていた。
僕はマジソンの方をポンと叩き、頷いて笑顔で見送った。
「さて、僕たちは街に戻りましょうか!」
「帰りましょう!」
僕たちは帰路についた。
数日後、街に戻った僕たちは、まず冒険者ギルドへと向かった。
依頼が中止になったことを説明しなければいけない。
ギルドに入り見渡しても、いつもの黒縁メガネ君がいない。
しょうがないので、近くにいた他の受付職員に声をかけた。
「黒縁メガネの職員、今日はお休みですか?」
「黒縁? あっ、スタンディーですね。本日はお休みをいただいております」
「あの人の名前、スタンディーなんだ。長い付き合いだけど初めて知った」
「そ、そうなんですね。ところでご用件は? 私が承ります」
「あっ、そうでした。先日直接依頼を受けた山奥の村でのイノシシ討伐の件、失敗報告に来ました」
その受付職員は、僕の話を聞いて首を傾げていた。
「イノシシ討伐ですか?」
「はい、イノシシの被害が尋常でないという事で訪れた村は、平和そのものでした」
職員は考え込む、
「うーん。私が把握している中では、そのような依頼は思い当たりませんが…。」
「えっ!? 確かに僕たちが直接依頼を受けたんですよ」
「直接依頼ですか!? ひょっとしたら職員間での情報共有漏れかもしれません。
ただ、通常、依頼は掲示板に張り出しております。
個別のパーティに直接依頼を紹介する事はありますが、それはAランクパーティ以上に限られるという規約があります」
「僕たちのパーティはFランクなんですよね」
「はい、承知しております。皆さんのパーティのメンバーに青の勇者様やエルミア様がおられるので、Aランク以上のパーティだと職員が勘違いしたのかもしれないですね」
「そうなんですね。わかりました。ありがとうございます!」
僕たちは腑に落ちなかったが、これ以上話を突けてもしょうがない。
ギルドを後にした。
「ねえ、今の話どう思う? 単なる勘違いだけじゃない気がする」
青の勇者は考え込んでいた。
「存在しない依頼に、直接紹介が出来ないはずの私たちのパーティ。しかも実際その村は平和そのものでした。確かに変です。だけど何の目的があって私たちを、あの村まで行かせたのかも不明です。」
「そうだよね。目的があったとしても実際に何もしていないんだよね。やったと言えば途中での山賊退治ぐらいかな」
エルミアが答えた。
「黒縁メガネっちが、誤情報をそのまま私たち頼んじゃったんじゃない?
結果、村では何事もなかったから、皆ハッピーで結果オーライじゃないの!」
「そうだね、イノシシに困っている村人がいないという事だけで今回はオッケーとしようか」
少し、もやっとするがそう自分に思い込ませることにした。
これ以上解らない事を考え続けてもしょうがない。
普段の僕なら、わざわざ数日かけて訪れた村が平和で「何もなかった!」だったら ブチ切れていたと思う。
でも今回は久しぶりに満腹になるまで肉料理を堪能したから、実は満足して楽しんでいた。
ちょっとした旅行に出かけた気分だ。
「ところで、エルミアの冒険者ランクってどれくらい」
「えっ、うち? 確かSSランクだったと思うよ」
「マジか。すごいな」
「そういう、勇者っちは?」
僕はうつむいて小さな声で答えた。
「僕は……、Gです。」
「チョー、マジ受けるんですけど!」
僕は拳を強く握り締め、プルプル震えながらこの屈辱を耐えていた。
そして心に誓ったのである。
「いつか、僕もSSSSSSランクまでなってやるぞ!」




