第60話 新たな依頼。イノシシを仕留めろ!
僕は、マーズフォレトにある冒険者ギルドを訪れ、同じパーティの仲間と一緒に依頼掲示板を眺めていた。
「やっぱり商品不足を解消する依頼が多いね」
「ほら、こちらは隣の町から牛肉の運搬依頼だって」
「そう言えば、僕たちも肉、暫く食べていないね。王都で沢山食べておけばよかったよ」
掲示板を眺めていたら、後ろから声をかけられた。
振り向くと、ギルド職員である黒縁メガネ君が笑顔で立っている。
「みなさんにピッタリの依頼がここにあるんですよ」
と手に持っている依頼書をヒラヒラと見せてきた。
「あっ、今間に合っていますんで」
僕は掲示板の方へ視線を戻した。
マジソンが僕につぶやく。
「翔馬さん、依頼断っていいんですか?僕たち直々に持ってきた依頼なんですよ」
「彼が持ってくる依頼は面倒くさい物ばかりだ。出来るならやりたくないんだよ」
「そうですね」
マジソンも納得し掲示板を見はじめた。
「おいー、みなさん。この依頼主とても困ってますよ!」
背中越しに聞こえる声を無視して掲示板を見続けていた。
青の勇者も僕の耳元でささやく。
「師匠、本当にいいんですか? 困っている人を助けるのが真の勇者だと思うのですが」
「このやり方で何度、彼から騙されたか。今回は騙されないぞ」
「そうですね。あまり関わるのは止めましょう」
青の勇者も納得し掲示板を見続けた。
「たしかこの村の特産は猪肉のステーキだったかな?」
三人は一斉に振り向いた。
黒縁メガネ君はメガネを光らせニタッと笑っている。
「ほー、みなさんこの依頼に興味がおありで!」
という事で、僕たちは依頼遂行のための事前計画会議を、ギルド奥の個室で開始した。
「先程、ギルドの職員である黒縁メガネ君が、このパーティへ直々に依頼を持ってきてくれた。詳しい事はマジソン君から説明をよろしく!」
「ただいま紹介を受けましたマジソンです。
今回の依頼はこの街から一日程離れた山村でのイノシシ討伐となります。
この山村に最近頻発しているイノシシによる農作物の被害が深刻でそれを解決して欲しいとの事です」
「ありがとう、マジソン君。という事ですが何か質問はございませんか?」
同じテーブルに座っている女性が口を開いた。
「マジで特にナイわ~。 チャッチャと依頼を終わらせて、さっさと猪肉食べない?」
僕はその女性を静かに見つめ、ため息をついた。
「なぜ、エルミアがここにいるのかな?」
「だってー、エルフの村って暇じゃん! 村に戻るよりこっちの方が楽しいかなって!」
「だからって、僕たちのパーティに加入届けを勝手に出す事ないんじゃないの?」
「リサちゃんって仕事で忙しいから遊んでくれないんですよー!」
それは、まるで僕たちが常に遊んでいるような言い方だ。
……確かに大きくは間違ってはいなのだが。
青の勇者は苦笑いしながら僕たちのやり取りを見ていた。
「師匠、私達のパーティに新規に参加しても大丈夫だと思いますよ。エルミアはこう見えても自然魔法と弓の達人ですから!」
僕は『自然魔法』という言葉に心がときめいてしまった。
「自然魔法!? 何それちょっと格好良くない?」
エルミアは屈託のない笑顔を僕に向けた。
「でしょ、でしょう! マジ私、自然魔法チョ―得意なんだから!」
「で、その自然魔法ってどういうものなの!?」
エルミアは天井に視線をやり答えた。
「えっとね、雑草を成長させたり、水溜まりを乾燥させたり…」
僕がイメージしている自然魔法と違う。
いや、エルミアの説明が下手なだけで、きっと物凄い魔法に違いない!
「実際にはその魔法はどの様な時に使うの?」
「うーん、特に無いかな。暇つぶし?」
「……。」
青の勇者が慌てて会話の間に入ってきた。
「とにかく、師匠。この依頼を無事達成して、猪肉パーティを行いましょう!」
僕たち新生、のんびり倶楽部の4人は席から立ちあがった。
さて、今回はイノシシの被害に困った村から討伐の依頼だ。
青の勇者君にも少し人助けっぽい事をして師匠らしいところを見せておかないと。でなければ、彼の理想の師匠像とのどんどんかけ離れてしまう。
ん? 普通は弟子が師匠を追いかけるよね。
なんか師匠が弟子を追いかけていない?
まあ、それは置いといて、僕はみんなに向けて言葉をかけた。
「この依頼を無事達成しましょう!」
「おー!」
「力を合わせて頑張るぞ!」
「おー!」
「最後は猪肉食べ尽くすぞ!」
その最後の誓いが、一番全員の心に響いていた。
「おーーーーーー!」




