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異世界転生チート勇者様、私に惚れているらしく、他の何にも興味がないらしい  作者: よつ丸トナカイ
【第1章】 勇者登場!

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第6話 勇者への初依頼

勇者の朝は重い。


朝の日差しが眩しい。

気持ち悪い。ムカムカする。

二日酔いの体には堪える。


(流石に異世界には胃薬なんてないよな)


昨夜の「(悪)夢の様な歓迎会」で飲み過ぎた勇者は、すっかり覇気を失っていた。




(てか、ここ誰の家だ?)


昨夜の事を思い出そうとしても、広場で星を見ていた記憶しかない。



そこにリサが現れた。


「勇者様、おはようございます! 昨晩はとてもお楽しみだったようで!」



おいおい、若い娘さんよ。その言い方は誤解を招くぞ。

というか、イヤらしく思うのは僕の心が濁っているだけか?



「リサさん、おはようございます。ここは、どなたの家ですか?」

「私の家です。昨晩広場でそのまま眠ってしまっていたので、父と一緒に運んできました!」




バツの悪そうに苦笑いする。


「すみません。しばらく禁酒します…。」

「それが良いと思います。勇者様はお酒には強くないみたいですしね!」



「あはは」

勇者は頭を掻きながら、みっともない姿を見せてしまった事を恥じていた。



「ところで、村長が勇者様に話があるそうですよ」



勇者思った。


あぁー、これ面倒なヤツだ!

モンスターの討伐とか、貴重な植物の採取とか。

村人ではあまりにも危険すぎて勇者にしか頼めないヤツだ。




どうしよう? 面倒だな。逃げるか?

いやいや、昨晩あんなに盛大に歓迎会してくれたのに、翌日逃げたって。洒落にならんぞ。



「わかりました。あとで尋ねてみます」



笑顔で答えたが、あまり乗る気でない。

(昨日の歓迎会の借りを返すと思って引き受けるか…。)



勇者は身支度をし、村長の家へ向かった。


途中の広場では村の人達が元気に働いている。

なかには、勇者に笑顔で手を振る村人もいた。


勇者も手を振り返事をする。

「どうも! 昨日は楽しかったですね。またご一緒しましょう!」


彼は一体だれだろう。全く記憶にない村人に満面の笑顔で応えた。



それにしても、昨晩あんなに大騒ぎして、大酒飲んでいたくせに、二日酔いしている人、誰もいないぞ。


異世界、怖えーな。

実は村人の方が僕よりも能力値チートだったりして。


多分、村人たちが地球に転生しても、君たちならブラック企業で即戦力だ!




初めて見る異世界の人々を横目にして、元居た世界との違いを感じながら村長の家へ歩き続けた。




村長の家のドアを叩いた。

中から村長が出て家の中へ招いた。

案内された椅子に座ると、村長は少し険しい表情で口を開いた。


「勇者様、実はですね…。」

(ほら来たぞ、一体どんなことをやらされるのだろうか)



「昨晩の歓迎会で、ちょっとした問題が発生したのですよ」



(はい、来ました! 村の問題発生で、勇者へ丸投げ依頼パターン!)



勇者も一応、深刻そうな顔をした。

「ほぅ、その問題とは?」



「お酒のつまみで、肉派と魚派に分かれて討論になったんですよ!

私は断然、魚派です! やっぱり勇者様も魚派ですよね!」



「んっ?!」



想像の斜め上を行っている。

そんな事を、勇者に相談するのか? 

それって、どれだけ重大な村の問題なんだよ?!

昨晩、お酒飲み過ぎて意識とんでいる時に、そんな討論していたのか?

そんなの、どっちでもいいだろう。てか両方食っとけ!




そう、喉まで出かけた言葉を飲み込み、勇者は冷静に答えた。



「魚派です」




村長の表情が輝きだした。

勇者を見つめる目は、まるで戦場で生死を共にした戦友を見つめるかのようだ。



(一応、これで話は終わり? もう帰ってもいいよね?)


と立ち上がろうとしたその時、村長の口から、とんでもない言葉が飛び出した。



「勇者様、魚を採取してきてください! 

種類は電撃を放つ『ボルトフィッシュ』です。

それを燻製にして酒のつまみを作りましょう!」



「はっ?!」


勇者は固まった。

完全に安心しきっていた。

まさ、このタイミングで依頼されるとは…。

しかも電撃の魚って、他にもいるだろう、大人しそうな魚が!



「魚派の勇者様も魚の燻製食べたいですよね。なら作らないと!」



勇者は尋ねた。

「もしですよ。私が先程、肉が良いって言ったらどうなってました?」


「敵ですね。」



「肉」という言葉を聞いた村長の表情が一変する。

勇者の背中を冷たい汗が走り流れる。



村長は、不敵な笑みを浮かべ、静かに続けた。


「この言葉の意味、賢明な勇者様だったら、…お判りですよね?」



この感覚、覚えている。

ブラック企業で働いていた時、上司の意見に反論した時と同じだ!




村長は、問いかけた。


「勇者様、もちろん魚を採りに行かれますよね」




勇者は昔の記憶に逆らえず、震えながら答えた。




「はい! 喜んで!」

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