第54話 国王からの手紙
とある静かな昼下がり。
宿屋の部屋ではリサと、三人の盗賊が僕の元を訪れていた。
そしていつものように談笑をして過ごしている。
そんな時、外からは女性の歓声が聞こえてきた。
「今から55秒後にこの部屋の扉が開き、青の勇者君が登場するよ」
僕はリサたちに伝えた。
「えっ! なんです突然。そんな預言者みたいな事言って!」
リサは僕の言葉を疑っていた。
その足音は、宿屋へ入り階段を上ると僕の部屋の前で停まる。
――― 55秒後。
ノックと共に扉が開き、青の勇者が現れた。
「師匠! おられますか!」
「ほらね!」
僕は自慢げにリサ達に微笑んだ。
「彼は真面目で几帳面だから、常に同じ行動を無意識にとっているんだろうね」
リサ達は、青の勇者の登場が本当に表れたので笑いをこらえるのに必死になっている。
僕たちの様子を見ている青の勇者は理解が出来ず、ポカンとしたままだ。
「ごめん、青の勇者君も元気だね!」
「はい、師匠のおかげで。先日のご指導のスコップの動きを……」
あっ、しまった何かスイッチを入れたらしい。話が長くなるぞ。
僕は途中で話をさえぎる様に無理矢理に話しを始めた。
「今日は何か面白い話でも持ってきたの?」
彼は話を止め、鞄から手紙を取り出し僕に手渡した。
「この手紙は一体?」
手に取った手紙は触った瞬間、高級紙が使用されている事がすぐに分かった。
表題に掛かれている文字、裏の封蝋も上品だ。
僕は、その手紙の中身を取り出し読み始めると、すぐに驚いてしまった。
「これは…」
「先日の魔竜討伐の功績を称え、国王陛下直々に謁見を賜る事になりました」
リサは、両手を胸の前で組合わせ、目を輝きながら祝っていた。
「青の勇者様、凄いじゃないですか!国王陛下に謁見出来る事など普通の人生ではありえませんよ!私は平民ですからそのような事など絶対にあり得ませんけどね!」
リサの喜びとは反対に青の勇者の表情は沈んでいた。
「普通は有難い事ですよね。でも僕は今まで何度も国王陛下に謁見をしましたし、第一今回の功績は僕でなく……」
そう言いかけた時、僕は言葉を遮った。
「まぁ、今回の功績は君のおかげだよ。なんせ僕は宿屋で寝ていただけだからね」
リサ達も僕の力を秘密にするという約束をしていたので笑顔で頷いていた。
「そうですよ。今回の討伐は青の勇者様の功績ですよ!」
彼の表情はいまだに晴れない。
「でも、やはり師匠の名誉を横取りする感じがするので気が進まないのですが」
本当に青の勇者君は真面目だな。
彼をどうやって説得しようかと思っていた時、名案が浮かんだ。
「今回、真実通り僕の功績として世界中に広まるとしよう。
国王に謁見しなければいけないし、多くの地域へ出かけて人々を救わなければいけない。
時には戦わなければいけない。その結果、誰かを傷つけてしまうのは嫌だ。
それが例え敵だとしてもだ。
僕は多くの人達の平和な生活をこの目で見ていきたいんだ!」
これは、非常に良い出来の言い訳だ!
ほら、彼の表情も変わり始めてきたぞ。
その言葉を聞いて青の勇者は歯を食いしばり拳を握り締め、自分の無知を恥じていた。
「―――師匠、人々の命を大切にする思い受け止めました。
私は単に実力に応じた名誉という一面だけしか見ていなかった愚か者です。
師匠が望む人々の安寧の生活の世界のお手伝いを私もご一緒致します」
でも、ゴメンね。本当の理由は面倒くさいという事だけなんだけど。
彼にはこれからも最前線に立って僕の身代わり……でなく、真の英雄として生きてもらおう。
あっ、そんな事しなくても彼は真の英雄か。
「そうと決まれば青の勇者様、国王陛下様への謁見のご準備始めないと! 大変ですね!」
とリサは他人事の様に笑顔で話し、胸の前でパンッと手を叩き合わせた。
青の勇者がリサの方へ向いた。
「今回の国王陛下の謁見、一般人で今回の戦闘に指揮役として参加した、リサさんもご一緒ですよ!」
リサの表情は笑顔のまま固まっている。
手も合わせたままだ。
微かだが、心臓の激しい鼓動が横にいる僕にも聞こえ始めていた。
しばらくの沈黙の後、リサは震えた唇を静かに開けた。
「ど、どうしましょう!」
こんなに慌てているリサを見るのは初めてだ。
しっかり者だと思っていたのだが、可愛らしい所もあるんだなと腕組みをしたまま微笑みながら眺めていた。
青の勇者は僕の方へ振り向き口を開く。
「あっ、もちろん師匠にも王都まで同行してもらいますよ!」
僕の表情は笑顔のまま固まっている。
腕も組んだままだ。
「行かなきゃ駄目?」
「はい。駄目です。師匠が守りたいという、王都にも住んでいる多くの人々をご覧いただけます」
完全に墓穴を掘った。
僕のその場しのぎの言い訳が、見事に自分へ返ってきてしまった。




