第50話 師弟関係
転生前のブラック企業勤めもビックリの3日連続で睡眠なし労働。
それも解放されて久しぶりの睡眠も……色々あったが、何とか眠れた。
多分あれは、夢だろう。
ベッドの上に横になり目を閉じているが、とても体が軽い。
やはり睡眠は大切だ!
もうそろそろ起きようかな。
僕はゆっくりと目を開いた。
ぼんやりと見える部屋の風景。誰かが横の椅子に座っている。
リサかな?僕が疲れ果てて眠っているのを見て側にいてくれたんだ。
何て優しい女性だろうか!
そんな所がリサのいい所だね!
ぼんやりした視界もはっきりとしてきたので、視線を横に向けた。
――― 誰?
全く知らない青い鎧を着た男の人が座っている。
一瞬で目が覚めた。
「ちょっと、あなた誰ですか?人の部屋に勝手に入って!」
青い鎧の爽やかな青年は眩しい笑顔で答えた。
「初めまして。私は『青の勇者』です」
青の勇者か……。って、誰?
「何で君、ここにいるの?」
青の勇者は真剣な表情になり、口を開いた。
「あなたですね、あの巨大な魔竜を倒したのは」
僕はあの出来事は、夢なのかな?と思っていたが、やはり現実だった。
「あっ、はい。 僕がやりました。いや、でもですね……」
また、何か怒られるのか? 恐る恐る彼の表情を見ると、さっきより険しくなっている。
(あぁ、あれか、あの攻撃によって何かしら被害を被って文句を付けに来たんだろう)
彼は椅子から立ち上がり、そのまま片膝をついて頭を下げた。
「どうか、わたしを弟子にしてください!」
「えっ!?」
何か面倒になったぞ、僕一人で気楽に過ごしていたのに。
弟子なんかとったら指導とかしなければいけないんでしょう。
しかも何か悪い事したら直ぐにチクられて、リサに怒られてしまう。
それは嫌だな。
「でも、教える事なんて何もないから、弟子はちょっと無理かな」
丁重にお断りした。
「師匠の手を煩わせません。自ずから師匠の背中を見て学びます!」
「そんな、そこまでしても、本当に学ぶものないよ」
いやいや、それって一日中僕を監視するって事でしょう。ますます嫌だね。
「師匠のお手伝いも、身の回りのお世話も、何でも行います」
その言葉に、僕の表情が一瞬動いた。
「お手伝いも?」
「はい」
「色々としてくれるの?」
「もちろんです」
僕は思った。
ギルドの依頼もお願いしちゃおうかな?
最近、面倒な依頼ばかりやらされているからね!
「青の勇者君といったかな?」
「はい!」
「まぁ、私の弟子になるのは結構大変で、今までも何人も続かず辞めて行った」
(嘘だけど)
「だから、続ける根性があれば、弟子として認めようでないか!」
青の勇者は笑顔になり、頭を下げた。
「根性は誰よりもあります!
師匠!これからご指導よろしくお願いいたします!」
「うむ!」
という事で、青の勇者は僕の弟子になった。
早速だが、ギルドから無理矢理に押し付けられた依頼の残りをしに行こうか。
ここは、街の中心部から少し離れた職人街。
待ち合わせのマジソン君と合流した。
「翔馬さん、この人誰ですか?」
「あっ、紹介するね。青の勇者君だ。今日から僕の弟子、アンド、僕達の新しいパーティメンバー!」
「初めまして。青の勇者です。お二人のパーティの一員になれて光栄です。」
「よろしくです。僕はマジソンです!」
青の勇者は、僕に尋ねた。
「師匠、パーティ名を教えていただけますか?私もこれから多くの人に広めていきます!」
恥ずかしい名前をまた言わなければいけないのか。
「うん、えっとね……、『のんびり倶楽部』」
「……。」
青の勇者は、固まった。だろうね。
でもマジソンは嬉しそうにしている。だろうね。
「僕達のパーティ名、かっこいいでしょう」
「は、はい。とてもかっこいいです」
青の勇者は考えた。きっとこれは師匠が私を試している。
こんな変な名前のパーティ名だけど、実力は最強なはず。
そうか!見た目で判断をしてはいけない。物事の本質を捉えろという教えか!
青の勇者はうつむき、首を横に振り、自分の未熟さを恥じんだ。
「師匠! とてもいい名前です!」
(まじかよ、ここにも変な奴いたよ……。)




