第46話 一攫千金
今日、冒険者ギルドにて面白い依頼が張られているのを見つけた。
最初に見つけたのは、同じパーティのメンバー見習い魔導士のマジソンだった。
「翔馬さん、この依頼どう思いますか?」
「どれ? ―――なるほど、これは面白そうだね。受けてみる?」
その依頼書には、こう書かれてあった。
――― 採掘依頼
黒岩鉱山にて金塊100gを採取する。
金塊掘り。これほど男心をくすぐらせるモノはない。
まるで西部開拓時代のゴールドラッシュではないか。
一攫千金を求めて男たちは金を探しに出かけていく。
僕達はこの依頼を受け、黒岩鉱山へと向かった。
――― ちなみに、実際のゴールドラッシュでは金を求めて集まった男達の殆どが赤字で帰って行ったらしい。きっとこの二人も同じ道をたどらなければ良いのだが。 ―――
黒岩鉱山に着いたが、周りに人がいない。
僕は少し不思議に思った。
「ゴールドラッシュの様に大勢の人が集まっていると思ったのだけど、誰もいないね」
「いないですね。少し離れた藪の中にイノシシがこちらの様子を見ているだけですよ」
念の為周辺を探知魔法にて調べてみた。だけど近くにイノシシがいるだけで他の生命反応は見当たらないし、特に罠が仕掛けられている様子もない。
「なんか嫌な予感がするね。さっさと金塊を採掘して帰ろう」
実はその『嫌な予感』は違った形で的中するのであった。もちろん、この時点では二人はまだ知らない。
黒岩鉱山に入り、二人は金塊を探しながら奥へと進んだ。
「金塊さんはどこだろうな♪」
「翔馬さん、何ですかその歌(笑)」
「このうたを歌うとね、金塊の精霊が反応して見つけやすくなるんだよ」
( 嘘だけど )
「えっ、マジですか!? なら、僕も歌います」
そう言うとマジソンは歌いだした。
「き・き・金塊さん恥ずかしがらずに出ておいで♪」
(やっぱり、こいつ馬鹿だろう)
僕は、笑いをこらえるが必死で金塊を見つける集中力が切れてしまった。
すると突然、マジソンが指を指して叫んだ。
「金塊見つけた!」
指を指した方を見ると、黄金に輝く金塊が岩の後ろから顔を出していた。
(まじで見つけている)
「翔馬さん、流石伝説の勇者ですね。これも魔法の一種ですか?」
「う、うん、そう。古代魔法の一種だと思うな」
適当に返事して誤魔化した。
彼は物凄い素直な瞳を輝かせて、尊敬の眼差しを僕に向けている。
やめてくれ、そんな純粋な瞳で見つめられると心が痛くなる。
でも、この異世界は今までいた世界とは常識が違う。
ひょっとすると本当に効果がある古代魔法なのかもしれない。
その後二人は、うたを歌いながら金塊を探し求めていた。
一時間程経っただろうか。集めた金塊は100gを超えている。
「これだけ集めれば依頼はクリアできる。もう帰ろうか」
「翔馬さん、そうですね。帰りましょう」
と帰ろうとしたその時、ふと横にある岩に目が留まった。
何でもない岩なのだが後ろの壁が少し気になる。
近づいてその壁を撫でてみた。
「どうしました?翔馬さん」
マジソンが探るような表情で、にじり寄ってきた。
「いや、この岩の後ろ壁、色が変なんだ」
僕は思いっきり、手前の岩に反動をつけて転がし、壁にぶつけてみた。
岩が壁にぶつかると壁の一部が崩れ落ちた。
崩れてきた破片を見て僕達の目がギラギラと輝き始めた。
何と、高級宝石である赤いルビーの原石を見つけたのだ。
だから壁全体が赤っぽく見えていたのか。
この街ではルビーは超高級宝石で、100gもあれば家族で1年間は働かずに生活できるぐらいだ。
僕達は顔を見合わせ、頷いた。
二人とも表情が正義の勇者でも、魔導士でもない。
欲に負けた醜い人の顔である。
次の瞬間、二人は物凄い勢いでルビーの採掘を始めた。
掘って掘って、掘りまくる。
採って採って、採りまくる。
こういう時の二人は最強のチームワークをもっている。無言でもお互いの意志が通じ合う。
採取した量は軽く5,000kgを超えていると思う。
僕の収納魔法にて全て収納し、満足な笑顔で二人はギルドへと戻った。
「翔馬さん、このルビーを売ったら幾らぐらいになりますかね?」
「うーん、わからないけど、国家予算レベルだね!」
「このお金、何に使いますか?」
「そうだね、とりあえずもう勇者は引退して田舎暮らしでも始めるよ」
「いいですね。僕も村に帰ろうかな?」
「僕達の将来の安泰の生活は、既に約束されたものですね」
「そうですね」
ギルドへ戻る足取りは軽い。
街へ続く一本の道を二人の『馬鹿』が嬉しそうに歩いていた。
――― 数日後 ―――
マーズフォレトの街は大混乱になっていた。
大富豪の邸宅からは伝令の馬が激しく出入りし、悪徳商人と言われている商会は閉店となり夜逃げをしていた。一方で通常の商店や仕事などはいつもと変わらない生活であった。
実は先日、原因不明の大量のルビーがこの街に流通した為、ルビーの価格が一気に暴落したのである。その影響が直撃したのは貴重価値の高いルビーを買い占めて一儲けしようとしていた強欲な商人や裏社会での取引手段として使用していた闇の組織であった。
この街の貧困街の路上では小さい貧しい子供たちが石けり、でなく「ルビー」蹴りの遊びをしているぐらいだ。
一方、この原因を作った二人は冒険者ギルドの奥の部屋に通され、椅子に座りうつむいていた。
僕は顔をあげると、目の前に座っている黒縁メガネ君に睨まれた。
直ぐに顔を伏せた。
黒縁メガネ君はため息をついた。
このため息、以前も聞いたことがある。
「二人とも。なぜ怒られているかちゃんと理解しましたか?」
「ほんの少し多めにルビーを…」
黒縁メガネ君の目元がピクッと動いた。
「何が少しだ。国家予算規模の大量のルビーを流通しておきながら。これ一種の経済テロですよ!」
「はい、ごめんなさい…。」
メガネをクイッと上げて話を続けた。
「まあ、今回はほぼ流通していないルビーだったから、実体経済には影響がなかったから良かったですけど。それでも大損している大富豪もおられることを忘れないでくださいね!」
「はい、反省します」
僕達もため息をつきながら、落ち込んでいた。
二人の将来の安泰は暫く先になりそうだ。




