第44話 私たちの街での不気味な存在
リサの頭脳のおかげで石板の謎を解き先へと続く入口が開かれた。
その入り口から中へしばらく進むと大きな空間にたどり着いた。
その空間は天井が高く、目の前には湖のような水たまりが広がっている。
そしてその水溜まりに沿って洞窟が更に続いていた。
だが、もう時間は夕方を過ぎている。
僕の魔法は夕方5時から翌朝8時までは中級魔法以上は使用する事が出来ない。
もし無理に先を進んで想定外の事が起きても魔法で対処する事が出来ない。
「リサさん、僕の中級魔法が使えない時間だから、今日はここで一泊しませんか?」
「そうですね。皆さんと湖畔キャンプをしましょう!」
リサも楽しそうだ。
単に宝を探しに来ただけでなく、自然の中でのキャンプも楽しみのようだ。
リサもマーズフォレトに来てからは毎日忙しそうに仕事をしていたから、今日は息抜きがてらキャンプを楽しんでもらおうかな。
全員で手分けして料理や寝床を作った。
もちろん僕はみんなの勧めもあって、今回も現場監督だ。
みんなの働きを監督していても暇なので、僕も役に立とうと水溜まりで釣りを始めた。
「よーし、夕飯は僕に任せてね!」
リサは笑顔で送り出してくれた。
しばらく釣りをしていたが本物の湖とは違い魚が住んでいないのだろう。
全く釣れない。
「リサさん、ここには魚が全くいませんね。生き物の気配すら感じませんよ」
僕は料理をしているリサの方へ振り向き伝えた。
リサの元に盗賊の一人がその水たまりから釣った5匹の魚を届けている姿が見えた。
リサが僕の問いかけに気づいてこちらを見た。
「えっ?勇者様、何ですか?」
「いえ、何でもないです。独り言です……」
焚火を囲んで夕食を始めた。
焼き魚、カボチャのスープそして大麦のパン。
どれも素朴な味付けだけど、みんなでキャンプをしながら食べる食事はとても美味しく楽しかった。笑い声を周りに響かせながら、楽しい時間は過ぎて行った。
食事も終わり静粛の時、僕達は焚火を眺めていた。
薪がパチパチと弾ける音が周りに響き渡り、優しい炎が影を揺らす。
「この街に来てから、どれくらい経つのかな?このまま、この街で楽しい時間が続けばいいですね」
誰ともなく呟いた。
リサが薪を棒でつつきながら口を開いた。
「わたし、この街好きです。初めて訪れた時は人が多いうるさい街だと思っていました。
だけど、住み続けていたら街の人も親切だし素敵な場所も多いし、とても大好きな街になりました」
みんな頷いていた。リサは更に話を続けた。
「でも、最近気になる事があるのです」
リサは、薪をつつき続けている。
「最近、―――街の治安が良くなっている気がしませんか?」
言われてみると確かに。
貧民街と言われている区域の路地に入ると、すぐチンピラに囲まれカツアゲされていた。
でも最近は貧民街ではそのような事が少なくなっている気がする。
「衛兵の巡回が強化されているとか?どちらにしても治安が良くなるのは良い事ですよ」
僕は何気に答えた。
だが、盗賊達が僕を見つめる。
「勇者様、そうでもなさそうです。オイラ達の情報網で調べたのですが、とある裏組織がこの街に暗躍しているようで、いわゆる「チンピラ」を抑えているという話を耳にしてます。」
僕は首を傾げた。
「その裏組織と、チンピラの悪行はどう関係があるの?
裏組織がわざわざチンピラの悪行を抑えて治安を維持する理由がわからない。
それともチンピラの悪行が裏組織にとって都合でも悪いのか?」
盗賊達も腕組みをして悩んでいた。どうやら彼らもその先の情報は持っていないようだ。
リサが盗賊達に話した。
「盗賊さん達、お願いがあります。その裏組織の事もう少し詳しく調べてみてくれませんか?
何か嫌な予感が。ひょっとすると例の悪徳侯爵と関係がありそうな気がします。」
盗賊達は頷く。
「へい。その件、承知致しました。姉御!」
「最近うちの宿に増えてきた荒くれ者っぽい人たち。あの人たちも怪しいね」
僕も最近気になる事を伝えた。
「ところで、その裏組織ってどんな感じの組織なの?」
盗賊は僕に説明を始めた。
「話によると、最近この街に現れて勢力を拡大しているそうです。その組織のトップは若い人物らしくて、とても頭の回転が良いらしい。残念ながらこれ以上の情報は…。」
その裏組織の特徴を聞いて思い当る節がある。
リサ達だろう!
どう見てもその特徴お前たちだよ!
そういえば、僕はリサ達を見ていると、いつも思う事がある。
リサって盗賊の頭なのだろうか?
他の裏組織からリサ達を見ると、「女頭領の裏組織」と思われているんじゃないの?
僕はリサに尋ねてみた。
「リサって何している人なの?」
リサは笑顔で僕の方へ振り返り答えた。
「薬の調合師です!」
これは、笑うところ?




