第42話 宝の地図
僕はリサと三人の盗賊達と街の外を歩いている。
来た道を振り向くと、僕達がいつも過ごしているマーズフォレトの街が遠くに見えていた。
なぜ僕達が街を出てここまで来ているか。
それは先日山賊のアジトを制圧した時に宝の地図を山賊の頭領から渡されたのだ。
山賊達は地域の治安維持に忙しく、僕達に宝探しを託したのだ。
その話をリサにしたら興味津々でついてきた。
もちろん、一緒に三人の盗賊達もついてきた。
宝の地図には、街から離れた所の川を上ると滝に突き当たる。
その滝の近くにある洞窟内にある。とのこと。
地図を頼りにその滝の場所までたどり着いた。
見上げるほどの断崖絶壁。豪快に流れ落ちる水は、周囲に轟音を響かせている。
地面に叩きつけられたその水は霧のように舞い上がり、僕達を包み込んでいた。
だが、周りを見渡しても洞窟は見当たらない。
先日のダンジョンのようにもちろん矢印看板も無い。
僕はふと、不安を口に出してしまった。
「この宝の地図は偽物のような気がしてきた」
それを聞いたリサが宝の地図を持ちじっくりと調べ始めた。
「もし、この地図が正しいとすると、洞窟は素直にこの場所ですよね」
リサは、地図の滝の部分を指差した。
改めて地図を見てみるが、川が描かれていて、滝も描かれている。
その滝のところに×印がある普通の地図だ。
リサが再度、×印を指差す。
「普通、洞窟の場所に印をつけますよね。」
僕はそのリサの言葉で理解した。
「そうか、印の場所は間違っていない。そうだとしたら…。」
僕とリサは滝の方へ視線を移した。
洞窟は滝の裏側にあるのだ。洞窟の入口を隠すには一番いい所だろう。
だけど、あまりにも落下する水流が激しく滝の裏側になど行くことが出来ない。
リサが僕に尋ねた。
「これ、別の入口があるんでしょうか?」
「流石に、この流れ落ちる滝の中へ入っていくのは無理だからね。別に入口が……」
と言いかけた時、僕は思い出してしまった。
そう、僕は『伝説の勇者』であることを。
そうなると話は簡単だ。ほんの少しの時間だけ落ちてくる水を止める魔法をかければいいだけだ。でもそんな魔法は知らない。
だけど、以前ボルトフィッシュを捕まえた時の事を思い出した。
僕は自信に満ち溢れた表情でみんなに伝えた。
「洞窟に入る為には、流れ落ちる滝の水をかき分けて進む必要がある。
僕が水の流れを一時的に止めますので、その間、滝の裏側にある洞窟へ入りましょう」
僕は魔法を使う為に身構えた。
水を持ち上げる魔法、特にこの滝の水量を持ち上げるとなると中級魔法が必要だ。
目を閉じて集中する。そして白目になり通信を接続した。
――― 魔法協会に接続が繋がれて ―――
魔法協会事務所の受付にいる職員のミラさんと目が合う。
「どうも、お久しぶりですね。今日は魔法発動の申請書持ってきました。よろしくお願いいたします!」
ミラも笑顔で申請書類を受け取り、内容を確認し始めた。
「滝の水を止める魔法の発動ですか? 一体何をするつもりで?」
僕はミラに宝探しの件を説明した。
「翔馬さん、冒険者らしい事しているじゃないですか!」
僕はハニカミながら頭を掻いた。
「えぇ、一応!」
ミラは、書類に受付印を押し受付の奥にいる上司に手渡した。
僕が嫌いな課長に何やら説明をしているようだ。
あっ、課長がこっち見た!
思わず目を背けた。
ミラが書類を持って僕に手渡した。
「今回の魔法の申請は受理しました。
あと勝手ですが滝壺の水面を固める効果も付与しました。
これで、魔法発動中水面を歩いて渡れますよ」
予想もしていなかった効果付与をしてもらい顔がほころんだ。
「ありがとうございます。ここまでしてもらえて、大変助かります。
でも複数の効果を同時に発動する事も出来るんですね」
ミラは、驚いた様子で僕に答えた。
「それ、最初の講習会で説明されませんでしたか?」
「えっ?」
ミラは、うっすらと笑った。
「全く、翔馬さん本当に何も聞いていなかったんですね。
今回のように複数の魔法を組み合わせる事でさらに高度な魔法へと進化できるんです」
僕は感嘆した。
「魔法って奥が深いのですね。もっと勉強します、今日は急いでいるのでそれじゃ!」
僕は笑顔で挨拶をして協会の事務所を後にした。
そして通信接続を解除して魔法を発動した。
一瞬にして、先程の轟音が嘘の様に、周りが静寂へと変わる。
「時間が止まっているみたいですね」
リサ達も目の前で起きている現象に見惚れてしまっていた。
僕達は、小鳥のさえずりだけが聞こえる中、滝の裏側に見える洞窟に急ぎ進んだ。
全員が洞窟に入ったのを確認して魔法の発動を止めると、再び轟音が戻ってきた。
三人の盗賊は非常に驚き、尊敬の眼差しで見つめてきた。
「ゆ、勇者様って、本物だったのですね!」
「おいおい、何を今更そんな事を!」
一体、彼らは僕の事を今まで何だと思っていたんだろうか。
さらに盗賊達が小声でつぶやいた。
「今まで勇者様は、姉御の足を引っ張る『ヒモ』だと思っていた……。」




