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異世界転生チート勇者様、私に惚れているらしく、他の何にも興味がないらしい  作者: よつ丸トナカイ
【第3章】 新しい僕らのパーティ

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第41話 宿屋を利用する人たち

 僕は1週間ほど宿屋から一歩も外に出ていない。

 正確に言うと、外出禁止にされてしまったのだ。


 先日、伯爵屋敷で起きた壁崩壊事件。

 盗賊達の修理が終わる直前で、僕が余計な事をしてしまい、更に被害を拡大してしまった。

 決して事件ではない。ここは声を大にして言う。



 その後、盗賊達は笑顔で許してくれ壁の修理を終わらせてくれたのだが、僕に対する態度が非常に冷たい。まるで僕を恨んでいるかのようだ。

 リサに相談すると苦い顔をしていた。



 そして、リサは盗賊と一緒に部屋を訪れた。

「勇者様、あの壁を壊された事、盗賊達に理由をお話しされてはいかがでしょうか?」


 盗賊は不満そうな顔をしている。

「姉貴がどうしても勇者様の話を聞いてくれと頼んだから、ここまで来たんだぞ!」


 何て生意気なやつだ。でもリサが僕の為に弁明の機会を作ってくれたのは有難く思う。

 だから、ちゃんと謝って誤解を解こうかと思った。


「本当に、すまなかった。良かれと思って行った事が、逆に迷惑をかけてしまった」

 僕は頭を下げた。

 心の中では舌を出している。



 盗賊は眉間にしわを寄せて、ため息をついた。

「わかりましたよ。今回は姉貴の顔を立てますから。でもしばらくは宿屋で大人しくしていてくださいよ」


 これが一週間前の話だ。




 その後、約束通り今日まで宿屋の中でダラダラと日々を過ごしている。

 この生活も意外と良いもんだ。慣れてしまうと退屈になるのかと思っていたが、意外と楽しい。

 また、今までほとんど宿泊客がいなかったこの宿屋に客が増え始めたのも、ちょうどこの頃からであった。


 他の宿屋と比べても格安料金なのに、今まで客がいなかったのが不思議なぐらいだ。

 だけど、安いという理由で泊に来る客は、冒険者や傭兵のような荒くれっぽい雰囲気を持つ人ばかりだ。若い女性や、知識人のような客は見当たらない。



 まるで盗賊のアジトのような雰囲気になったこの宿屋だが、よく観察していると4つのグループに分かれている事に気づいた。グループごとに外出して、戻ってくる。

 すると他のグループが宿屋から出て行く。そんな繰り返しだ。


 もう一つ気づくことがある。それは他のグループ同士は全く会話をしない事だ。

 一つ屋根の下で同じ釜の飯を食べているのに世間話さえも一切しない。

 もちろん、グループ同士だけでなく、僕達に対しても話しかけてこない。

 何か不気味だな。


 きっと、雇われ元が違うグループだから、お互いの素性に深入りしない暗黙のルールでもあるのだろう。


 だけど、駄目だと言われると話かけたくなってきた。

 僕はこう見えてても転生前でのブラック企業では好成績の営業結果を残してきた。

 つまり、僕が持つ一番の最強の武器は「会話」である。

 見るがよい。伝説のブラック企業の営業力を!




 一人で食事をとっている男がいた。

 僕は食事を手に持ちその男の近くに座った。


 僕は食事をしながら、チラチラとその男を見る。

 男も僕の視線に気づいたみたいで時々目が合いはじめた。

 そこまでいけば計画通り!


「あの、ここの宿の食事は美味しいですよね」


 よし、決まった! 

 会話の定番、料理の話題。



 男は、「ええ、美味しいですね」

 と返事して、食器を持って席を立った。そして食堂から去って行った。


 男が食事を終わらせてしまった。タイミングが悪かったな。

 はじめたばかりだ。これしきで挫けては駄目だ。



 すると、食堂に違う男が現れた。

 よし、手には料理が載った皿を手にしているぞ。今から食事だな。


 僕は、男の目を見て軽く会釈した。




 無視された。




 男は、僕から一番離れたテーブルに座り黙々と食事を済ませ、食堂から出て行った。

 うん、食事中は誰にも邪魔されたくないよね。

 場所が悪い。場所を変えよう。




 僕は中庭に出た。

 そして、ベンチに座り優しい陽射しを全身に受けてくつろぎ始めた。

 今まで観察していたのだが、いつも誰かが休憩している場所だ。

 この場所だったら世間話すること自然だよね。



 僕が中庭のベンチに座って30分経つだろうか。

 まだ誰も来ない。

 一日中僕も中庭を見ていた訳でないから、きっと誰もいない時もあったのだろう。

 もうしばらく待つか。



 僕は夜空の輝く星を見ている。

 結局誰も中庭には表れなかった。

 おかしい、成績優秀の営業マンというのは、僕にとっては過去の栄光なのか。もうその能力は失われてしまったのか?

 僕は唯一の能力である「会話」が使えなくなってしまった事に自信を無くし始めてた。


 そうなると、他に僕がやれる事など何もない。

 僕の心には重くのしかかる何かがある。

 ――― そう、何もできない僕は誰にも必要されないんだ。―――


 寂しさと絶望が僕を襲う。



 そんな時、中庭に一人の女性が現れた。リサだ!

「勇者様、こちらにおられたんですね。夕食食べましょう!」



 僕の心を覆っていた重い何かが一瞬で吹き飛んだ。

 僕はリサの元へ駆け寄り話しかけた。


「僕はね、話しかけても何をやっても駄目なんだ。

 でもね、リサさんや仲間の為にやれる事を頑張る事に決めたんだ!」



 リサは、笑顔で頷いてくれた。

「勇者様、凄いですね。頑張ってください!」



 その言葉だけで僕は十分頑張れる。

 僕に何が出来るか分からないが、また明日から頑張ろう!



 一方、声をかけられたリサは思った。

(えっ、何? 意味が分からないんだけど。一体勇者様に何があったの!?)


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