表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生チート勇者様、私に惚れているらしく、他の何にも興味がないらしい  作者: よつ丸トナカイ
【第3章】 新しい僕らのパーティ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/72

第36話 深夜の恐怖

 僕達はダンジョンの中で睡眠をとっていた。

 薪が燃える火が揺らめき、壁に影を作っている。


 このダンジョンは初心者向けだから特に見張りなど必要はない。

 だが、そんな安心感を抱きながら眠っていた矢先、その事件は発生した。




 突如、地面が揺れだす。

 僕達は驚き目を覚ますが、周囲にはモンスターなどの気配はない。




 冒険者の一人が言った。

「この揺れは何だ?」

「地震? それにしては振動がおかしい。何かが地面を掘って近づいているような振動だ」



 振動は徐々に大きくなる。ダンジョン自体が崩れ落ちてしまうのではないかと思うほどだ。

 全員、不測の事態に備え防御態勢をとる。

 振動が徐々に大きくなり、昨夜の料理の鍋が、ガシャンとひっくり返った。



 その揺れの震源が近づき真下にまで来た時、揺れは収まった。


「止まった」

 マジソンはつぶやく。



 だが、その場にいる全員は緊張したまま周りへの警戒を続けている。

 僕も周辺の気配を探るが、何も感知できない。

 だけど、何かがおかしい。



「真下に何かある。ダンジョンとは違う違和感だ」

 そうみんなに伝えると、冒険者の一人が持っていた剣で地面をつついた。


 ―― ガシャ!



 金属と石がぶつかる音が周りに響き渡る。

 彼は何度か剣で地面をつついていたが、今度は足で地面を蹴り始めた。

 何回か蹴った時、ぽっかりと小さな穴が空いてしまった。



「この下、空洞になってますね、覗いてみましょうか」


 彼はしゃがんでその穴の中を覗き込む。

 その瞬間、彼の表情がこわばった。

「こ、これは一体! なぜこんな所に!」

 僕達はさらに緊張した状態で言葉の続きを待った。


 彼の仲間が尋ねた。

「おい、何が見える?」

「それが…。」

「はっきり言え、何が見えるんだ!」

「なんというか、自分でも信じられないのですが…。」


 全員息をのみ、彼の言葉に集中した。





「女性風呂が見えます」




 その瞬間、我先にとその穴を覗こうと集まっていた。


 その光景を見た僕は、もう帰ろうかなと思っていた。

 彼らが押し合い、もみ合いをした瞬間その穴の周辺が崩れ、僕もろとも下の風呂へと落ちて行った。


 ザバーン!


 大きく水しぶきを上げながら僕達は湯船の中に落ちてしまった。

 周りを見渡すと人がいる。だけど女性でなく髪の長い男性だ。

 僕は正直、安心した。


 これで本当に女性風呂だったら、後で警護兵士に捕まってしまう。

 なにより、女性風呂を覗いていた「変態勇者」という二つ名を頂戴するところだった。




 僕達が天井から落ちてきた時の轟音を聞いてか、風呂場の外から係員が入ってきた。


「どうされましたか?」

 と言っていたが、天井を見て納得した表情になっている。



「あちゃ、ついに天井が崩落したか。数日前から天井から砂が落ちてきていたからな」



 僕はその係の人に尋ねた。

「あの、ここは一体どこですか? 僕達はダンジョンを探索していたと思うのですが?」



 係の人は落ちてきた天上の岩の破片を湯船の中から取り出しはじめた。

「ここはね、このダンジョンをクリアした後の休憩施設だよ」


「えっ!?」



 話にピンと来ていない僕達に詳しく説明をしてくれた。



「ほら、あんた達このダンジョンの『宝物の間』目指していたでしょう。その部屋から出るとこの施設があるんだよね」


「はぁ」



「冒険者の人達、宝物の間まで来るの大変でしょう。だからダンジョンクリアした後ゆっくりお風呂にでも浸かって疲れを癒してもらえるように、この休憩施設があるの」


「温泉施設ですか」


「そうそう、ギルド直営の休憩施設。温泉あがったら大広間で冷たいジュースも飲めるよ!」



 僕達の思考は停止してしまった。



 マジソンは係員に尋ねる。


「さっき崩落する前に、凄い振動があったのですが、魔物かモンスターの大移動では?」


「えっ! そこまで振動が伝わっていたの? 

 最近ボイラーの調子が悪くてね、修理の為の担当者がいたんだけど、少し前に侯爵様から呼び出されて、そのまま帰ってこなくなったんだ。

 だからボイラーも、天井も補修できずこの有様だ。

 俺一人じゃ手が回らないよ。

 まったく、侯爵様は俺たちの仕事の邪魔ばかりして」



 悲しそうな表情で天井の穴を眺めていた係員が、かわいそうに見えてきた。

 これって、ワンオペだね。



 そして、係員は僕達の方へ振り向いた。


「あっ、君達はダンジョン攻略中だったよね。

 とんだトラブルでここまで来てしまったけど、受付に行ってハンコ貰ってきな。

 そうしたらクリア扱いになるから」


「あ、はい。ありがとうございます」




 僕達は、風呂場から出て受付に向かい、クリアのスタンプを貰った。

 五人ともスタンプを貰い終わり一カ所に集まってぼんやりと立ち尽くしていた。


 これで、ダンジョンクリアで本当にいいの?

 みんなの表情を見ると同じ事を考えている顔だ。

 すると一人が拳を振り上げ叫んだ。



「おーー!」



 僕達も後に続いて拳を振り上げた。


「ダンジョンクリアだ。 おーーー!」



 その横を、風呂上がりの別の冒険者たちが、冷えたコーヒー牛乳を飲みながら通り過ぎて行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ