第33話 ダンジョン、リベンジ!
今日は、先日のダンジョンに再挑戦する為、再開したマジソンと街道を歩いている。
数日振りの僕の所属パーティ「のんびり倶楽部」の活動だな。
しばらく進むと、山賊の女性と出会った地点に着いた。
「マジソン、今日は流石に誰もいないね」
「先日、山賊のアジトを僕達が制圧したから、この辺の治安も良くなったとギルドで聞きました。皆さんその話でもちきりでしたよ。」
「えっ、冒険者ギルドそんな事になっているの?」
「はい、おかげで『のんびり倶楽部』の知名度も上がって、今では僕も人気者です!」
「よかったじゃない。人気者になったら色んな人が寄ってくるね」
「実は既に、どうやって制圧したの、その後の山賊の管理は? とか聞かれまくりです。
だからね、僕の活躍をみんなに話してあげているんですよ。」
嬉しそうに話をしているマジソンを見て僕は思ってしまった。
(制圧に関しては、君、何もしていないんじゃん!)
そんな事は心にとめ、先を急いだ。
この辺りは山賊が良く襲撃に使っていた場所。
だけど、いまだに周辺で気配を感じる。
「あいつら、まだ山賊行為しているのか?」
少し不安に思いながら周りを見渡した。
草藪の中から山賊の頭領が、ひょっこり顔を出す。
「これは、勇者様。今回はどのようなご用事で?」
「先日行きそびれたダンジョンに向かう途中だ」
「そうですか、それはお気をつけて!」
「で、お前らいまだに山賊行為をしているのか!?」
「滅相もございません。あれから心を入れ替えてこの辺りの清掃・治安警備を致しております」
頭領は、ぎこちない笑顔を浮かべて答えた。
僕は安心した。
言われてみれば、以前来た時より街道が綺麗に整備されている。
しかも不審な人物も見かけなかった。
だけど、一つ心配な事がある。
「それは、良い心がけだ。だが山賊行為を止めた今、収入はどうしているんだ?」
「へい、都市間での警護が主な収益源でございます。」
僕は驚いた。山賊行為という違法な事をしなくても、ちゃんと真面目にやれるじゃないか。
「おかげさまで、地域の治安向上にもつながり、この地域の領民の方々にも信頼を得始めてます。
最近では、感謝されて採れたての野菜を頂いたりもしております」
頭領の笑顔が眩しい。
先日までの笑顔は邪悪で欲にまみれていたが、今は違う。
自分たちの使命を感じた誇りを持つ笑顔だ。
その話を聞いて、マジソンも笑顔で声をかけた。
「その調子で、これからも頑張れよ!」
頭領の笑顔がなくなり、まるで邪鬼の様な表情に変わる。
「てめえ、うっせーぞ。 今度俺様にそんな口の利き方したら、丸太にくくりつけて滝の上から投げ捨てるからな!」
マジソンは怯えて、僕の後ろに隠れた。
やっぱりマジソンには厳しいんだね。
先日の『僕に歯向かわないようにする魔法』、少し間違えたかな?
マジソンには厳しくする魔法なんて、入れていないはずだけどな。
とりあえず、このままだとマジソンの身が危ない。
頭領に挨拶をしてその場を離れた。
「マジソン、凄く嫌われていたね。君、山賊たちに何したの?」
マジソンは首をかしげていた。
「とくに何もしていないはずですけど。あえて言うならアジトを占領した後に、頭領の机の上に立ち上がり、勝者の証として頭領の帽子を燃やしただけですけどね。特に何もしていないな?」
――― こいつは、やはり馬鹿だろう ―――
「マジソン君、それは駄目だよ。山賊にもプライドがあるんだから」
「でも、普通はしますよ?」
「この世界ではそのような事をするかもしれないけど、負けた相手にそれは駄目だよ。相手を上手く持ち上げて、いい気持にさせた方が今後の為にも大切だよ」
気が付くと僕は、邪悪な笑顔で説明していた。
実は、転生前のブラック企業で同じことを僕はやらかしていた。
とある件で上司と言い争いとなった。
最後は社長が間に入り僕の正しさを認めてくれたので、その口論は僕が勝った。
だが、問題は次の日からだ。
あからさまに上司による嫌がらせ。
ノルマが増え、横取りは当たり前。
しかも誰も行きたがらない顧客の担当までやらされた。
つまり、長い目で見たら僕の負けだ。
マジソンはまだ若いからその事を理解していないかと思う。
これもいい勉強の機会だ。
山賊からは一生嫌われ続けるけれど、何とか上手くやって欲しい。
いいこと、思いついた。
さっきの山賊の管理の担当、マジソンにしてもらおうかな(笑)




