第26話 ダンジョンに向う道で
マーズフォレトの郊外。
地平線まで続く広大な草原は、風が吹くと緑色の大海のように揺れている。
その中を伸びている街道には、二つの人影があった。
そう、新しく僕が結成したパーティ「のんびり倶楽部」の二人だ。
「翔馬さん、この道を進むと山の麓につきます。そこから山の方へ続く道を進むと目的のダンジョンに到着します」
「魔導士さん、詳しいですね。何度かそのダンジョンに行った事ありますか?」
「実は初めてです。以前同行したパーティと行く予定だったのですが、当日私が体調を崩して。
だから今回はリベンジのつもりです」
「そうなんですね。僕は、ダンジョン自体初めてなので、右も左も分からないです。
だけど一緒に攻略してリベンジをしましょう」
「是非、よろしくお願いします。」
魔導士は笑顔で応えてくれた。
先日の悪役領主とは違い、感じが良い真面目な人そうだ。
きっとうまくやっていけるだろう。
「ところで、魔導士さん、一つ良いですか?」
「どうぞ」
「魔導士さん、何とお呼びすればいいのですか?」
「名前の『マジソン』でいいですよ」
「マジソンですね。よろしく!僕は翔馬」
マジソンはクスッと笑う。
「知ってますよ!」
そんな感じで、パーティ名の如く「のんびり」とダンジョンへ向っていたのだ。
それから1時間ほど進んだあたりで、街道の側に巨木が見えてきた。
その根元で、見るからに旅人っぽい女性が、一人うつむき座り込んでいる。
何か具合でも悪いのだろうか?
マジソンと目を合わせて合図をかわすと、彼は女性の元へ歩み寄った。
「どうしましたか?」
女性は顔を上げた。その目からは涙がこぼれていた。
「実は…。」
その様子を見る限り、何かが起きていると二人は感じ取った。
女性はゆっくりと、言葉を選びながら口を開いた。
「この先の山の麓で山賊に襲われたんです。財布を投げ捨てた隙に走って逃げてきました」
「そうですか、それは大変でしたね。でもお金は盗られたけど命が無事でしたから」
マジソンは、励ましの言葉をかけたが、女性は首を横に振る。
「財布と一緒に、村から預かった郡主様への手紙も一緒に投げてしまいました。
その手紙を郡主様へ届けないと、今後数年私たちの村への援助が打ち切られて村のみんなに迷惑をかけてしまう事に」
彼女の話を聞いて、『大変だな、可哀想だな』と思った。
さあ、マジソン君よ、僕達も目的のダンジョンへと向かおうでないか!
そう思いマジソンへ視線を向けると…、泣いている!
「しょ、翔馬さん! 今の話聞きましたか!」
「う、うん」
「このままだと彼女の村が大変な事に!」
「そうだね」
「僕達で、その手紙を取り戻しに行きましょう!」
「…。」
僕はこの手の話には乗る気ではない。
というのも、結構面倒じゃない?
山賊の拠点を見つけて、倒して、手紙を回収して、彼女に渡す。
やはり面倒だよね。
困った顔をしながら、マジソンに問いかけた。
「でも、ダンジョンへ行かないと」
「ダンジョンはその後でも大丈夫です」
即答された。
「ほら、あまり他人の僕達が関わって良いものだろうか」
「大丈夫です、彼女見てください。両手で拝みながら僕達を訴えかける目で見てます」
「でも僕達は初心者パーティとは言え、一応プロの冒険家だよね。
無料で依頼を受けるのもどうかと」
「大丈夫です。山賊の拠点には宝物もありますよ」
「宝物?」
「はい。宝物」
「沢山?」
「ザクザクと」
僕の困ったような表情が、一瞬にして悪そうな表情に変わった。
そう、先日の悪役領主の様な。
「まぁ、困っている人は手を差し出すのは、冒険家…、いや人間として当然だよね」
「そうと決まれば、山の麓へ行ってみましょう!」
僕は今後の生活資金を稼ぐ為、山賊退治を行う事にした。
(翔馬さんの事、少し解ってきた気がする。あっちのタイプの人なんだ)
マジソンは小さく微笑みながら翔馬の後を追いかけた。




