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異世界転生チート勇者様、私に惚れているらしく、他の何にも興味がないらしい  作者: よつ丸トナカイ
【第2章】郡領都市 マーズフォレト

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第23話 宿の引っ越し

 夕方、僕は酒場でハチミツ酒を飲みながら、リサ達が仕事を終わるのを待っていた。

 異世界では冷たいビールなんて望めないので、ハチミツ酒をよく飲む。

 最近のお気に入りは、この街で人気の「カボチャのパイ」をつまみながらハチミツ酒を飲む時間だ。




 酒がまわり気分が良くなってきた頃、リサ達が酒場に現れた。

 身を乗り出し手を振ると、満面の笑顔で応えてくれた。

 そしてテーブルに座ると、メニューを開き食事を選んでいた。


「今日の食事は僕の奢りですから、遠慮なく注文してください!」



 リサと盗賊達はメニューから目をそらし、冷たい視線で僕を見つめてきた。

「おいおい、僕にお金無いと思っているだろう。これを見るがよい!」


 鞄から120万マネーが入った袋を、ドンとテーブルの上に置いた。


 リサ達は驚いていた。盗賊が思わずリサにつぶやく。

「姉御…。いつも金欠の勇者様が何故こんな大金を?きっと訳アリのお金ですかね」


 その言葉を聞いたリサは、真剣な表情で僕を見つめた。

「勇者様、今ならまだ間に合います。持ち主の方へお返ししましょう!」


 確かにいつも金欠の僕がこんな大金持ったら、怪しむよね。

 誤解を解く為、今日あった地下の部屋でゴブリン退治と子供捜索の依頼の事を話した。



 リサは申し訳なさそうに謝ってきた。

「勇者様、ごめんなさい。突然このような大金を見せられたので、つい…。」

「いやいや、説明していなかった、僕にも原因がありますよ!気になされずに!」

 と笑顔で応えていたが、心の中では泣いていた。



 その後、五人は食事と話で盛り上がっていた。

 僕は思い出したように本題を話し始める。

「ところで、これからの事を話そうと思う」


 リサ達は、持っていたフォークをテーブルに静かに置き、耳を傾けていた。

「僕達は、この街にしばらく滞在する事になる。

 この報酬を生活資金として活用しようかと思う。

 だけど今まで通りの使い方ではお金がいくらあっても足りない。

 節約の為にも安い宿屋に移動しようかと思う」


 盗賊達は感心していた。

「勇者様にしては、ちゃんと考えておられるんですね!珍し…。」

 とりあえず、盗賊には黙らせる魔法をかけてやった。



「ギルドの職員から安い宿を紹介してもらったんだ。今日、その宿屋に行ってみたんだけど、部屋も綺麗で、お風呂付。しかも食堂もある」


 リサは、眉をひそめて言った。

「でも、そんなに都合よく揃っている宿屋、結構お高いんでしょう?」


 僕は微笑んだ。

「フッフッフッ。そう思うでしょう。でもなんと今までの宿代の1/4だよ!」

「えっ、安ーい!」



 リサとのやり取りで転生前、深夜残業でクタクタになって家たどり着いた時に見た「テレビショッピング」のシーンを思い出した。

 あの時は、心身とも疲れていた為か、「そんなはずないだろう。きっとインチキ商品だ」と思っていた。


 あれっ?ひょっとしてこの宿屋怪しい?

 勇者が持つ独特の感覚とでもいうのだろうか、僕の中に一瞬迷いが巡った。

 いや違う、ギルドの黒縁メガネ君が勧めた宿屋だから怪しいはずがない。


 僕の思いに反して、リサ達は宿屋引っ越しの件に前向きになっていた。

 ギルド職員が勧めるぐらいだから、問題はないよね。僕は自分を納得させるように、思い込む事にした。



「なら、食事終ったら見に行きませんか?」

 リサが「新しい宿」という興味で目を輝かせながら提案してきた。



「そうと決まれば、さっさと食べて宿屋へ向かうぞ!」

 僕は残りの食事を口の中に掻き込んでだ。



 酒場を後にした勇者一行は、広場にいる大声で怒鳴っている人を目にする。

「リサさん、回り道して宿屋へ向かいましょう。僕あの人嫌い」


 僕は違う道へと進み始めた時、リサは怒鳴っている人を見つめ何かに気づいたように驚いて僕を追いかけた。

「勇者様、あの人と何かあったのですか?」


「今日ね、あの野郎が広場で突然文句言ってきたんだ。だから口論になってしまってね。最後は魔法をかけて動かなくして逃げてきた。あいつには関わりたくないね。」


 リサは顔面蒼白になり震えた声を出した。

「あのお方は、この街を含む複数の郡都を支配している地方領の貴族です。この王国内でも上位10位には入る有力侯爵様です」


「えっあのオッサン、そんなに偉い人だったの?何か僕らと同じ格好をしていたから分からなかったよ。でもリサさん、良く知っていたね。」


「はい、実は医薬局製造所にも来られて、色々と文句を言って帰られました。お世話になっている医薬局の課長さん泣いてましたよ。」


「まじかぁ。あのオッサンそんなに迷惑な人なのか。だったら、さっさと潰しておくか」


 そう呟いた瞬間、僕の後ろにいたリサは慌てて僕の腕を掴んだ。

 僕が振り返ると、リサは小さく首を横に振り涙目になっていた。


「勇者様、それだけは、お止めください」


 僕はリサの表情をみて、心臓に針が刺さった気分になった。

 迷惑な貴族の排除は良かれと思ったが、こんなに彼女を怖がらせていたとは。

 簡単に人の命に係わる事を言うものじゃないな。

 猛省した。


「冗談ですよ。そんな野蛮な事僕がするわけないじゃないですか!」

 今思いつく言い訳を並べてその場を回避しようとした。


 リサの表情が和らぎ、微笑みが戻った。



 盗賊がふとつぶやく。

「勇者様のさっきの目、マジだったで…。」


 また、黙らせる魔法をかけてやった。

 この盗賊達は僕に恨みでもあるのか? さっきから何度も。

 なんか…そう、僕の事を敬う魔法でもないかな。こいつらにかけてやるのに。



 宿屋へ向かいながら、盗賊をみてふと思った。

 僕は本格的に魔法の勉強をする必要が出てきた。こいつが僕を敬う魔法をね。

 まぁ急ぎでないから、また今度ゆっくり勉強でもしようかな。

 いや、急ぎだろう!


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