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異世界転生チート勇者様、私に惚れているらしく、他の何にも興味がないらしい  作者: よつ丸トナカイ
【第2章】郡領都市 マーズフォレト

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第22話 悪徳領主、街に現る

「はぁ、胃が痛くなってきた…。」


 この街、マーズフォレト郡都の入口に、ため息をついている高貴な男が一人立っていた。

 この男の名前はマルデリア伯爵。この郡都一帯を治める中級貴族である。


 中級貴族と言っても王都からかなり離れた郡都なので下級貴族と言っても良いくらいだ。

 彼は、いつ訪れるか分からない人物を出迎える為、その場に立ち続けている。




 街道の遥か先で砂煙が見え始めた。

 砂煙の中から一台の馬車が現れ、マルデリア伯爵へと近づいてくる。

 気を引き締めなおし、笑顔で迎えた。


 馬車は伯爵の前で止まり、中から一人の貴族が下りてきた。

 人は性格が顔に滲み出るものだ。

 この貴族は見るからに悪い事をしている人だ。

 誰もが彼を見た瞬間、『悪徳領主』と呼ぶだろう。



 その悪徳領主がマルデリア侯爵に話しかけた。

「おい、今からお前の街を検閲する。隠し事は今すぐに正直に言え。後でばれたら容赦しないからな」


 そう言い放つと颯爽と街の中に入っていった。



 マルデリア伯爵はうなだれながら、つぶやいた。

「隠し事何てございませんよ。そな事が出来るほどこの街は裕福じゃないのにな」


「おい、何か言ったか!」

「いえ、なんでもございません」


 男は、急ぎ足で後を追った。





 街の広場に平民の格好をした『悪徳顔』の人物が立っていた。

 側にも同じく平民の格好をしたマルデリア伯爵がいる。

「フォルファード侯爵、どうしてこのような平民の格好をしているのですか?」

「貴族の格好で街の中を歩き回っても、本当の街の姿が分からないだろう!」



 マルデリア伯爵はハッと息を呑んだ。

 フォルファード侯爵は悪徳領主と言われているが、実は民の事を思う名君なのではないか?

 さすが、マーズフォレト郡を含め複数の郡が所属する「フォレト地方領」を統治されているお方だ!その地方の郡にまで自ずから足を運ばれて民の視察をされるなんて、何て名君なんだ!

 マルデリア伯爵は、名君「フォルダード侯爵」に感銘を受けた。



 フォルファード侯爵は言った。

「こんな、みすぼらしい恰好なんてしたくないよ。でも市民がどれぐらい財を貯め込んでいるかを見るには、一番いい恰好なんだ。お前も覚えておけよ」


 その言葉を聞いて、マルデリア伯爵は肩を落とした。

(やっぱり、民の事なんて少しも思っていない悪徳領主だ…。)




 フォルファード侯爵は広場で不審な人物を目にした。

「おい、あの男は昼間から働きもせずに広場でダラダラしているぞ。ちょっと話してくる」


 不審な男に近づき声をかけた。

「おまえ、仕事もせず何をしているんだ!」



 突然声をかけられた男、勇者は驚いて答えた。

「いやいや、さっきまで冒険者ギルドに行ってたんだよ。」

「ギルドで何をして働いていたんだ!」


 勇者は、少し言葉に詰まりながら答えた。

「あの、あれだ、依頼を確認したり、トイレに行って石鹸の有無の確認をする。

 そして・・・スタンプを押してもらったり。とにかく僕は忙しんだぞ!」


 フォルファード侯爵は更に強く言った。

「それは、働くうちに入らん! 休まず働いて富を街に献上するのが平民の義務じゃないのか!」


「はぁー? このオッサンは意味わからん事言って! そんな献上とか、義務とか俺関係ないし。だったらオッサンが一人で献上すればいいじゃんかよ!」



 マルデリア伯爵は二人の喧嘩に挟まれ、慌てふためき、おどおどしていた。

(やばい、これはやばい!)




 フォルファード侯爵は顔を真っ赤にして怒鳴りつけた。

「この、平民風情が! この俺を…」

 と言いかけた時、突然広場は静かになった。


 勇者が『無口になり、足が動かなくなる』魔法をかけて黙らせていた。

 身動きが取れないフォルファード侯爵に、勇者は「ベーー!」と舌を出して広場を後にした。



 程なくして、フォルファード侯爵から魔法が解け身動き出来るようになっていた。

 息を切らしながら尋ねた。

「おい、あの男は一体何者だ?」


 マルデリア伯爵が一番驚き、二人の喧嘩に足を震わせていた。

 彼には魔法がかけられていないが、侯爵からの質問に何も答える事が出来ず黙り込んでいた。


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