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異世界転生チート勇者様、私に惚れているらしく、他の何にも興味がないらしい  作者: よつ丸トナカイ
【第2章】郡領都市 マーズフォレト

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第14話 新たな冒険への第一歩!

僕とリサは村の入口に立ち、マーズフォレトへ続く道を見つめていた。

その街で僕の冒険者登録をする為だ。


二人だけの旅! 想像しただけでも、心が弾んでしまう!楽しみだ!

だが、今の僕の心は最悪だ…。


「姉貴! オイラ達も旅の準備出来ましたよ!」

三人の盗賊達が笑顔で僕たちの前にいる。



(なんで、こいつらも一緒なんだよ!)


折角の二人旅を邪魔された事に僕は少し「ムッ」としている。




僕とリサが、この村を留守にすると決まった時、あの魚派の馬鹿…でなく村長が

「二人だけでは心配だから、君たちも連絡係として同行してくれ!」


と余計な事を言いやがった。

リサはその提案も快諾し、

「大勢の旅は楽しみですね!」


と天使の様な笑顔で喜んでいた。

まぁ、リサがそこまで言うなら僕は我慢してもいいんだけどね。




5人はマーズフォレトを目指して歩き出した。

そういえば、この世界に転生して以来、エジマーズフォレトの村を出た事なかったな。

折角だから旅を楽しむことにしよう。


そう思うと、先程までの怒りは消え、『 異世界での旅 』という初めての出来事に期待を持ち楽しみはじめていた。





森に入った。この辺りでは魔物はほとんど出てこない。

野生のシカや猪ぐらいしか遭遇しない平和な土地だ。

天候も良く、輝く木漏れ日を浴びながら、爽やかな森の中の道を進んでいる。



森を抜けると大きな川が見えてきた。

橋を渡り小さい村にたどり着いたので、今日はここで一泊することにした。


宿屋を目指し歩いているのだが、この村に違和感をおぼえる。

そうか、人の気配がない。

正確には村人が家の中に閉じこもっているのだ。

でも、確かに家の中からの視線は感じる。


宿屋を見つけ中に入ると、ひとりの女性が迎えてくれた。

中に招かれ部屋に案内された。

僕もリサと同じ部屋に入ったが、無言で隣の部屋に連れ出された。

その時のリサの目、少し怖かった。


宿泊客は僕達だけしかいない。多分小さな村だからあまり旅人も訪れないのだろう。

折角だからリサとこの村を散歩する事にした。

宿から出た5人は、村のはずれまで来た。

ほんと、お前ら三人はついてくるなよ。

宿でのんびりしておれ!


村はずれには一件の家が建っていたが何かおかしい。

そう、窓に格子がつけられているのだ。

五人は格子が付いている理由をあれこれ話しながら勝手に盛り上がっていた。




近づいてきた老人が僕たちに話しかけた。

「旅の者かな?」

「はい、マーズフォレトへ行く途中です」


老人は一瞬、眉を動かした。



「この家にはどうして窓に格子が付いているのですか?」

僕は老人に尋ねたが、老人は険しい顔をして答えた。

「この辺りは熊が出るから、侵入防止のためだ。この家から離れた方がいいぞ」



少し期待外れの答えだ。もっと何か凄い秘密でもあるのかと思った。

僕はすぐ表情に出てしまう。

「なんか、残念そうな顔をしているな。なら、不思議な出来事を話そう」



五人は老人の言葉に耳を傾けた。

「このジャガイモ畑の先に農機具小屋があるが、壁が何故か壊れているんだ。」



リサが、尋ねた。

「それは、いつごろ壊れたのですか?」

「3日前かな?」

「意外と新しいですね」


老人は頷き話を続けた。

「夜中に、『ドーン』という音がして。少し焦げ臭い匂いが充満していた。何だろうね?」



僕はピンときた。音がして、焦げ臭い、―――爆発だな。

爆発以外は考えられない。


得意げに老人に話した。

「そのミステリー、私が解決いたしましょう」


すぐに調子にのって、お芝居の主人公になったかの様な振る舞い。

ほんと勇者は小物だね。盗賊達はそう言いたそうな目で僕を見ていた。




小屋の前に来てみると確かに1ヶ所だけ壁に穴が開いていた。


勇者は得意げな顔をしながら

「ほらね、壁の側で爆発があり、爆風で壁に穴が開いたと。僕の推理は完璧だね!」


盗賊は質問した。

「何が爆発したのですか?」




僕は、少しイラっとした。

「そんなん、知るか! 誰かが誤って、夜に何かを爆発させたんだろう」


盗賊達は納得していない。

「それじゃ何も解決…!」


僕は、「黙り込む魔法」を発動してやった。



リサは、爆発の後を見て首をかしげていた。

「爆発なら壁以外の物も壊れてそうですが、壁以外は無傷ですね。」


「流石、リサさん。僕も爆発違うんじゃないかと思って現場を見ていたんですよ!」

僕を見つめる4人の表情が冷たい。


「これは、一方的に何かが壁にぶつかって壊れた感じもしますね。例えば、猪とかの動物とか」

「なるほど、イノシシは走り出すと急に止まれない。だから壁を突き破ったのか」

「でも、爆発も間違えないのかしら。ほら、小屋から少し離れた所に、焦げた砂が散らばってますよ」


リサが新たな現場を見つけた。

確かに少し焦げ臭い。だけど爆発にしては地面に生えている草に焼けた跡はないし、地面目えぐれていない。焦げた砂が散らばっていだけだ。



そうだ、イノシシの気持ちになろう!



僕は焦げた砂が散らばっている所に立った。

そして目を閉じた。

見える!イノシシとしての視線が。


ここで何かの爆発がここで起きたらイノシシは驚いて逃げる。

僕は目を閉じたまま一歩踏み出す、そしてまた一歩踏みだす。


こうしてイノシシは逃げていくのだろう。

僕の心に潜む『野生のイノシシ』が芽生え、徐々にイノシシになりきっていた。

気が付いたら走り出している。

目を開くと目の前に壁が見えた。

走るのを止めようとした時、赤黒い苔を踏んで滑ってしまい、そのまま壁へ激突!




「ドーーーン!」




僕は草の上に寝転がり青空を流れる雲を眺めていた。

リサは僕が踏みつけた赤黒い苔を手に取り見つめて。


大きな音に驚いて、村人が集まってくる足音が聞こえる。

そう、僕にはわかる。

今から叱られることを。

だって、小屋には2つ目の穴が空いているんだもの。


どう言い訳をしようか。

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