第11話 リサの大活躍
私はリサ。
今日は全くやる気を起こさない勇者様を騙して…、でなく懇願して小麦畑の手伝いをしてもらっている。
お昼ごろ、私は遠くの藪の中で何かが動く気配を感じた。
広大な自然の中で生活していると、異変を察知する力が身に付く。
きっと自然の中で生き抜く為の能力かもしれない。
私は畑の側にある草藪の後ろに、すぐさま移動した。
異変を感じた遠くの藪から三人の人影が現れる。
勇者は三人に気づいていない。
三人の盗賊は私の存在に気づき、ニヤニヤとした表情で近づいてきた。
「おい、あそこに良い娘がいるじゃないか!きっと高く売れるぞ!」
私は震えた。
「あの娘、俺たちにビビって動けなくなってるぞ!」
盗賊は私を掴もうと手を伸ばし草藪の中に一歩足を踏み入れた。
――― ズボ! ―――
盗賊たちは顔を見合わせた。
この草藪、実はドロ沼の上に置いてある偽物なのだ。
盗賊たちは身動きが取れず、もがいていた。
「くっそ! どう何なっている!足が動けないぞ!」
そして、盗賊の一人が目の前にいるリサの顔を見た時、恐怖に包まれた。
胸の前で腕を組んで立っている娘は、微笑みながら三人を見下ろしていたのだ。
盗賊は悟った。
この娘にはめられただと。
しかも俺たちの遥か上を行く策略で。もうかなわない。
盗賊たちは、人間としてでなく、動物の本能として畏怖を私に抱いた。
私はこの盗賊を捕縛し、村長に引き渡そうと考えていたが、私一人ではどうする事が出来ない。
そこで、とある行動に出た。
目に涙を浮かべて、叫んだ!
「キャーー、勇者様。助けてくださーーい!」
リサの悲鳴を聞いた勇者は農作業の手を止め、リサの方を見た。
なんと! 盗賊が今にもリサを捕まえようとしているではないか!
「ゆ、許さん!」
勇者のテンションが一気に急上昇。怒りで赤くなった顔で盗賊を睨みつけている。
冷静さを失った勇者は魔法を発動する為、全集中した。
白目になり数秒後。
「捕縛魔法――!」
そう叫んだ瞬間、天上で雷鳴が轟き、周囲は轟音と強い光に一気に包まれた。
「ドーーーン!」
盗賊たちに稲妻が落ちた。
一番驚いたのは、魔法を発動した勇者自身である。
「あっ、あれ?捕縛魔法じゃなく、稲妻魔法が発動されてる!」
勇者は慌てて魔法許可申請書を確認した。
「あつ、発動魔法の管理番号を間違えて申請しちゃってる!」
勇者は、リサの元へ駆け寄る。
「大丈夫ですか!けがはありませんか!」
「はっ、はい。大丈夫です。少し驚きましたが。」
リサは驚き、荒く呼吸をしていた。
勇者はリサが無事である事に安心し、胸をなでおろした。
さて、ここで気絶している盗賊三人組、どうしたものか?
盗賊の一人が目を覚ました。
体はロープで縛られ、身動きがとれない。
そばにいる仲間の盗賊も同様、ロープに縛られ、うなだれていた。
(確か、娘の策略にはまって沼に足を取られた。
抜け出そうともがいていた時、ものすごい衝撃で気を失ったんだよな。
そこまでは覚えている)
(あぁ、あれだ、あの娘の仕業だ。
俺たちを翻弄させる策略と、太刀打ちできない力を持っているに違いない)
改めてこの娘を見てみると、とても恐ろしく大きな悪魔の気配を感じた気がした。
盗賊たちは、完全に戦意を失った。
リサが盗賊に悪魔の微笑みで話した。
「盗賊さん達。もうこれに懲りたら悪い事をしちゃだめですよ」
三人の盗賊は大きな涙を流しながら許しを請うった。
「もう、二度といたしません。歯向かいもしません、どうかお許しを!」
リサはこんなに泣かれるとは思わなかった。勇者の方を見ると頷いていた。
そして勇者は盗賊たちに話しかけた。
「おい、盗賊ども、これで懲りたら同じ事はするなよ。彼女が非常に怖がっていたじゃないか!」
盗賊は、「それは違う」と勇者に伝えようとしたが、娘からの突き刺すような視線を感じ、恐怖で黙り込んだ。
「…はい」
「にしても、お前ら本当に、必要な時には何もせずに、必要でない時はこうやって余計な事をするんだな。雨の日にしか水をやらないお爺ちゃんかよ!」
勇者は、面白い例えを言ったと思い、自慢げに腕を組んでいた。
「えっ!?」
リサと盗賊は凍り付いた。
何年ぶりだろうか、この地方の寒波は。
勇者とリサは、盗賊に二度とこの村に迷惑をかけないという約束をして解放した。
「勇者様、盗賊を解放しても良かったのですか?」
「別にいいんじゃないかな? 本人たちも反省して、二度と迷惑かけないって約束したし」
勇者の相手が盗賊であっても約束を信じる優しさにリサは心から感銘をうけた。
「勇者様って、優しいんですね!」
その言葉で、勇者は顔を赤くして喜んだ。
心臓の鼓動は高まり、一気に体中が熱くなる感覚をもった。
この地方の寒波は消え、元の暖かい日々へと戻った。
翌日の昼頃、勇者は家を出て広場を訪れた。
ベンチにはリサが座っている。
勇者は笑顔でリサに手を振ろうとしたとき、
リサの前で、ひざまついた三人の盗賊の姿も見えた。
「姉貴、次は何をしましょうか?」
「そうですね、向こうにある小麦の袋を全て倉庫へ運んでいただけますか?」
「はい、お安い御用で!」
三人の盗賊たちは、リサの指示に従って働いていた。
その姿を見た勇者は驚いていた。
「一体、何事?!」




