#9 君を知る
悠は部屋に戻って昨日世奈からもらった佐賀錦とチキンとコロッケを食べた。
最初のうちはチキンだけでお腹を満たそうと思ったがどうも足りないようで追加でコロッケと佐賀錦にまで手を出してしまった。
おそらくは今日と昨日の運動量と今日の世奈に対しての違和感と心配からだろう。
「ふわぁぁぁ...」
悠は大きくあくびをした。
気づけば時刻は22時を過ぎていた。
明日は世奈との約束もあるのでシャワーを浴びてすぐに寝ようと考えた。
彼にとって記憶を取り戻すことは二の次になっていた。
そうしてシャワー室に向かうために立ち上がろうとすると
『コンコン』
ノックの音が聞こえた。
このアパートの部屋にはインターホンがついていないため中にいる人を呼ぶにはノックする必要があるのだ。
そうして悠は今ノックをしたのは誰なのかすぐに察した。
「あ、あの...こんばんは.......」
昼間とは想像もできないほどに変わった態度に驚いたもののすぐさま冷静になり彼女に対応した。
「何か話しをしたいならいったん上がりなよ」
玄関前で話せる内容ではないことを察して彼女を部屋に招き入れた。
「おじゃまします」
そう言って世奈は部屋へと上がりテーブルをはさんだ僕の前に座らせた。
「で、こんな夜中にどうしたんだ。」
来た理由はおそらく今日の違和感の原因についてだろうがとりあえず僕はなぜここへ来たのかを聞いた。
手っ取り早くその真相を知りたかったからだ。
「......」
世奈は何かを言おうとしては口を閉じて言おうとしては口を閉じるを繰り返していた。
悠は話の振り方がまずかったかなと考えていると
「まずね、私はいま17歳なの...悠君と同い年だよ...」
「は?」
悠は混乱した。
「それじゃあなんだ。今年第一なんちゃら大学付属高校に入るというのは嘘なのか?」
「あ、いや!それは本当の事です...」
「ん?」
悠は理解が追い付かなかった。
「それはつまり...」
「浪人ですね」
悠の言葉が詰まったためそれを察した世奈がその言葉を発した。
悠は世奈本人にその言葉を言わせてしまったことに少し後悔した。






