#6 無意味と休息
正直疲れで死んでしまいそうだったが死んでも気になることが山積みだった。
とりあえず悠は部屋の奥においてあったパソコンを引っ張り出した。
けっこう古いモデルのように見えたが保存状態が良く大切に使われていたことが想像できた。
しかし一つ問題があった。
「パソコンを見つけたはいいもののパスワードがわかんないなぁ」
パソコン自体は何事もなく起動したもののパスワードのヒントとなるものが見つからなかった。
「部屋をくまなく探したら何か出てくるかもしれないな...」
悠は他にすることもないため時間を気にせずにいろんなところをあさり始めた。
棚や机の中、冷蔵庫の裏、照明の中まで探したが手掛かりとなりそうなものは一つも出てこなかった。
「やっぱり出てくるわけないよなぁ」
そんなことをつぶやいているとぐぅ~という音が腹から聞こえてきた。
「一旦休憩するか。飯を食うぞ~」
そういいながら悠は台所へと向かった。
部屋を物色している中で見つけたカップ麺にお湯を注ぎ3分間天井を見上げながら椅子に座った。
(ピピピ...)
タイマーの音が天井に吸い込まれそうになっていた悠を呼び覚ました。
「3分もあっという間だな」
悠は箸を取り出し、カップ麺のふたを開けた。
たちまち辺りは湯気に包まれた。
「いただきます。」
それ以降の記憶はなかった。それだけ腹が減っていたのだろう。記憶が朦朧となるほどの勢いでかぶりついていたのだ。
昼はフードコートに行ったが金がなく世奈に奢ってもらうこととなり、遠慮してあまり食べなかったからだろう。
彼の腹は満たされた。
食事も済み悠は立ち尽くしていた。
「ご飯は食べたがパスワードの手がかりもないしなぁ。どうしようかなぁ。」
時計はすでに10時を過ぎていた。
悠も今日のことや家中の物色で疲れ切っており眠気が限界を迎えていた。
「さすがに今日はもう寝るか」
そう言って布団へ向い、いざ寝ようとすると布団の端に違和感を感じた。
なんだと思い布団をめくると小さな財布があった。
それこそ小学生が使うような財布でこの部屋の雰囲気とはあまりにもアンマッチすぎた。
「そういえば今朝はいろいろとてんぱってこういうのに気づけていなかったんだな。」
その財布のおかげで悠の眠気は吹き飛んでいった。
財布というのはお金だけではなく身分証明書やクレジットカードなどの個人情報を入れるものでもある。
つまりもしかしたら自分の正体の手がかりが入っているかもしれないのだ。
悠はゆっくりと財布を開けた。
中には10000円札が一枚入っているだけだった。
「...」
悠は熟睡した。