#1 全てを跳ね除けて
雨が降っている感覚がした。
前が見えない。僕は今どうなっているんだ?
.......
あ〜、そうか思い出した。交通事故にあったんだ。
なんで事故にあったんだっけ?
思い出せない。ものすごく後悔したような…
そんな気がする。
周りの人たちが騒めいている音が聴こ える。遠くから救 急車 がや ってくる音が聞こ える
AE Dだ とか救急車だのと 叫ん でい る人 も...
いや、...無理だよ 意識 が、、ぁ...ぁ... 遠くなって...ゆ く...
僕はゆっくりと体の感覚がなくなっていくの感じ、次第には完全に意識を失った。
とある部屋の一室に光が差し込んだ。時計の針はすでに9時を指している。
「は!…え、」
「どこだ、ここ?」
周りを見渡すと散らかったアパートの一室にいた。
「生きてる…確か僕はあの時に…死んだはず…」
「... あれ、なんで死んだんだっけ…」
しばらくの間沈黙が続いた。飲みかけのコーヒー、今にもあふれ出しそうなゴミの山、強盗が入ったのかと勘違いしそうなほどに散らかった部屋。
僕自身の記憶も曖昧だ。どこに住んでいたのか、どんな人と交流をしていたのか、なぜいつどのようにして死んだのか。それらが全く思い出せないのだ。ただわかるのは
「名前と年齢そして死んだという事実のみ...」
僕は無意識のうちに口に出していた。
『永井悠17歳』
今の僕の情報はこれくらいしかなかった。17歳だから高校に通っていてもおかしくはないのだがそんなことは一切思い出せないのだ。
「見たところひとり暮らしか」
散らかった狭い部屋と食器の数からそのような結論を出した。
「ただそんなことが分かったところでだな...どちらかといえば同居人がいてくれたほうがよかったな」
そうすれば僕の正体もわかるはずだというのに...
そして僕はふとドアのほうを見た。
「ここがどこなのかくらいは知っておかないとな」
僕はパーカーに着替えてドアのほうへゆっくりと歩いて行った。そして玄関の脱ぎ捨てるように置かれたボロついた黒のローファーを履いて外へと出た。
「「うわっ!!!」」
ドアを開けるとそこには僕と同年代と思われる女性がいた。どうやら僕が急にドアを開けたことに驚いた様子だった。
僕もそれにつられて驚いてしまった。
「あ~、どうもすいません。急に出てきたものですから変な声が出ちゃいましたよ~」
その女性は笑顔のまま淡々と告げていった。
「お、見た感じ歳は近そうですね!初めまして、『第一弥生大学附属高等学校1年!!!』に入学予定の、今日お隣に引っ越してきた内田世奈といいます!」
(どこだその学校...)
と喪失中の記憶で目一杯考えたが思い出せずに諦めた。
「ど、どうも永井悠って言います。これからお隣さんとしてよろしくね...」