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短編小説どもの眠り場

トイレ生活

作者: 那須茄子

  三十路を迎えた私だが、未だかつての夢である専業主婦にはなれないでいる。というかもう諦めた。

 

 日々のストレスと戦っているせいで、将来のことまで考えていなかった。特に最近は、職場でのプレッシャーが増し、家に帰っても気が休まらない。そんな追われ方をしているのだから、相手を探す暇もない。

 唯一今の私が安らげる場所は、このトイレだけだ。





 トイレのドアを閉めると、外の騒がしさが遠のき、ひとときの静寂が訪れる。

 その狭い空間に身を委ねると、まるで自分だけの小さな世界に包まれるような気がして、ほっと安堵する。

 

 トイレ生活を始めたのは、偶然の出来事からだった。

 ある日、仕事から帰宅してすぐにトイレに駆け込んだ。冷たい便座に腰を下ろし、目を閉じると、不思議と心が落ち着いた。その瞬間、私はこの狭い空間が自分にとって特別な場所であることに気づいたのだ。それ以来、私は頻繁にトイレにこもるようになった。


 トイレにいるとき、私は思考の海に沈むことができる。外の喧騒から解放され、ただ自分の内面に向き合うことができるのだ。何も気にすることなく、ただここに座っているだけで、心が安らぐ。

 少しずつ心の整理がついていく。


 それにちょっとした工夫を施せば、トイレは案外住める。

 私はトイレの壁に、小さなポスターやお気に入りの写真を貼り、リラックスできる空間を作り上げている。更に香りの良いキャンドルを灯し、本や雑誌を持ち込んで読書を楽しむこともある。




 きっと誰にも分かってもらえない。トイレの中だけは時間の流れがゆっくりと感じられるから、色んなことを試したくなるという気持ちを。


 改めて思う。私はかなりの変人だ。



 


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― 新着の感想 ―
トイレが1番落ち着くと言う人は、それなりに居るらしい  (゜゜)
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