5. スーパー勤務・岩本玲生那の場合
岩本玲生那は24歳で、高校を卒業してからスーパーマーケットで正社員として働いている。そんな玲生那には悩みがあった。それは45歳のパート職員の佐藤さんのことだ。
佐藤さんは同僚に横柄な物言いをすること、本人や母親の体調不良で頻繁に早退や当日欠勤をする人なので周りからも不満の声が出ている。さらに社員から何か注意されると泣く(佐藤さんが海外のお客さんから質問を受けたが、英語がわからなくて突っ立ったままだった。それをある社員が「あの海外のお客さんはどうしたんですか?」と訊くと、「なんで私ばっかり責めるの!」と泣かれたことがあるそう)ので、周りは腫れ物に触るような対応しかできない。Googleの口コミにも佐藤さんのことだとわかる内容で苦情(「ふくよかな女性店員が質問しても無愛想で冷たかった」という内容)を書かれたこともある。そんな彼女だが、社会保険に加入しているので簡単には解雇できないそう。
佐藤さんがいる限り、他のパートさんが辞めていく連鎖は止まらない。彼女が原因で退職したパートさんの中には
「なんであんな上から物言われなきゃいけないの! あんな人がのさばってる限り、私はもう無理!」
と言って辞めた人もいた。そのパートさんはかなり仕事ができる優秀な人だったのだ。
あの人が変わらないのなら、私ももう辞めようかな。玲生那の脳裏に退職という2文字がよぎる。そのとき玲生那は、「悩める人のための食堂」と書かれた看板を見つけた。道案内に沿って入ってみると、女性店員が出迎えてくれる。個室に案内され、悩み事についてヒアリングを受けた。玲生那が職場での人間関係についての悩みを打ち明けると、女性店員は水とグラタンを提供してくれる。
グラタンを食べながら、玲生那は女性店員と今後の佐藤さんへの対応について相談した。女性店員に話を聞いてもらい、玲生那の心は軽くなる。退店後、玲生那はマネージャーにLINEで
「お忙しいところすみません。佐藤さんについて相談したいのですが……」
と連絡した。