1. 中学生・名倉紅葉の場合
中学2年生の名倉紅葉は、隣のクラスの田中佑に告白された。
「名倉さんが好きです。付き合ってほしい」
紅葉は佑が女友達の好きな人だとわかっていたし、興味はないので
「ごめんなさい。告白は嬉しいけど、田中くんの気持ちには応えられない」
と断ってしまう。
しかし佑に告白されたという事実が女友達本人の耳に入ったのか、翌日から態度が急変した。
「おはよー!」
紅葉がいつも通り挨拶するも、無視されて避けられてしまう。突然の急変に紅葉が戸惑っていると、他の女子生徒数人が紅葉についてコソコソと噂話をしている。
「名倉さんってさー、友達の好きな人ってわかっててちょっかい出したらしいよ」
「え、まじで? サイテー」
私はちょっかいなんて出していないし、告白も断ったのに。紅葉は悔しさを滲ませる。紅葉が友達の好きな男を奪ったという噂は瞬く間に広まり、次第に周りから友達が離れていった。話し相手もいなくなり、紅葉は孤立していく。
もう学校には行きたくない。でもこんなことで負けるのは悔しい。紅葉はそう思いながら帰宅していると、「悩める人のための食堂」と書かれた飲食店を見つけた。
「テキトーに何か食べるか」
そうつぶやいて紅葉は店に入る。そこの女性店員から個室に案内され、何か悩みはあるかと聞かれた。
「友達の好きな男の子に告白されて、興味ないから断ったんですけど、それ以来避けられるようになってしまって……。嘘の噂も流されて友達が離れていきました」
紅葉がここ最近の出来事を話すと、女性店員はひと通り話を聞いてくれる。その後女性店員は退出し、ある料理を紅葉に提供した。
紅葉に提供されたのは、野菜たっぷりのポトフだ。じゃがいも、玉ねぎ、ブロッコリー、にんじんに、ウィンナーも入っている。紅葉はポトフを飲んで、心が温かくなった。