第二章〜推理してみよ
宜しく御願い申し上げます。
大林 健三巡査部長は、美桜の洞察力を試すかのように上目遣いに見つめてきた。
美桜は新人警官の使命として、彼の期待に応えて何らかの回答をしなければならない、と焦り出した。
━━この財布、財布の中身になにか変わったものでもあるのだろうか?
美桜には、特段変わったことがあるとは思えないのだが・・・。
「はて。何でしょう?」
美桜は心底わからなくて困っていた。しかし、健三はヒントを出してくれる訳でもないし、やはりただ嗤っているだけであった。
美桜は、独力で彼から出された問題に答えなければならなそうであった。
彼女はもう一度、机の上に拡げられた中身を凝視してみた。
━━書店のレシート。
こんなものにヒントが隠されているとも思えないが・・・。
しかし、この財布の落とし主が何を買ったのか、興味が無い訳でもなかった。
レシートをつまみ上げて、印字された文字を確認してみる━━。
『文庫 ¥400』
とある。書店なだけに、¥400の文庫サイズの本を購入したということか。
今どき文庫本であっても、¥400という価格は安い気もするが、そんな値段で売れるような薄手の本だってないわけではあるまい。
━━これはおそらく、何のヒントにもならないのだ。
そう直感したのだった。
有り難う御座いました!