プロローグ
書いてみました。宜しく御読みになって下さいませ。
『先程、佐伯と名乗る女性が紛失届を出された御自身の所有物である財布がこちらの財布だと思われます』
女性警察官用の活動服に身を包み、活動帽子を被った女性が、右手で敬礼をしながら上官に報告していた。
東京都内、警視庁管内の某私鉄線の駅前に設置されたとある交番の中である。
警察官の勤務時の服装は、【警察官の服制に関する規則】という公安委員会によって定められた規則によって厳格に決められている。
女性警察官は、桜林美桜といった。
女性警察官として恥ずかしくない程度にはびしっと決めた皺ひとつない制服も初々(ういうい)しい。この四月に任官したてのほやほやの新任婦人警官である。
まだ警察学校を卒業したばかりで、配属されたこの交番勤務にも慣れたとは言えなかった。
上官とは、地域課の巡査部長で、大林健三という。
健三の歳の頃は、四十だ。二十五の美桜とは親娘程離れているようにも見える。
それでも逆に健三よりも背の高い美桜巡査が、身元確認の為、財布の中身を机の上に広げる。
健三は、自分で確認してみろと言わんばかりに胸を張っていた。
交番の中ほどに置かれた事務所机の天板に美桜によって並べられたのは、現金は¥1000 紙幣一枚に、五百円硬貨一枚、百円硬貨一枚、そして無造作に圧し込まれたレシーㇳに、付近に店舗を構える都市銀行のATMから出金した時に受け取ったとみられる出金記録の印字された手のひら大の明細書であった。
レシートは近所でも名の知れた書店のものらしかった。
それらの品を見て、大林 健三が意味ありげに眉を吊り上げているのだった。
有り難う御座いました。