旅路
貯金を残して死ぬのはもったいないように感じたので、最後に旅をしようと思った。場所は瀬戸内海に浮かぶ小さな島にした。そこは、前にプレイしたゲームの舞台であり、ゲーム内で演出される島の雰囲気が妙に気に入ったので、旅行先として決定した。
着替えなどを詰めたリュック背負って、玄関で靴を履く。ドアノブに手を掛け、いざ旅路へと一歩を踏み出そうとしたが、不意に気になって後ろを振り返る。家との別れ、そう考えると少し寂しいような気がした。部屋一面をぼんやりと眺めたが、すぐに未練は断ち切られたため、座卓とその上に置かれた一枚の紙を最後に視界に収めて、家を去ったのだった。
岡山駅に着いた瞬間、雨が降り始めた。短時間にも関わらず、かなりの降水量だったため、在来線の全てが運転取り止めとなってしまった。そのため、フェリー乗り場がある駅までは、バスで向かうことになった。
トンネルに入ったバスに揺られながら、自分の死後についてぼんやりと考えていた。これでも家族との仲は良かったので、私の死を知って悲しむというのは想像に難くない。親族は皆、私に対し愛情を惜しみなく注いでくれた。だが、それらを返す気になるかというと、その気は全くない。普通の人間ならば受けた恩や愛情を返すため、働き蟻のようにせっせと努力するであろうが。結局、こういうところなのだ、自分が人間として生きていくのに足りないところは。社会の怠け者のくせに、いざという時も何もしない。そんな不甲斐ない存在が私という人間だ。
あれこれ考えているうちに、バスがトンネルを抜けた。窓一面に綺麗な青色が広がった。日光を受けてきらきらと輝く水面に、私は思わず目を細めたのだった。
気に食わないので後で書き直す可能性あり。