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勇者として異世界召喚されたんだが、巻き込まれて一緒に召喚された人が実はヤバかった件  作者: 鷹沢綾乃
Act.4 今更ファンタジー!?

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08.そういうのもあるんだね……

 翌朝、いろいろ見ちゃった割には、疲れがあったせいか、ぐっすり眠れた。

 途中からは、臭いもそこまで気にならなくなっていたせいもあるんだけど。要は、“鼻が馬鹿になった”ってやつ。

 あとは、ゾンビが崩れても現実感がなくて、ゲーム画面見てるみたいだったせいかなぁ……

 視界が、ヘッドランプの明かりの範囲内だったことに感謝だね。


 「早見さん、おはよう」

 「おはよう。よく眠れたかな」

 「うん。意外なほど、ばっちり」

 「それはよかった」


 早見さんのほうはというと、もう昨日迷宮(ダンジョン)で力を振るったとは思えないくらい、さっぱりとした顔してた。

 相変わらず、クリスが背中に張り付いてるけど、あれだけやった後でも、クリスに“力”を分け与えられるぐらいだってことだよね。

 まあ、あの人の中身、人間じゃないからなあ……

 それでも、実際の実力なんか、全然出してないとは思うけど。


 「ところで早見さん、昨日のゾンビだけど……」


 ちょっとだけ気になったんで、聞いてみた。

 あの〇イオハザード系ゾンビ、なんで感染(うつ)るんだろうって。

 あのゲームだと、ウイルス感染とかで、人間がああなるわけで。


 「この世界のゾンビって、やっぱりそういう感染系なの?」

 「まあ、そうだね。ただ、致死性の病気で死亡した後、動き出すのはウイルスのせいじゃないよ。あれは、本来ならすぐに体から離れてしまうはずの霊魂の一部が体に残って、本能のままに動き出すんだ。生きた生物の精気を、その血肉ごと喰らうことによって、身体が腐っていくのを遅らせ、そうすることによって体が腐りゆく苦痛からわずかでも逃れることが出来る。だから、生物を襲うんだ」


 なぜ、霊魂の一部が残ってしまうのかについては、おそらくこの世界の魔法の(もと)である魔素(マナ)が影響しているらしいんだって。


 「僕たちの世界には、いわゆる魔素(マナ)がないか、あってもごくわずかしかない。だから、向こう(元の世界)ではゾンビは存在しないわけさ」


 ただ、この世界のウイルスは、ゾンビとして動いている限り、感染力を保ったままでいるらしい。

 だから、感染を防ぐためには、一番確実なのは燃やし尽くすことになるわけで。


 「僕がやったのは、肉体に残っていた霊魂を浄化し、朽ちた体から引き剝がしただけだ。それで、一気に腐敗が進んで肉体は崩れ落ち、ウイルスも感染力を失う。そのあとは、迷宮(ダンジョン)が残った肉体を吸収して、後始末をつけてくれたわけだ。それだけだよ」


 早見さんに言わせると、『あれ(ゾンビ)は雑魚中の雑魚』だそうだ。あの程度、消耗なんかしないと言い切られた。


 「ところで、早見さんは迷宮(ダンジョン)部分に踏み込んだんでしょ? どんな様子だったの?」

 「ああ。短い時間だったけど、能力全開で感知してみたんだ。明らかにおかしいと思ったからね。どうやら、迷宮(ダンジョン)の空間の奥に、さらに別な洞窟があったらしい。いわゆる氷穴というやつだ」


 氷穴っていうのは、ほぼ1年中内部の氷が解けない洞窟で、ゾンビはそっちに迷い込んで、氷漬けになってたらしい。

 ところが、こっちの坑道と迷宮(ダンジョン)が繋がったのとほぼ同時に、そっちの氷穴ともつながっちゃったらしい。しかも、ゾンビが凍り付けになってた場所のすぐ近くに。

 そのせいで、ゾンビが再び動き出して迷宮(ダンジョン)に入り込み、迷宮(ダンジョン)の中の魔物をガブガブやったもんだから、急速にゾンビが増えていったらしいんだ。


 「でも、動く骸骨(スケルトン)もいたって話でしょ? 俺たち、見なかったよね?」

 「動く骸骨(スケルトン)は、積極的に生物を襲う本能がないみたいなんだ。目の前に立ちふさがるようなら、本能的に敵とみなして襲い掛かってくるようなんだけど」


 それで、どんどん数が増えるゾンビに、数で圧倒されて坑道のほうに出てこれなくなったらしい。


 「直接“視た”わけじゃないから何とも言えないけど、動く骸骨(スケルトン)は白骨化した死体に、低級の雑霊が取り憑いた存在なんじゃないかと思う。骨格がほぼそろってないとうまく動かないから、ゾンビよりはかえって珍しいと思う。ただ、死霊術(ネクロマンシー)なんかで操られてるケースがまれにあるから、気をつけないといけないけどね」

 「えっ!? 死霊術(ネクロマンシー)!?」


 うわっ! そういう魔法、実在するんだ!!


 「僕も、まだ王城にいたころに書物で知っただけなんだけど、実在するそうだよ。どちらかと言えば、“神聖魔法”のほうに分類される魔法みたいだ」

 「はいっ!? 神聖魔法のほう??」


 この世界、普通の魔法は精霊が関わる“精霊魔法”なわけで。もうひとつが神の力を直接引き出して使う“神聖魔法”。こっちは、身体に負担がかかるんで、回数制限がある。

 で、死霊術(ネクロマンシー)は神聖魔法のほうっていうんだ。

 どういうこと?


 「死霊術(ネクロマンシー)は、死者と生者をつなぐ魔法といってもいい。なんか、ゾンビとか動く骸骨(スケルトン)を造り出したり、操ったり、なんてイメージがあるがあるかもしれないけど、それは死霊術(ネクロマンシー)のごく一部だ。実態は、霊媒師のような存在だと思ったほうがいい」


 すでに死んだ人の霊魂を呼び寄せて話を聞いたり、さまよっている霊を鎮めたり、死者が不死者(アンデッド)にならないようにお祓いをしたり、なんていうことをやってる人がほとんどなんだそうだ。

確かに、こうしてみるとそっち系だね。


 「生者と死者は、厳然とわかたれている。それの橋渡しを行うんだから、それをするにはやはり、神の力を媒介にしなければ、とても無理だ。だからこその、神聖魔法なんだよ」


 そういえば、この世界でも“死者を蘇らせるのは不可能”だって、早見さん言ってたな。

 だからこそ、死霊術(ネクロマンシー)には神聖魔法(神の力)が必要なわけね。


 「ゲームや物語なんかだと、よく無数の不死者(アンデッド)を従えている死霊術師(ネクロマンサー)が出てきたりするけど、あれはこの世界ではありえない。何せ、ベースが神聖魔法なんだ。回数制限がかかるうえに、範囲(エリア)魔法として使用することが出来ない。1体ごとにかけなくてはいけない。100体のゾンビを従えるとするなら、下手をすると2ヶ月くらいかかるかもしれない」


 だな。

 火村はまだ回数が多いほうだけど、それでも4回が限度で、5回使ったらぶっ倒れて命に関わるかも、とか言ってたし。

 そんな悠長なことやってたら、そのうちだれかに見つかるんじゃなかろうか。

 そう考えると、不死者(アンデッド)軍団作るのって、無理じゃね?


 「だから、操られている不死者(アンデッド)がいたとしても、その数は片手で数えられる程度だと思う。もちろん、術者の命令には従うから、厄介と言えば厄介だけど、死霊術(ネクロマンシー)で操られているゾンビは、感染(うつ)らないから」


 あ~そうか。バイオハ〇ード系じゃないのね。

 なら普通に叩っ切ることが可能なわけか。そういうことなら、そこまで怖くはないな。


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