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勇者として異世界召喚されたんだが、巻き込まれて一緒に召喚された人が実はヤバかった件  作者: 鷹沢綾乃
Act.3 深まる謎

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32.何とか着地

 「……答えてはくれんかね。“誤魔化す”とは、()()()()()()()()()のかね?」


 早見さんが、俺たちのほうを向いた。


 「……下手に言い訳しても、納得してもらえないだろう。全部ぶっちゃけるよ。いいね」


 そしてまたラウロさんに向き直ると、いきなり目元にくっついていたクリスの糸で出来た仮面をむしり取った。

 誰もが、息を飲む。


 早見さんの顔は、先ほどまでのくすんだ青いたれ目の、妙に愛嬌のある感じから、左目を黒い布で覆い、切れ長の黒い目を持つちょっと中性的な超絶美形の素顔に戻っていた。


 「……そ、それがあんたの本当の顔か……?」


 さすがにラウロさんも、驚きに目を剥いている。

 後ろに立っているお兄さんも、あっけにとられたような顔になっている。


 「これが、私の素顔です。髪の色も、実は黒です。染め粉で染めています。我々5人は、異世界人です」

 「異世界人だと!?」

 「はい。異世界より、この世界に召喚された者。背後の4人が勇者で、私は実は、巻き込まれてやってきた存在なのですが」


 早見さん、ほんとにぶっちゃけた! 自分が巻き込まれだってことまで、ぶっちゃけてるし!


 「君たちも、もう誤魔化す必要はない。素顔をさらしていいんだよ」


 早見さんの言葉に、とんでもない展開になって唖然としていた3人も、我に返って<幻術(ファンタズム)>を解除する。

 解除は簡単。魔法がかかっているところを、自分でべたべた触るだけ。そうすると、自動的に効果が消えるんだ。

 だから、うっかり触らないように注意しないといけなかったんだけど。今回は、わざとだからね。


 そしてラウロさんは、俺たち全員が見たことのない黒目だってことに気が付き、真顔になった。

 この世界にはいない、黒い目。

 だから、異世界人だということも、信じられるようになったみたいだ。


 「……まさか、異世界人だったとは……。ということは、リーフ王国は異世界からの勇者召喚に成功したということか……」


 つぶやくようにそう言うと、ラウロさんは改めて早見さんに向き直った。


 「それにしても、巻き込まれだったというあんたが、なぜ勇者と一緒に旅をしていて、おまけに勇者たちのリーダーなんだ? あんたどう見ても、戦えるとは思えんのだが」

 「それは、勇者たちの年齢が関係しています。勇者たちは全員16、7。この世界では成人に達している年齢ですが、元の世界では実はまだ成人年齢ではないんです。だから、社会を渡っていく覚悟が、まだ出来ていないまま、こちらに来てしまった。まさか、敵の占領地で人族の住む集落が結界で閉ざされているとは思わなかったので、結局交渉事などほとんどしなかったんですが、本当なら様々な交渉事があったはずなんです。でも、彼らにそれを任せるのはどうしても心もとなかった。なので、私がついてきたのです。いろいろあって、実質リーダーに祭り上げられましたが」


 早見さんの言葉に、ラウロさんは納得したようだった。


 「そういうことなら、確かにわかる。あんたは本当に、交渉事で世を渡っていくことが出来るんだろうな……」


 そうですよ。文字通り“本職”ですもん。


 「わかった。そういうことなら、あんたたちのことを信用しよう。しばらく滞在して、旅の疲れを癒してほしい。そして、なんとしても魔族を打ち倒し、占領された人族の国を開放してほしい」


 ラウロさんは真剣にそう言い、食事を続けるように促してきた。

 あとは、ただの食事会って雰囲気になったけど、早見さんはともかく俺たちのほうはなんだかまだぎこちないままだったわな。


 こうして俺たちは、この町『シレア』に滞在することになった。



「風間 翔太」

異世界の勇者(6Lv)

――――――――

STR(筋力)  193

DEX(敏捷)  215

INT(知力)  98

VIT(体力)   186

MAG(魔力) 178

PER(知覚)   203

――――――――

HP      240

MP      245

――――――――

<風の精霊神の加護>

<神聖魔法>

<武器:長剣6Lv>

<風魔法:風の刃(ウインド・カッター)5LV>

<武器:短剣5Lv>

<風魔法:つむじ風(フローウインド)4Lv>

<風魔法:消音(ミュート)2Lv>

<風魔法派生:電撃(ライトニング)1Lv>

<水魔法:回復4Lv>

<火魔法:加熱4Lv>

<無属性:身体強化4Lv>

<無属性:清浄(クリーン)1Lv>



   *  *  *  *  *


 エルザがその報告を聞いたのは、勇者たちが出立してからかなりの時間が経ってからだった。


 「そうですか。密偵たちは、勇者たちの追跡を諦めた、と。それでも、今まで伝わってこなかった情報が、多少なりとも手に入ったのですから、よしとしましょう」


 報告をよこした密偵たちの長にそう答えると、長は短く『ハッ』と応じ、素早く身をひるがえして姿を消した。

 すぐ外に護衛騎士、少し奥に侍女たちが控えてはいるものの、執務室にはエルザひとりが残される。


 勇者たちが踏み込んだおかげで、占領地の様子が少しはわかった。

 まさか、集落に結界が張られ、うかつに入り込んだ余所者は、そのまま出られなくなってしまっていたとは。

 それでは、いくら密偵を送っても、誰も帰ってこないわけである。


 普通、情報収集を行うのには、まずうわさ話などを集めるところから始まるものだ。

 だが、そうするつもりで町や村に入ったら、そこから出られなくなるとは、なんという罠か。

 しかし、勇者たちは賢明だった。結界の存在に気付き、中に入らず、街道をも進まず、占領地の奥へと進んでいった。

 おかげで、ひそかに追いかけていた密偵たちは相当苦労したようだが、おかげで全員が生還した。


 おまけに、風魔法の新しい使い方も知ることが出来た。

 風に乗せて、遠くの話し声を聞くなど、今まで誰もやったことなどなかったのだ。

 勇者をまねて使ってみて、勇者たちの会話を遠くから聞くことが出来た。

 そして、いくつかの重要な情報が手に入ったのだ。


 だが、わからないのは、年に一度、若い娘を連れ去ることだ。

 勇者たちも、まだその理由がわからず、魔族の国に潜入するつもりらしい。

 さすがに、戦闘能力が勇者にはかなわない密偵たちに、これ以上の無理はさせられない。


 勇者たちには、我が国に近い場所にあった魔族の補給基地に打撃を与えてくれたことを感謝したい。

 これで、前線を立て直す時間が充分に取れる。


 今、魔族から奪った陣地を参考に、ドープ砦はもちろん、ラミラ砦も防御を固めているそうだ。

 ただ今改造中だと、かなり意気軒高な連絡文が、連絡兵によってもたらされてきた。

 きっと、そう簡単には落ちない砦になるだろう。知恵を授けてくれた異世界人の文官の青年には、感謝してもし足りない。

 あの青年を、勇者たちに付き添わせたのは、正解だった。

 何とか、魔族の侵攻を止めてくれたなら、本当にありがたいものだ。

 エルザは再度、勇者たちの無事を神に祈った。


 これで、Act.3も一区切りとなります。

 次からは新章となり、新しいストーリーが展開していきます。

 今まで通りの週一更新ですが、出来る限り滞らないように、頑張って書きますので、よろしくお願いします。


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