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勇者として異世界召喚されたんだが、巻き込まれて一緒に召喚された人が実はヤバかった件  作者: 鷹沢綾乃
Act.3 深まる謎

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24.山は登るもの!?

 俺たちはいつの間にか、ひとつの国を通り越し、次の国へ入り込んでいたらしい。

 そういや、季節も進んできた感じで、日中は暑く感じるようになってきた。

 もっとも、湿度は低いんで、日陰にいると割と平気。


 次の国に入ってきたと思ったのは、なんだか、地形が違うというか。

 今までは、割と平坦で、ところどころに丘があったりするような感じだったんだけど、はっきり“山だ”とわかるような地形が、遠くに見えだしたんだ。明らかに、山脈が連なっている感じ。それが、遠目にはギザギザした壁みたいに、ずっと連なって見える。


 「今まで、山らしい山見たことなかったけど、山が見えてきたなあ……」


 火村が、のんびりとした口調で前方の山を見る。


 「やっぱり、山あったんだね」

 「そりゃそうでしょうよ。たまたま今までの国が、平地の国だっただけなんだわ」


 土屋さんと水谷さんが、やはりのんきな口調で会話している。

 一応街道は、あの山脈を回り込むような形で延びているらしい。


 ……早見さんが、本体だけで先行偵察してきた結果なんだよな、その情報。

 あの山脈を向こう側に回り込んだところに、どうやら有角族(ホーンド)と人族が争うことになったきっかけというか、原因になる出来事が起こった国があるらしい。

 早見さんは王城にいるとき、いろいろな文献を紐解いて、おおざっぱな地理とか、かつて存在していた国々のことを一通り調べたらしい。

 その結果、詳しくは書かれていなかったが、なんかきっかけになることがあって、その場所となった国があったらしいんだわ。


 俺たちは今、その国に向かって進んでいる。

 ……山脈迂回してたら、相当時間かかるらしいけど。っていうか、迂回先に別な国があって、その国を超えた先らしいんだ、目的地って。

 山脈が、国境になってる感じ。


 「出来るなら、山脈を突っ切って向こう側に行けるなら、それに越したことはないんだけどね」


 早見さんが、俺だけに向けてそうつぶやく。

 なんせ、早見さんあのスピードで偵察に行ってるから、相当遠くまで様子を見に行ってるみたいなんだ。

 だから、直線的に進んで、時間を節約したいらしい。

 早見さん的には『元の世界に帰還するとき、時空をつなげて直後に帰すことは可能だけど、こちらで過ごした時間はそうそうチャラには出来ないからねえ』ということだそうだ。つまり、こちらで1年過ごしたら、その分年取った状態で元の世界に帰るってことになるわけ。


 「でも、迂回出来るんなら、そこまで急ぐ必要ないんじゃない?」


 俺がそう言ったら、早見さんはこんなたとえ話をしてくれた。


 「それじゃ聞くけど、東京から新潟まで、徒歩で山脈を迂回していったら、どのくらいかかると思う?」

 「はい??」

 「北に行くなら、福島の猪苗代湖のあたりが山脈が大雑把に途切れているかな。でも、あの辺りは高原になってるか……。西へ行くなら、関ケ原辺りまで行かないといけないだろうね。何せ日本は、国土の約7割が山林という国なんだから」


 ……どっちにしても、すごい大回り。

 それを徒歩で行けとなると……うわぁ、何日かかるんだ?

 とてもじゃないが、3~4日じゃたどり着かないぞ。


 「参考までにいうけど、参勤交代で仙台藩の殿様が江戸に着くまで6日間。それも、1日平均50キロ以上歩いての日程だそうだ」


 うへぇ、そんなペースで歩いて、仙台から江戸まで6日間もかかるのか。

 俺たち、1日でそこまで歩いてない気がする。だって、明るくなってから野営の跡を消して歩きだし、暗くなる前に野営の準備を始めるんだもんな。

 せいぜい20キロくらいだろうか。

 それじゃ、迂回してたら2週間以上かかりそう。下手すりゃ、月単位での迂回になるかも。


 あ~ちなみにこの世界、1年12ヶ月で400日だ。8ヶ月はひと月33日、4か月はひと月34日。1週間は元の世界と同じ7日間。

 そういや、俺たちがこの世界にやってきて、2ヶ月あまりになるのかな。


 「あの山脈も、日本アルプスに負けず劣らずの規模の山脈だぞ。さすがに、高さは日本アルプスのほうが高いけど」

 「……つまり、迂回してたら相当の日数がかかるってこと?」

 「そういうことだね」


 俺が思わず遠い目になったら、早見さんがさらに爆弾を投下してくれた。


 「……それと、これは上空からざっと見ただけで未確認ではあるんだが、あの山脈の中の高原地帯に、有角族(ホーンド)に支配されていない小さな町があるようなんだ」

 「えっ!?」


 有角族(ホーンド)に支配されていない町だってぇ!?

 なにそれーっ!!

 ……ここで大声を出さなかった俺、自分で偉いと思った。

 俺が絶句していると、早見さんがさらに小声で付け加える。


 「地形の関係で、外部から攻め込むのがとても難しい要害の地でね、どうやらすぐそばの山脈の中にかなりの天然資源があるらしくって、その町の中だけで、ほぼ自給自足出来ているらしいんだ。その町には結界が張られていなくて、町の人々は自由に周辺の土地に作られた畑を耕し、狩りに行き、資源を持ち帰ったりなんだりしているみたいだった」


 へー。そんなところがあるんだね。


 「もしかしたら、元の世界のマチュピチュと同じような理由で、攻められずに済んだのかもしれないね」


 マチュピチュって、あの世界遺産のマチュピチュ……だよね?

 マチュピチュが攻められなかった理由って……?


 「ああ、マチュピチュって、山の中に造られた別名“空中都市”。侵略者であるスペイン人が、見つけられなかったって話があるんだ。マチュピチュにいた人たちも、避難したのか町を離れ、結果忘れ去られていたからこそ、造られた当時の姿のまま、残っていたらしいんだけど」


 ……すっげえ間抜けな理由なのね。

 でも、本当に有角族(ホーンド)に支配されていない町があるなら、確かに行ってみたいな。

 そこなら、町に滞在することも出来るんじゃないかって気がする。

 ただ……それってシークレット情報ではあるんだよね。早見さんが、先行偵察した結果の情報だもん。

 他の3人をどう誤魔化して、山脈の中に分け入っていくか、ってことなんだよな。

 結構むずいぞ。


 俺は、前方を歩く3人のほうを見る。

 すると、早見さんが声をかけた。


 「ねえ、ちょっと相談があるんだけど」


 それを聞き、3人が立ち止まる。


 「君たちは、あの山脈を迂回するのかな? それとも越えていくのかな?」


 早見さんに問いかけられ、互いに顔を見合わせている。

 そりゃそうだろうな。今の今まで、何にも考えずに進もうとしてたっぽいもん。


 「……あの山、越えるの?」


 微妙な表情で、土屋さんがこっちを見る。

 あれは、別にわざわざ山登りする必要ないよね、って顔だな。


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