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勇者として異世界召喚されたんだが、巻き込まれて一緒に召喚された人が実はヤバかった件  作者: 鷹沢綾乃
Act.3 深まる謎

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13.作戦決行!~早見さんの全面フォロー付き~

 「ほら、起きて!」


 水谷さんの声で、目が覚めた。

 慌てて体を起こすと、あたりはまだ暗かった。

 そうそう、夜明け前に行動を起こすって、段取りになってたっけ。

 どうやら俺が、最後まで寝てたらしい。……早見さんの術で熟睡してたせいだろうな。


 まだ暗いんだけど、うかつに明かりをともすわけにいかない。向こうから見えるはずだし。

 人なんかいないはずのところに明かりが見えたら、絶対変な噂になるからなあ。

 というわけで、ランタンに火をともし、ランタンのシャッターっていうのかな、それを絞ってほとんど足元しか照らさない状態にして、それぞれが手に持って射線の通る丘の頂上へと進む。


 ここで、早見さんがこの場に残ると言い出した。


 「なんだかうまく寝付けなくて、起きたんだけどまだ眠いんだ。ここで、待ってるよ。少し転寝(うたたね)でもすれば、落ち着くと思う」


 そんな早見さんのことを守ろうとするかのように、クリスが一番前の脚一対を上げて、構えて見せる。

 それを見て、ほかの3人はなんとなく微笑むというか、苦笑にも見える笑みを浮かべる。


 「わかったわ。出来る限り早く帰ってくるから、ちゃんと見張っててね」


 水谷さんがそう言うと、わかってるとばかりに上げた前脚をくいくいと振って見せるクリス。なんか、かわいい。

 そして出発した俺たちだったが、俺は気が付いていた。

 早見さん、マジで身体(依り代)から出て、矢の誘導するつもりなんだな。


 ほどなく、頂上に到着する。

 町のほうを見ると、まだほとんど明かりはついていない。そりゃそうだな。

 夜明けにはまだ少し間がある。

 早起きの人たちが、そろそろ起きだすかな、という時間だし。


 ここで、やはり腕力が一番ある火村が、弓に矢をつがえ、何となくシルエットの中に浮かぶ領主の屋敷らしい建物めがけて矢を放つ。

 俺は放たれた矢に、風魔法を纏わせてさらに遠くまで飛ぶように試みる。

 ……全然自信ないけど……


 早見さんの姿は見えないけど、そもそも見えづらい半透明の存在が、秒速2キロですっ飛んでいったら、ほとんどわかんないだろうなあ……

 って、思ってたら、俺たちの頭上に早見さんの姿が現れる。ほとんど瞬間移動(テレポーテーション)してきたみたいに見えるけど、実際は秒速2キロから瞬時に速度0まで落としただけなんだな。

 普通はそんなこと出来ないんだけど、実体のない存在は()()()()()()()()()()らしい。

 もちろん俺以外、早見さんが上空にいることに気付いてない。

 早見さんの姿はというと、例の本性を現した状態で、頭になんか黒くて長い帽子のようなものをかぶり、平安貴族かなんか着るような、灰色の上着を着て、下に白っぽい袴みたいなものをはいている。

 全体としては、本当に平安貴族か、現代だったら神社の神主さんか、雅楽を演奏している人たちみたいな感じ。

 早見さん、俺に向かって右手の親指を立てて見せる。

 あ~うまく行ったのね……

 直後、早見さんの姿はすっと消え去った。体に戻るんだろうな。


 「なあ、風間。うまくいったのか?」


 火村が、ちょっと不安そうに問いかけてくる。


 まあ、そうなるよな。暗いし、どうなったか全然わかんないもんな。

 俺は、早見さんの様子で、うまく行ったんだろうなってわかるけど。


 「……はっきりとはわからないけど、行ったんじゃないかって思うよ」


 俺、すっとぼけながらそう答えた。


 「ほんとか~?」


 疑わしそうに、火村がこっちを見る。


 「とにかく、朝になればわかるでしょ。ひとまず野営地に戻ろう? そんなに長い時間じゃないけど、早見さんがちょっと心配だし」


 土屋さんがそういうと、水谷さんもうなずく。


 「まさか、動物が早々寄ってくるとも思えないけど、魔獣が出没しないとも限らないし」

 「そだな。早見さんのとこ、戻ろう」


 そうは言ったものの、たとえ魔獣の群れに襲われたって、あの人はびくともしないと思うぞ。まして、本体が身体(依り代)を離れてたんだぞ。力を十二分にふるえる状態だったんだ。

 ちょっとした群れなら、それこそ瞬殺だ。


 でも、それがわかっているのは俺だけなわけで、みんな手早く荷物をまとめ、来た道を戻り始めた。

 やっぱり、気になるんだろうな。()()足手まといな人を、ひとり置いてきた形だから。

みんな、なんだか足取りが早い。

 足元の暗さもものともせず、たちまちのうちに野営地まで戻ってきた。


 で、いつものタープの下で、早見さんがマントにくるまって横になっていた。

 熾火に近い形の焚火の炎も消えていないし、獣や魔獣とかが近づいた気配もない。

 皆が野営地に戻ってきたところで、早見さんがむっくりと起き上がる。


 「……終わったのかな?」


 ちょっと寝ぼけたような声で、早見さんが問いかける。


 「ああ。なんとかなった……らしいぞ。オレはよくわからんけどな」


 いまいちすっきりしない顔で、火村が答える。

 そりゃまあ、あいつ自身はどうなったのか、自分の目で見て確認は出来てないから、ああいう言い方になるんだよな。


 「風間さんが、『行ったんじゃないか』って言ったからだけどね。でも、ほんとに大丈夫なの?」


 土屋さんが、ちょっと疑わし気に俺を見る。


 「俺だって、この目で見たわけじゃないけど、感覚的に、行ったんじゃないかな~って感じだったんだ。明るくなったら、様子見てみればいいんじゃね」


 ……俺だって、実ははっきりわからんもん。


 「早見さん、二度寝して、大丈夫?」


 水谷さんが、早見さんに逆に問いかける。


 「大丈夫だよ。ちょっとだけウトウトしたけど、ほんとには寝てないから」


 ホントかなぁ~という表情を、水谷さんも土屋さんもしていたけど、マジで大丈夫だと思う。だって、()()()()()()()()()()()()()()()もんね。


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