表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者として異世界召喚されたんだが、巻き込まれて一緒に召喚された人が実はヤバかった件  作者: 鷹沢綾乃
Act.3 深まる謎

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/98

11.領主が住む町

 翌朝俺たちは、領主の館があるっていう、もっと大きな町に向かって出発した。

 やっぱり、人目を避けるために森の中や藪伝いに進んでいくことになるんだけど、なんだかそのせいか、ずいぶん体感が鍛えられたような気がする。

 足元が、ちょっとばかり悪いというか、街道じゃないんだから平らなわけないからね。


 ほかの3人は、早見さんがよくついてこれるなって思ってる節があるけど、実際はこの人、ほぼ化け物だからな。

 どうも、わかんないように<念動(サイコキネシス)>使ってバランスとってるみたいだし。

 いつぞや、『空でも飛べるんじゃないの?』なんて冗談で言ったら、素直に肯定されて、聞いたこっちが焦った記憶がある。


 飛 べ る ん か ~ い っ !!


 心の中で、渾身の叫び&突っ込みをした俺だったが、ちょっとした百面相しただけで、言葉には出来なかった。


 遠目にチラチラ街道を確認しながら進んでいってたんだけど、やっぱり旅人の姿は見かけない。

 ホントに時たま、有角族(ホーンド)の商人らしい人たちが街道を進んでいるのを見かけるんだけど。

 商人だけに、ほとんどが荷馬車か箱馬車に乗ってる。“馬”は、馬車の大きさによって、1頭立てだったり2頭立てだったりしているけど、護衛っぽい連中が見えないんで、この辺は[有角族にとっては]治安の問題はないんだろうな。


 「この辺りはまだ、本来人族の国だった地域だ。もともとの有角族(ホーンド)の国まで入って初めて、治安の問題を考えたほうがいいのかもね」


 早見さんが言うには、行商人がそもそもいないので、野盗の類もまずいない。有角族(ホーンド)の商人は、なんだかんだで勇者とそう変わらない能力値の持ち主ばかり。

 だから、人間の野盗であってもよほどの数を揃えないと、あっさり返り討ちにされかねないということ。

 割に合わないので、誰も手を出さないんだそうだ。

 それより、街中で盗みを働いたほうが、よほど割に合うらしい。


 「でも、聞いた限りでは、街中の治安も別に悪くないらしいよ。盗賊団みたいな組織、ほとんどなくなっちゃってるらしいから」


 土屋さんが、聞き込みの結果で、さらに思い出したことをぽつぽつ話してくれる。

 さすがに時間が短かったため、突っ込んだ会話が出来なかったのが惜しいけど、結構な話を聞きこんでくれていた。

 やっぱり、『“魔族”と戦うために選ばれた勇者』だとのっけに打ち明けたのが、いろいろ話してくれた要因らしい。

 なんだかんだで、治安はよくなったものの、どこか監視されているような、窮屈な暮らしは、やっぱり息が詰まりそうになるそうで。


 もっと詳しい事情を聴くために、領主のいる町へと向かっているわけだけど、どのくらい離れているのか、聞くのを忘れたそうで、町の名前とどの方向かを聞いただけで、俺たちは進んでいる。

 とはいえ、早見さんの超感覚(レーダー・センス)のおかげで、街道からずれた位置を歩いていても、街道が一時見えなくなっていても、街道からは外れたりしない。

 ……誰も、そのことに気付かないけど。


 でもまあ、俺たちの歩く速さも、そこそこ速かったらしく、3日目の昼過ぎには、それらしい町が遠くに見えてきた。

 町の特徴として、丘の上に造られていて、町の周囲を外壁がぐるりとめぐっているのは同じだけど、丘の上のほうにいわゆる“お屋敷”という感じの大きめの建物が造られている。

 その建物の中で、ほぼ頂上に一番大きな建物があり、おそらくはあれがこのあたりの領主の館なんだろうな、という感じ。

 外壁より、丘のほうが高いので、丘の上の建物は、外からよく見える。

 もっとも、この世界に“大砲”なんてもんはないので、こういう構造でも問題はないらしい。


 どうも、巨大弩弓(バリスタ)とか巨大投石器(カタパルト)とかいう攻城兵器もないらしいので、本当に“大砲”的なものがない。

 それもこれも、早見さん曰く『【花戦争】しかしてこなかった世界』だからなんだろうな。

 大砲がもしあったら……領主の館なんて、格好の的だと思う。

 通常、魔法の最大射程が50メートル、弓矢の最大射程が150メートルってことを考えれば、充分安全な距離は取ってるんだけどね。


 「あの領主の館まで、どのくらいの距離かな?」


 土屋さんが、目を凝らす。


 「よくわかんねーなぁ」


 火村、おざなりに見るなよ。


 「一応、何となく人影っぽいものは見える気がするのよね」


 水谷さんが、様子を窺うように見つめてる。


 「ちょうど、町の土台となっている丘と同じくらいの高さの丘が、少し離れたところにある。あの丘に登って、町の様子を見てみよう」


 早見さんの言葉に、皆素直にうなずいて、そちらの丘に移動する。

 町がある丘と違って、こちらは草木が生えているので、その陰に隠れれば俺たちがいることは、町の住人からはほぼわからない。

 丘に登り、木々の間から様子を見れば、確かに街の様子がよくわかる。


 丘の上のほうには、貴族階級の家だと思われる大きな“お屋敷”が建ち、一番上にそびえているのが領主の館と思われる一番大きな建物。

 下に行くにつれ、だんだん家々が小さくなり、ごちゃっとした感じになっていく。

 どう見ても、庶民が住んでいるところだってわかる。


 この世界、多神教なんで、いわゆる教会とか神殿とか言われるものは、複数あるのが普通。大きい小さいはあるけど。

 大抵どの町にもあるのが、豊穣の女神の神殿。別名大地母神。確か名前はディーメルダ様だったと思う。


 俺たちに加護をくれている精霊神なんかは、魔法を使うこと自体がその神のお導きみたいなもんで、神への祈りが込められているため、特に祠とかないそうだけど。

 神様にお祈りしながら、その力を借りて使うのが魔法、って考え方らしい。

 魔法を使うことが、イコール祈ることなんだって。

 精霊神は、はっきりした人格がなく、力そのものを(つかさど)ってるらしいので、そういう形になってるそうだ。ほかの神様はいわゆる人格神で、ギリシャ神話みたいに、それぞれの神様が天界におわすらしい。

 そう言った人格神の神様の力をいったん自分の体に下ろし、使用するのが神聖魔法ってわけ。誰が力を貸してくれるかは、時と場合によるらしいけど。


 それはともかく、大きな町に来るとあるのが、商人が信仰する商業の神とか、職人が信仰する手業(てわざ)の神の神殿。

 ほかにもいくつかあるそうなんだけど、どんな神様の神殿があるかはその町によるらしい。


 それはともかく、領主の館までは、完全に射線が通ってるな。ここから撃てば、まっすぐ館に飛んでくだろう。届けば、の話だけど。

 この丘からだと、絶対にキロメートル単位で離れてると思う。

 いくらなんでも、ここからだと矢文は届かないよねえ。

 早見さんが超感覚(レーダー・センス)を使うにしても、さすがに追いつかないのでは……?

 あれ、本性を現してなければ、500メートルが最大値だもんな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ