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勇者として異世界召喚されたんだが、巻き込まれて一緒に召喚された人が実はヤバかった件  作者: 鷹沢綾乃
Act.3 深まる謎

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09.いやまあ……ねえ……

 その時だった。早見さんが、不意に耳打ちしてきた。


 「……いざとなったら、僕が<念動(サイコキネシス)>を使ってフォローしてもかまわないよ……」


 へ!? それって……

 でも、早見さんはすぐに離れてしまった。

 ほかの面子に怪しまれないようになんだろうけど、それってつまり……

 早見さんが使う<念動(サイコキネシス)>のカモフラージュとして、俺の風魔法を使うってことなんでは?


 ……まあ、俺がやみくもに風魔法使うより、そのほうが確実なのはわかる。でも、なんかモヤる。

 でも、誰かに話したところで、信じちゃもらえないだろうことは、わかってるし……

 でもまあ、200メートルとか300メートルとか離れたら、俺、ピンポイントで狙えやしないんだよな。遠視じゃないんだから。

 俺、視力はぎりぎり1.0だぞ。

 アフリカのサバンナに住んでいる現地の人なんかだと、遠くを見る能力が超人的な人がいるってのは、聞いたことあるけどさ……


 500メートル先の気配も感じられる超感覚(レーダー・センス)を持ってる早見さんなら、確かに狙えるかもしれんけど……

 ……だからか。『フォローしてもかまわない』って言ってたもんな、早見さん。


 「ねえ風間さん、今、早見さんに何言われたの~?」


 土屋さんが、何となく興味津々と感じられるような眼差しで、俺のほうを見てる。

 なんか、不思議がられてるのかな。ヤバい、誤魔化さなきゃ。


 「いや、なんか自信なさそうな顔してたから、君なら出来るから頑張れって言ったのさ。大声で言ったら、照れてまともに聞かないんじゃないかって思ったから耳打ちしただけだよ」


 俺が言う前に、早見さんがしれっと誤魔化した。


 「ふーん……」


 信じているのか、いないのか、土屋さんが口角がちょっと上がった、笑みにも見える微妙な表情のまま黙った。ただ……そこはかとなく嫌な予感がするのは、なぜなんだろうなぁ……

 ……まあ、いいや。深く考えちゃいけない気がする。

 スルーしとこ。


 あたりは暗くなってきているので、町の外壁につけられた門はすでに閉じられ、衛兵も中に引っ込んでるみたい。

 もう、様子がわからなくなってきてるからなあ。

 でもまあ、俺たちも今のところ、このまま野営することは確定。

 街中で何かがあれば、ちょっとはわかるだろ。よほど大きな騒ぎじゃないと、こっちまで伝わらないとは思うけど。

 その時、早見さんのところからクリスがとことこやってくると、俺の左腕にちょこっと軽く掴まった。


 (聞こえるかな。本当は、君に念話(テレパシー)の才能があれば、こういうことしなくてもいいんだけどね)

 (……早見さん、俺と念話(テレパシー)で会話するために、わざわざクリスを俺のところに来させたの?)

 (まあ、内緒話をするには、これが一番怪しまれないからね)

(そりゃそうだけど……)


 さっきの耳打ちを、土屋さんに突っ込まれたってことで、こういう形にしたそうだ。


 (どうも、土屋さんのあの表情を見てると、僕としてもなんだか妙に嫌な予感がするんでねえ……)

 (あ、早見さんも?)


 どうやら早見さんも、嫌な予感がするらしい。土屋さん、なんだか妙な雰囲気のとき、あるからなぁ。

 それがなんだかわからないんだけど。

 まあ、それはそれとして。


 (早見さん、ほんとに矢文、やるの? 俺、やるだけ頑張るけど、自信ないよ。それに、いきなり矢文なんか送り付けて、相手は信用するとは限らないじゃん)

 (それに関しては、夢に介入して暗示をかけておくから、矢文自体は受け入れてもらえるはずだよ)

 (はいっ!? 夢に介入?!)


 聞き捨てならないワードが入ってたぞ! 『夢に介入』って何!?


 (まだ王宮にいたころ、文官の人たちに睡眠学習で掛け算九九を覚えさせたって言ったよね。それと同じことさ。夢の内容は覚えていなくても、何となく矢文が来ることを予感し、その内容に警戒心を抱かなくなるように出来る。……もちろん、多用は厳禁な手法だけど。人の心を操るようなものだからね)

 (……確かに。でも、ほんとに出来るんだ、そんなこと)

 (まあね。半神(デミ・ゴッド)になる前から、人の夢に入り込んで、夢に干渉してくる(たち)の悪い(あやかし)と戦ったこともあるしね)

 (……)


 もう今更、何が出ても驚かないと思ってたけど、“半神(デミ・ゴッド)になる前から”となると、驚くというかなんというか。

 この人もともと、ほとんど人外だったんじゃね?


 (まあ、否定はしないよ。高校2年のときに交通事故に遭ってね、障碍が残る体になったのと引き換えに、人を超える力を得た、と思ってくれればいい)


 俺の心を読んだみたいに、早見さんが答えを返してくる。そういや、念話(テレパシー)で繋がってたな。

 でも、事故がきっかけでとはいえ、なんでそんなことに……?

 心の中で問いかけても、早見さんは静かに微笑んだまま、何も答えなかった。

 ……どうやら、話したくないことらしい。きっと、何かとんでもないことがあったんだろうな。

 出なきゃ、いくら何でも人外の力を得るなんて、ありえないもんな。


 「ねえ、2人してチラチラ視線を飛ばしあって、何やってんの?」


 例の“口元だけ笑みの形になった微妙な顔”で、土屋さんが声をかけてくる。

 別に意識してたわけじゃないが、どうやら特に俺のほうが、早見さんのほうをチラチラ見てたらしい。早見さんも多少は見たらしいけど。

 さすがに、念話(テレパシー)で会話してたとは思ってないらしいけど。当たり前か。


 「そんなに見てたかな。僕としては、別に意識していたわけじゃないんだけど」


 早見さん、またしれっと言い切った。慌てる様子もなく、ごく普通に。

 俺には出来ない……


 「まあ、いいけど。ところで、本当に矢文を打ち込むのなら、文面を考えてほしいんだけど、いいかしら」


 水谷さんが、今度は早見さんに声をかける。


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