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勇者として異世界召喚されたんだが、巻き込まれて一緒に召喚された人が実はヤバかった件  作者: 鷹沢綾乃
Act.3 深まる謎

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06.人と接しないと、情報って集まらないよね

 人里に近づかないようにさらに進むこと、数日。

 午前中のうちに、遠くに結構大きな町が見えてきた。

 周囲を高い石積みの壁に囲まれ、出入り口の(ゲート)には、2名ほどの衛兵の姿も見える。ぱっと見、有角族(ホーンド)ではなさそうだな、あの衛兵。


 もちろん、そこを訪れるつもりはないけど、その町の周囲をゆっくり回ってみたら、どうやら青空市が立っているっぽい場所があることがわかったんだ。

 やっぱり、あったんだな。

 でも、まだ光魔法を使えるのが水谷さんだけ。ただ、水谷さんは、少しずつ光魔法をものにしつつあった。

 さすが、お姫様(魔法の師匠)に『才能がある』と認められただけのことはある。


 町の近くや街道沿いなら、割と見晴らしはいいんだけど、そこからちょっとでも離れると、薮やらちょっとした森やらがあって、それ伝いに移動するとほとんど人目に付かずに移動出来る。

 それで、俺たちはこっちの住人に見つかることなく、今まで移動してこれたんだけど……


 「なんだかさすがに、人恋しいというか、なんというか……」


 ぼそっとつぶやく火村。

 ずっと同じ面子(メンツ)で過ごしてると、精神的にマンネリというか、新鮮味がなくなってくるんだわ。

 ある程度まとまった数ならともかく、たった5人だからな。

 普通、旅をするといっても、宿を取ったり、店に入ったりして、自分たち以外の人と接することはある程度あるはずなのに、今回それをあえて避けまくってるせいで、全然接触がないからなあ……


 「……なら、ちょっとだけ接触してみるかい?」


 いきなりそんなことを言い出した早見さんに、みんな目を剥いた。


 「ちょっと! うかつに接触しないほうがいいって言ったの、早見さんじゃない!」


 水谷さんが、イラっとしたような顔で言い返す。……気持ちはわかるけど。


 「いや、クリスに、目のところだけ光学迷彩をかけてもらうって方法が使えるかもしれない、と思ったからね。クリス自身がくっついているんじゃない限り、10分ちょっとしか持たないけど」


 へえ、そんなこと出来るんだ。

 他の3人は、半信半疑って感じ。まあ、クリスの能力を把握しきってないから、疑問なんだろうな。

 おそらくは、早見さんに力を分けてもらって初めて出来ることなんだろうって思うんだけど。


 実際に試してみたらどうなるかってことで、早見さんが身をもってやってみることになった。

 早見さんに撫でてもらった後、クリスは早見さんの頭の上に乗っかると、早見さんの目のあたりに糸をかけていく。ちょうど、仮面をつけてるみたいに見える。もっとも、いつもよりちょっと粗目にかけている感じだけど。

 眼帯ごと白い糸に覆われる形になると、ほどなく糸が肌と同じ色と質感となり、その中に目が現れる。それも、ちゃんと両目が。

 この世界の人によくある、灰色がかった青い目。結構リアルで、間近からじっくり見ないと、不自然さがわからない感じ。


 「「「「すごい!」」」」


 俺たち全員、思わず声が出た。


 「どうやら、出来は良さそうだね。言っとくけど、これでも結構ちゃんと見えるんだよ。ただ、さすがに細部を見るのは無理だけどね」


 なんでも、レースかなんかを通して見てるみたいな状態らしい。

 まあ、そうだろうねえ。


 「こうしてみると、ほんとにこの世界の人みたい。っていうか、このまま人前に出たら、女の人が黙ってない感じ」


 土屋さんの感想に、皆がうなずく。だって、この世界の人と同じ目の色になった上に、顔立ちが超絶美形のままなんだもん。

 そりゃ、隻腕のままだからそれは差し引かれるだろうけど、顔面偏差値の高さが、すべてを凌駕するっていうかなんというか……


 「……つくづく、自分は顔が不自由だと思うよ……」


 どこか諦めの混ざった、妙にフラットな早見さんの声。

 その言い方だと、向こう(元の世界)でも、その顔のせいで何かあったのかね?

 いや、絶対何かあったんだろうな。

 でなきゃ、何となく雰囲気がどんよりしないもん。


 ほどなくクリスが早見さんの頭から離れ、地面に降り立つと、早見さんの作られた両眼は、本当に10分ほどで白い糸の仮面に戻ってしまった。

 これ、マジで時間との勝負だわ。

 直後に、早見さんがその糸の仮面を自分の顔から剥がし取り、クリスに渡す。するとクリスは、その糸をきれいに食べてしまった。

 自分の魔力が残ってる糸だから、食べて魔力を回収するんだろうな。


 4人全員に白い糸の仮面を作っていると大変だから、仮面をつけて行動するのは2人までということになり、なら誰が試しに接触するか、という話になって、じゃんけんで勝負を決めることになった。

 そう、全員の世界に、同じやり方のじゃんけんがあったからだ。こういうところでも、並行世界(パラレル・ワールド)といってもかなり近い世界線なんだろうな、ってわかる。


 ちょっぴり危険が伴う任務ってことで、みんな少し腰が引き気味になってるけど、誰かがいかなきゃ情報収集も出来ないっていうんで、恨みっこなしのじゃんけんになったわけだ。


 「「「「最初はグー! じゃんけんポン!!」」」」


 結果、土屋さんと火村が行くことになった。残りは、いわゆるバックアップメンバーってやつだ。

 もちろん、顔が目立ちすぎる早見さんも、バックアップメンバーのほうに入ってる。

 いつものツーマンセルとは違う組み合わせだが、食事当番のときの組み合わせでもあるから、何とかなるか。

 その時だった。


 「……有角族(ホーンド)だ」


 早見さんの声に、皆がそちらを向く。

 早見さんは、素早く街道のほうを指さして見せた。

 街道を、3台の2頭立ての箱馬車が進んでいる。もちろん、引いているのはあの“馬”だ。

 先頭の馬車の御者台に座っているのは、ヤギ角の小太りの三十絡みと思われる紺色の髪の男。2台目にはヒツジ角の体格のいいオレンジ色の髪の中年のおばさん。最後尾は、ヤギとヒツジの中間のような角をはやしたレモンイエローの髪の中年のおっさん。

 あんな形の角、説明されてないな、と思ったら。


 「あれはね、身体能力も魔法の素質も平均的な人の特徴らしいよ。よほど強力な力を持っているんじゃない限り、器用貧乏に陥りがちな感じじゃないかな」


 早見さん、いろいろ知ってるなあ。さすが、俺たちが戦闘訓練している間、王城の文書庫で調べ物をしまくってただけのことはある。


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