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勇者として異世界召喚されたんだが、巻き込まれて一緒に召喚された人が実はヤバかった件  作者: 鷹沢綾乃
Act.3 深まる謎

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01.いきなりか!

 あえて町に近寄らず、野宿を繰り返しながら少しずつ、有角族(ホーンド)の占領地に入り込んで数日。

 野宿した場所を引き払い、痕跡を出来るだけ消してから、歩くことしばし。

 午前中のうちに、いよいよ人里に近づいて、様子を見ることになった俺たち勇者4人組+早見さん&クリス。

 あれから、誰かが何とか覚えなきゃ、とみんなで必死に頑張ったおかげか、なんと水谷さんが光魔法に目覚めた!

 

 いや、まさかと思ったんだけど、昨日突然、光の玉を出現させたことで、光魔法会得した! ってわかったんだ。

 もっとも、まだ幻覚系の魔法は使えない。まだ、光玉を出したり出来るだけ。

 水谷さんは、なんとしても使いこなすんだって、奮闘中ってところ。

 それと、魔法が使える面子全員、いろいろラノベや漫画、アニメ、コミックなんかで知識だけはあったんで、覚えたよ。

 無属性魔法<清浄(クリーン)>を!


 ……いくら、これから本格的に夏に向かう季節だとは言っても、汗を流すのに水浴びばっかりではちょっと……

 魔法で洗浄出来れば、それにこしたことないよねって、全員の意見が一致したから。

 ……どっかに温泉でも湧いてないかなあ。

 

 「こちらの世界にも、火山活動などはあるはずだから、そういう土地へ行けば、きっと見つかると思う。ただ、活用してるかどうかは別問題だろうけどね」

 

 グレーヘアがすっかり見慣れた早見さんが、多少苦笑気味に言う。

 

 「だよなー。温泉地って言っても、有名なとこばっかじゃないもんなぁ」

 

 のんきだな、火村。

 そりゃ、とんでもなくエクストリームな秘湯ってあるのは、聞いたことあるけどさ。

 

 「でも、秘湯みたいな、ろくに人なんか来ないところのほうが、私たちにとっては都合がいいわよ。洗えば、髪を染めた色が落ちるんだもの」

 

 水谷さんが、至極ごもっともなことを言う。隣の土屋さんもうなずいた。

 

 「わたしたちの世界のヘアカラーとは違うもん。ただ、髪の毛の上に色を乗せてるだけだからね。それより、この先に小さな村があるんだよね。立ち寄るの? それとも少し離れたところから、様子を見るの?」

 

 さっき、少し小高いところから様子を見て、この先に村があることは確認してた俺たち。

 その村に、実際に立ち寄るかどうかで、いったん歩みを止めていた。

 

 「……万が一を考えて、クリスに偵察に行ってもらったほうがいいと思う。これから近づこうとしている村が、そもそも()()()()()()、それもわからないからね」

 

 早見さんのセリフを聞き、そういやそうだったな、と気が付いた俺。ほかの人たちも、気が付いたという顔になった。

 そう、その村が人間の村なのか、そうじゃないのか、まだわかってないんだ。

 それなら、少なくともそれを確認する必要はある。

 

 クリスはまるで、すべてわかっていたとでもいうかのように、早見さんの体から離れる。

 早見さんは、そんなクリスに向かって(かが)みこむと、右手で丁寧にその毛並みを整えてやっていた。

 ほかの人には、そういう風にしか見えなかっただろうけど、俺はなんとなくわかった。

 早見さんはまた、自分の力をクリスに分け与えたんだ。

 そうして分け与えれば、クリスは動きながら光学迷彩が使える。

 

 やがてクリスは、本当に早見さんから離れ、糸を吐き出して自分の上側を覆うと、あたりの地面と同じ色になり、ややゆっくりと、それでも確実に、村のほうへと進み始めた。

 ……前より、ちょっと早く動けるようになってる気がするな。

 

 「クリス、大丈夫かしら……」

 

 水谷さんが、少し心配そうにクリスの進んでいった方向を見ている。

 

 「……大丈夫だと思うよ。いざとなれば、光学迷彩なんかやめて、全力で移動するっていう選択肢もあるんだから。あれで、全速力で動いたら、並の人間は到底追いつけない速さで走れるよ、クリスは」

 

 『これでも一応、魔物だからね』という早見さん。

 そりゃそうか。

 

 「ただ、十中八九人族の村だとは思うけど。あくまで遠めに見た限りだけど、村の中を歩いている人が、有角族(ホーンド)とは雰囲気が違ってると思ったから。角っぽいものは、見えなかったしね」

 「早見さん、目がいいんだな」

 

 火村が、ちょっと感心したようにつぶやく。……いや、気配を感じてただけだと思うよ。だってこの人、500メートル先の気配だって、読める人だから。

 それでも万が一を考え、偵察をするというのは、もしかしたら有角族(ホーンド)の見張りが村の中にいて、村人を監視してるかもしれないということを危惧したからだという。

 

 早見さんが、なんでそんなことを考えたのかというと、有角族(ホーンド)の占領地域の情報が、あまりにも入ってこないからなんだって。

 

 「いくら占領されたからと言って、普通はある程度、何が起こっているのか噂話ぐらいは流れてくるはずなんだ。それが、そういうものさえないらしい。それがおかしい」

 

 確かに。

 他の3人も、なるほどとばかりにうなずく。

 そうだよな。暮らしぶりとか、そういうのが伝わってきても、不思議じゃないはずだ。

 

 「言われてみれば、そうよね。占領された後、生活が苦しくなったとか、逆に楽になったとか、あってもおかしくないものね」

 「なんで伝わってこないんだろう? 行商人とか、そういう人も入ってないの?」

 

 水谷さんも土屋さんも、首をひねっている。特に土屋さんの指摘は、確かにその通りだと思う。

 

 「おそらく、人の行き来がほぼシャットアウトされているんだろう。この世界では、情報は人とともに動く。僕たちの世界と違って、インターネットは存在しない。不特定多数に向かって、情報発信なんて、出来る世界じゃない」

 

 だからこそ、自分たちから動いて情報を集めなければならない。それが早見さんの考え方だった。

 ただ、自分たちの容姿の特徴を完全に隠せていない今は、うかつに人前に出るわけにいかない。それで、クリスの偵察というわけだ。

 

 そうやって話をしていたら、クリスが戻ってきた。

 ……早くね?

 前に陣地を偵察に行ったときは、もうちょっと時間かかってたような気がするんだけど。

 するとクリスは、何やら図を描き始めた。

この子はマジで賢いから、俺たちが理解出来る図を描くことが出来るんだ。


クリスは家らしき四角と三角が重なった図を描き、その周りをぐるりと丸く線で囲った。なんだろう、これ……

クリスの身振り手振りと、4人で顔突き合わせて考えた結果、おそらくこうなんだろうということが読み取れた。

『村の周囲に結界が張ってある』って……


 新しい章が始まりました。

 頑張って書き続けますが、もし更新が滞ったら、「詰まったんだな」と笑ってスルーしていただけるとよろしいかと……


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