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04.それぞれにガンバル日々

 そうしている間にも、他の勇者3人とお互いのことを話した。

 その結果、同じような“現代日本”から来ているものの、歴史上の出来事では結構違っていることがわかった。


 まず火村の世界だが、なんと『本能寺の変』が起こっておらず、織田幕府が開かれ、それなりに続いたという歴史があった。

 結果、首都は“名護屋(誤字にあらず!)”で、“堺”が“大阪”に当たる一大商業都市になっているそうだ。当然、関東地方は地方都市が点在しているだけののどかな地域だという。


 水谷さんの世界は、『大坂の陣』がなくて豊臣家が徳川家に恭順して生き残り、東は徳川幕府が治め、西は豊臣家を中心として豊臣恩顧の大名が残り、結果として東西の二大地域に分かれた一種の連邦国家としての体制がかなり長く続いたらしい。

 経済の中心はそれぞれ“江戸”と“大坂”に分かれ、純粋な首都だけの機能を中間点に当たる“名古屋”が担っているという。


 土屋さんの世界は、南北朝時代に紆余曲折があり、南朝が残って朝廷に戻り、その後の歴史も少しずつずれながら俺たちの世界とそう大きくは違わない歴史を歩んだそうだ。

 ただ、やんごとなき方々の血筋が全然違ってるわけだけれども。


 最終的な到達点である“現代”は、ほぼ同じような状況となっているため、細かい固有名詞に違いはあっても、大体話が通じる。

 だから、話をするだけで多少は精神的にほっとする。

 いくら言葉が通じると言っても、話が通じなければ疲れるし。


 その後俺たちは、少しずつ戦闘訓練を受けるようになった。

 どんな武器を使うのがいいのか、自分ではわからないし。

 何度か試しているうちに、火村は長柄武器、俺は長剣、水谷さんは武器より魔法、土屋さんは短槍に適性があるとわかってきた。


 一度適性がわかったなら、後はそれを徹底的に訓練するだけだ、ということになり、ぼちぼち訓練が本格化してきている。

 最初は、武器を扱うための体の使い方。力自体は、召喚時にすでに身についていたから、後は使い方なんだっていうことで。


 そうしていじっているうちに、火村は同じ長柄の武器の中でも斧槍(ハルバード)が特にお気に入りになったようで、そればかり使うようになっていた。

 ただ、斧槍(ハルバード)は狭いところだと性能が発揮出来ないので、予備武器として小剣も扱わされているけど。

 土屋さんは、短槍を振り回すのが板についてきた。

 俺は、長剣が何とか振るえるようになってきた。

 もちろん、ド素人がちょっとは見られる形になってきた、ってだけだけど。


 その間早見さんは何やってたのかというと、城の書庫で調べ物をしたり、一足早く城下に出て街を見てきたり、城の文官の人たちと何やかや話をしていたりした。

 ひとりだけ、先に城下に出ていてずるいな、と思ったら、早見さんに言われたんだ。


 「遊びに出ていたんじゃない。調査だ。ちょっと、確認したいことがあったんでね」


 何を調べてたのかと聞いたら、『まだ確証が持てないから、言えない』と来た。

 はっきりしたら伝えるから、と言われしぶしぶ納得した。

 大人はずるい、と思わず口に出したら、早見さんは笑いながら言った。


 「言っておくけど、この世界の成人年齢は15歳だ。君たち全員、すでに成人だよ」


 自己紹介の時に年齢を言ったことで、全員成人しているものとみなされているという。マジっすか、それ。

 いろいろ聞いてみたら、マジだった。

 召喚した人たちも、『ちゃんと成人している人たちが来てよかった』と本気で思っているとわかった。

 それを他の勇者たちに伝えたら、全員微妙な顔になった。

 だって俺たちの世界では、法律上は18歳、実際には20歳過ぎないとなんだか落ち着かないって感じなんだ。タバコや飲酒が解禁になるのも、20歳だし。この点は、全員が同じ感覚だった。

 道理で、訓練が容赦ないと思ったよ。要は、大人相手として扱われてたわけね。


 武器での戦闘訓練を引き受けているのが、アストリッド王女の護衛騎士であるシャルロッテ・ヴィン・ヴォードガンという女性。

 昔は、騎士職というのは男性限定だったらしいんだけど、続く戦乱に人手不足となって、女性でもなれると変わったんだそうだ。

 王女様は“魔法の天才”と呼ばれ、この人は“剣術の天才”と呼ばれているんだそうだ。

 他の騎士や兵士たちは、魔族との戦いのため、ごく少数の交代要員を除き、とてもこちらに手が回らないらしい。

 しかしこの女性騎士様の戦闘訓練が、かなりきつい。

 だって全員、そんなこと元の世界でやったことないんだもの。

 体力的なものは足りてるが、技術(スキル)が全くない俺たちでは、女性騎士様に全然歯が立たない。

 一応、火村はサッカー部だったそうだが、だからといって戦えるかと言ったら、それは無理ってもんで。

 俺は“帰宅部”だったし、水谷さんは手芸部、土屋さんは郷土史研究会だったそうで、そんな文科系の面子がガチ戦闘なんてねえ……

 よって、とりあえず付け焼刃でいいから形だけでも戦闘が出来るようにして、後は魔物討伐で経験を積み、レベルアップを目指すことになっている。

 ちなみに、魔法使いとしての資質が高い水谷さんは、アストリッド王女様自身が、手ほどきしている。

 武器の戦闘訓練やってる、俺を含めた3人は、すっかり手がマメだらけで、最近やっと筋肉痛が起こらなくなってきた、って感じ。

 魔法の訓練をしている水谷さんは、毎日魔力切れ状態になるまで魔法を撃たされているらしい。

 しかも、時々武器訓練と魔法訓練が入れ替わり、俺たち3人が魔法の訓練を受け、水谷さんが武器の訓練をするときもあった。

 武器を扱っている3人だって、魔法が使えないわけじゃないし、水谷さんだって、魔法が打ち止めになった時には武器を手にしなければならないから。

 水谷さんは、小剣の使い方を叩きこまれているらしい。

 この世界、魔法を使うのに杖とかいらないそうだし。実際、杖使わなくても、魔法使えたし。

 お互い顔を合わせると、『疲れたね~』と言うのが日課になってきた。


 ちなみにこの世界では、魔法は大きく分けて2種類存在するという。ひとつは神の力をその身に降ろして使う神聖魔法、もうひとつが精霊の力を使う精霊魔法だ。

 それぞれ精霊神の加護を受けているということは、その精霊魔法に対して飛び抜けて高い親和性を持っているということなんだって。

 精霊魔法を司る精霊神と、神聖魔法を司る神々との違いは、精霊神ははっきりとした意思を持たず、それぞれの精霊を象徴する“力”を司っているだけなのだそうだ。

 他の神々はいわゆる人格神で、いわば神話に出てくる神々のように、自分の意志の元に動いている。

 その神の力を自分に降ろして使う神聖魔法は強力だが、体に負担がかかるので、その人の体力や精神力との兼ね合いで、1日に何回使えるかが決まるのだそうだ。

 多い人でも1日4~5回が限度で、それ以上は体が拒否反応を起こして、運が悪いとショック死することもあるらしい。

 もっとも、『これ以上はヤバい』と本能的にわかるそうなので、命を落とす人はまずいないんだそうだ。

 あと、怪我には絶大な効果があるが、病気の場合は効き方にムラがあるという話もあるんだって。


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