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勇者として異世界召喚されたんだが、巻き込まれて一緒に召喚された人が実はヤバかった件  作者: 鷹沢綾乃
Act.2 戦乱の先へ

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09.とうとう来たぁ~!

 多少の紆余曲折はあったけど、なんとか落ち着き、夕食(これまた代わり映えしないポトフもどきと黒パン)を食べ、夜の見張りをやる人たちを除いて、眠りにつくことになったけど……

 着いた時から、なんか変だなと思っていたんだけど、ここ、見張り台みたいなものがなかったんだ。

 普通、そういうのって、あるよね?

 聞いたら、ここが作られた時はあったんだそうだが、最初の襲撃で火魔法で攻撃されて焼け落ち、それから建て直す余裕がないまま来てしまったんだそうな。


 それ聞いたら、すっげぇ不安になった。不意打ち喰いやすいんじゃないかい?

 正直、気が高ぶって寝付けない。


 「たとえ眠れなくても、横になって目を閉じているだけで少しは違うから、そうしたほうがいいよ。もしかしたら、そのうち眠れるかもしれないしね」


 早見さんにそう言われ、取りあえず横になって目を閉じる。

 他の3人も、同じようにしたようだ。

 なんせ、最低限の松明の明かりしかないから、手元が何とか見える程度で、暗くなっちゃうと全体が見渡せないんだわ。

 壁際には、ところどころに松明が灯されているんで、その辺りだけは様子がわかる。

 周囲に人の気配はするけど、皆ろくに話もしないから、辺りは静かだ。

 気が高ぶってるとは思ってたけど、しばらくそんな状況で目を閉じていたら、どうやらいつの間にか眠ってたらしい。


 (起きろ! 敵襲だ!)


 突然、頭の中に声が響く。慌てて飛び起きると、まだ暗い中にぼんやりと、本性を現した状態の早見さんの姿が見えた。


 何やってんの!! ばれてもいいの!?


 心の中で絶叫していたら、再び頭の中に声が聞こえた。


 (<認識阻害>を最大限にしているから、君以外の人間に気づかれることはまずないよ。それより、ぐずぐずしていると、()()に遭うぞ)


 俺の頭の中で聞こえるこの声は、どうやら念話(テレパシー)らしい。

 俺、そういう能力ないはずなんだけど……というのは今は置いといて、空襲!?

 空襲って言ったよね!!


 (ああ、そうだ。今現在、約2キロ先から、速足で歩く程度の速さでこちらに移動してくる飛行物体が5つある。大きさから言って、人間大だから、敵襲だろう。あまり時間はないぞ)


 え、え、えぇ~!?


 そういえば、どこぞの都市国家が空中から襲われて滅ぼされたって話があったっけ。

 それかよ!!


 慌てて時計を確認すると、午前4時になる少し前。

 夜明け前に、襲ってくるか?


 (奇襲をかける場合、『夜討ち朝駆け』というからね。夜のうちか、朝方というのが基本だ)


 とにかく早見さんから言われたのは、時計の文字盤を思い浮かべて、俺の正面を0時として、10時の方向から敵が近づいてきているという。

 急いで対処しないと、まだ誰も接近に気づいていないから、不意打ちで魔法を撃ちこまれることになると警告された。


 (相手は上空から来る。空に注意していなければ、不意打ちは避けられない。早くほかの勇者に知らせて、魔法で撃ち落とすんだ。君たちなら、迎撃出来る)


 俺は慌てて仮眠中のほかの3人を起こし、敵襲だと伝えた。

 他に説明のしようがなかったんで、俺の直感だと伝えた。霊感があるんだと告げた上でね。


 「マジか!? ほんとに来るんだろうな?」

 「マジだよ! 俺、こういう時の嫌な予感って、すごく当たるんだ」

 「確かに、時々『嫌な予感がする』って言ってたものね。それで確かに、厄介なことが起こってたから、直感だからと馬鹿に出来ないかもね」

 「それより、ほんとに来るの? どっちから?」


 俺は、早見さんに言われた方向を指さした。


 「こっちだ。魔法で空を飛んでくるみたいなんだ。魔法を撃ちこまれる前に、魔法で迎撃しないと」

 「よく、そんなことまでわかるね?」


 土屋さんから突っ込まれたが、こればっかりは信じてもらうしかない。


 (魔法で迎撃するつもりなら、MPを余分に消費して、射程距離を延ばした方がいい。同時に撃ち始めたら、上空から丸見えになってる敵のほうが有利だ)


 早見さんに指摘されたことを話すと、皆怪訝な顔になった。

 そりゃそうだ。MPを余計に消費して射程を延ばすなんて、一度も聞いたことはなかったからね。

 でも、早見さんに言われたんだ。


 (僕が見る限り、この世界の魔法は想像力(イマジネーション)だ。この世界の人たちは、今までの先入観というか、経験則があって、そこから逸脱することは難しい。でも、君たちはそれに縛られることはないんだ。それこそ、元の世界で“ゲーム”や“漫画”や“アニメ”でさんざん見てきただろう?)


 確かに。

 俺、試しに余分にMPを込めて、風の刃(ウインド・カッター)を斜め上空に撃ってみた。射程延びろって念じながら。


 ……マジで延びたよ。本来大体50メートルくらいの射程が、倍近くまでになってた。


 (威力を上げる必要はない。数を撃つんだ。弾幕を張る、と言ったほうが、わかりやすいかな)


 俺の魔法の射程が延びたのを見て、みんなも改めて納得してくれた。

 俺たちは、陣地に詰めている騎士や兵士に物陰に隠れているように告げ、上空からの攻撃に備えることにした。

 もうすぐ、敵が姿を現してくる……はずだよな?


 (雲が厚く垂れこめているのでなければ、空のほうが少し明るいんだ。暗さに目が慣れれば、空にあるものはシルエットとして浮かび上がってくるはずだ)


 早見さん、すっげぇ的確にアドバイスしてくれるな。まあ、詳しいことはあとで訊こう。

 今回、水谷さんは万一に備えて<回復>のためにMPを温存。

 俺と火村、土屋さんで迎撃することになった。

 そして、それは本当に姿を現した。


 初めからそちらの方向を注意していたから気づけたが、そうじゃなかったら気づけなかったかもしれない。

 上空に、5つの黒い点が姿を現した。俺たちは、延ばした射程ギリギリまで相手を引き付けると、射程に入っただろうところで、とにかく魔法を撃ち始めた。

 威力は上げず、とにかくひたすら数を撃つ。

 相手は、不意を突かれたらしく、上空でバタバタと動いたのがわかったが、そのうち魔法で撃ち抜かれたか、ひとりがバランスを崩して落下。

 他の連中も、俺たちが飛ばす魔法から身を守るのに精いっぱいで助ける余裕がないようで、そのうちMPが尽きてきたのか、もうひとり落下。

 こっちのMPがそろそろヤバいな、と思う頃に、残り3人が次々落下。

 辺りがまだ暗いんで、落ちた連中がどうなったのか、わからない。そもそも一応土壁に囲まれているんで、その上に顔を出さなきゃ地表の様子なんかわからないけど。


 (敵の本隊は、まだ近くはいない。休息時間はあるよ)


 早見さんの念話(テレパシー)が聞こえ、俺はひとまずこれでちょっと余裕が出来た、とみんなに告げた。


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