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勇者として異世界召喚されたんだが、巻き込まれて一緒に召喚された人が実はヤバかった件  作者: 鷹沢綾乃
Act.1 異世界召喚

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23.人間レーダー!?

 この世界の人食い鬼(オーガ)は、首がちぎれているんで正確じゃないけど、大体身長が3メートル以上、毛深く浅黒い肌にゴリラをもうちょっと凶暴にしたような顔で、牙は確認出来るけど、角とかはなさそう。腰のところに何かの動物の毛皮を巻き付けていて、ごつい棍棒を持っていたみたいだ。一緒に埋められてたし。


 「……こいつは、今の勇者たちの実力では、4人がかりでどうにかなるか、というほどの魔物だ。それが、あっさり首を引き千切られている。一体、どんな存在が、これをやったのだ……?」


 シャルロッテさんが、半ば当惑、半ば警戒の表情で、埋められていた人食い鬼(オーガ)の死体を見分している。

 しかし、こんなことが出来る存在など見当がつかず、しかも死体を隠そうとした行為が理解出来ず、結局さじを投げた。

 さっさと荷物をまとめ、一刻も早く帰還するに越したことはない、という結論になったのも、仕方がなかったよねえ。


 実際、二人きりになった時、確認したら、当然早見さんが犯人だった。

 一番厄介なタイミングでやつが現れ、しかも俺たち(獲物)の匂いを嗅ぎつけて、こちらに来ようとしていたんだと。


 「面倒な事態になると思ったから、始末しただけだ。ただ、時間がなかったのと、目視しながらやったわけじゃないので、後始末がずさんになって、見つけられてしまったけどね」


 俺たちは、全然気づいていなかったけど、早見さんは気配でこいつの存在を察知して、あっさり()ったらしい。

 ちなみにその時早見さんは、例のクリスの光学迷彩で切り株っぽく偽装した状態で、俺たちの戦いの様子を見ていた。

 だから余計に、早見さんの動向に誰も注意を向けていなかった。

 ……やっぱり無双してるじゃんか。


 とにもかくにも、すでにキャンプは引き払ってあり、その後は元々帰るだけだったので、警戒しながらも全員とっとと城へと帰還した。

 ……警戒する必要、全然なかったんだけどね。

 まさか、同行者が犯人だなんて、俺以外誰も考えてないもんな……


 無事に(?)、部屋まで帰りつき、前回と同じくひと風呂浴びて落ち着いて、そこで改めて早見さんに人食い鬼(オーガ)のことを聞いてみた。


 「()()()ったのが早見さんだってことはわかったけど、やっぱりかなりヤバそうだって思ったの?」

 「ああ。シャルロッテさんも、言っていただろう。『今の勇者たちの実力では、4人がかりでどうにかなるか、というほどの魔物だ』って。つまり、君たち全員が全力で立ち向かって、やっと渡り合えるほどの力の魔物ってことだ。()()がこちらに来ようとしてたのは、強くはないが数で押してくる犬に似ている魔獣の群れとやり合ってた時だったからね。騎士の2人も、そちらに意識を持っていかれていたから、絶対に不意打ちを喰っていた」


 あんなのに不意打ちを喰らってたら、どうなってたかわからない。

 それを考えれば、早見さんには感謝しかないはずなんだけど……“魔王様”だよなぁとしか思えない……

 そして俺は、さらにあることに気が付いた。

 早見さんは、いつ人食い鬼(オーガ)の存在に気づいて、始末したんだろう?

 最後の魔獣討伐をしていた場所から、()()が埋められていた場所まで、どう考えてもたっぷり150メートルはあった。

 気配を感じてって言っても、そんなに離れていてわかるもの?

 障害物のない草原ならともかく、見通しの効かない森の中だったんだよ?

 俺の問いかけに、早見さんが答えた。


 「……なんとなく探る感じなら、半径200メートルちょっとだね。意識的に探るなら、半径500メートルぐらいまでいけると思う。だから、()()の存在にもすぐ気が付いた。あとは、その気配に意識を集中させれば、そいつに対して<念動(サイコキネシス)>をかけることも出来るからね」


 ほとんどレーダーじゃね?

 この世界の人が、誰も気づかないレーダー。

 おまけに、本性を現していれば、キロメートル単位で感知可能と来た。

 ……やっぱりシャレになってないぞ、この人。

 しかも、俺たち勇者4人の気配は完全に把握したので、誰がどこにいるか、探ろうと思えば探れるそうだ。『プライバシーの侵害になるから普段はやらないけどね』とは言ってたが。


 ちなみにこの世界、当然だけど銃器はない。火薬が発明されていないんだ。

 前に他の勇者たちと、『火薬がない世界なら、自分たちが火薬を作ればいろいろ出来るんじゃないか』って盛り上がったことがあったんだけど、早見さんに冷静に突っ込まれた。


 『火薬を作るって言っても、材料は知ってる? その分量の内訳はわかってる? それがわからなければ、それこそ“絵に描いた餅”だよ』


 誰もが、一瞬で凹んだ。うん、そう言われると、俺たちはそういう知識は何もない。

 火村なんかは、恨めしそうな眼をちょっと向けたけど、早見さんに目の笑っていない笑顔を向けられて、撃沈してた。

 あれ、意外と迫力があるっていうか、美形だからこそ、怖いんだよ、あの表情。


 それはともかく、銃器がないっていうのは、長射程攻撃がないってこと。

 魔法の射程が、最大で50メートルぐらい。弓矢のほうが射程は長くて、最大射程で150メールぐらいは飛ぶらしい。

 もっとも、最大射程と当たりやすい射程距離(有効射程)は違ってて、大体半分ぐらいの75メートルぐらいが、よく当たる距離なんだそうだ。

 それを考えると、早見さんの“漫然としてて半径200メートル、集中すれば半径500メートル”という感知距離のすごさがわかる。


 それでも早見さんは、クリスに偵察をしてもらうこともあるだろうってことを話した。

 何で?

 まず不意打ちは喰わないでしょ?


 「確かに、気配で魔物や魔獣などか、そうでないかはわかる。でも、それが人族だったら“人族だ”と言うところまでしかわからないんだ。それが、そこらの村人だったら問題はない。でも、野盗の(たぐい)だったら? さすがに見ず知らずの存在の場合、気配だけでは、見分けはつかない」


 ……やっぱりそういうの、居るんだね……


 「ああ。しかも、こういう世界だから、襲う相手に情けなどかけない。若い女性なら自分たちの欲望のはけ口にした後、どこかに売り払うだろうし、男だったら皆殺しにするのも躊躇(ためら)わないだろう。だから、心の準備をするためにも、どういう連中が近づいてきているのか、偵察する必要は出てくるのさ」


 俺はこの時、話の流れでこういう話になったのだと思っていた。

 早見さんは、まったく別な意図を持って、意識的にこの話をしていたんだって、後になってわかったんだよな……


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