20.新たな展開ってヤツ?
それはともかく、巡察隊が去って行った後、ちょっと早めだけどこのまま昼食を済ませてしまおうということになり、土魔法で小さいかまどを作ってお湯を沸かし、お茶を入れた後、干し肉や焼き締めたパンといった保存食をかじった。
夕食には、もうちょっと手の込んだものにしようってことにはなったけど、こんな狭いところでは、そうゆっくりも出来ないもんな。
……なんだかんだで慣れてきてるのが、なんかわびしいけど。
昼食後、さらに歩き始めたんだけど、方向としてはあの巡察隊が向かった方向とほぼ同じになった。
少し時間をつぶしたから、巡察隊はそれなりに遠くまで行っただろうし、連中が向かった方向には集落か何かがあるんじゃないか、って話になったから。
そうして歩いて行ったら、遠くに集落らしきものが見えてきた。
ひとまずクリスに偵察に行ってもらうことになり、さっそく光学迷彩をしたクリスが、ゆっくり目に近づいていく。
そして、しばらくして帰ってきて、身振り手振りでの報告によると、“人族の住んでいるところで、結界はなし”……
え、結界なし?!
これには、全員驚いた。結界が張られてないのか!
でも、なんで?
「なんで、結界が張られてないんだ? 山向こうじゃ同じくらいの大きさの村、しっかり結界張ってあったぞ」
火村が、わかんない~と顔に書いてあるのが丸わかりの表情で、首をひねる。
「それはきっと、いざというときすぐさま鎮圧部隊を派遣出来るかどうか、ってところで対応がわかれてるんだと思うよ」
早見さんが、自分の推測を話してくれた。
山向こうは、山を越えているだけに、反乱のようなことがあっても、すぐさま部隊を派遣出来ない。
街道は山を大きく迂回してるし、山には大勢の部隊がすんなり移動出来るような道なんかない。
俺たちだって、一列になって通るのがやっとの獣道を越えてきたんだから。
だからこそ、反乱など起こせないように分断しておく必要があった。
だから、結界を張って町や村を封じていた。
でも、こちらは素早く部隊が展開出来るから、仮に反乱があったとしても、大きな勢力になる前につぶすことが可能。
だから、結界を張る必要などないのではないか、と。
なるほど~なんか納得。
もちろん、早見さんは『ただの推測で、正しいとは限らない』と付け加えたけど、まず間違いなくそうだろうなって思う。
だって、結界を張るにしても、結構手間じゃん?
しかも、中の人たちがちゃんと暮らしていけるように、物資を届けなくちゃいけないんだし。
その手間考えたら、なんでわざわざって思ってたんだよね。
反乱の芽を摘むっていう意味でなら、確かに納得出来るよね。
しかも、今現在最前線になっている場所からも、近いんだし。
でも山を越えたこちら側なら、そこまで手間かけなくても、普通に抑えられるって考えたんだろうってことは、すぐに考え付くもん。
「そういうことなら、確かに納得出来るわね」
「ほんとほんと。なら、せっかくだし、行ってみない?」
水谷さんと土屋さんが、そんな会話をしている。
「近づくのは、ちょっと待った。風間君の風魔法で、村人がどういう暮らしぶりをしているのか、確認してからでも遅くはないよ」
早見さんが、俺の顔を見る。
そうだよな。まだ、村の様子が全然わかんないもんな。
俺は風魔法を最大限に発動させ、風に混じる音を拾った。
で、その結果、村人たちは占領者である有角族のことを、そこまで悪くは思っていないようだとわかった。
村に駐留(?)している有角族の兵士が2人ほどいるらしいが、こいつらがまじめに治安維持だの魔獣討伐だのをしているため、村人に受け入れられているらしいんだ。
有角族による駐留が始まってから、かえって余計なもめごとが減り、村の空気がよくなったらしい。
「……そういう村だと、うかつに近づけない。何せ僕たちの立場は、最終的には停戦を目指すものではあるけど、今のところは敵対勢力そのものだからね」
早見さんの言葉に、みな考え込んだ。
有角族が村人から反発を受けているのなら、接触しても大丈夫だろうが、今の状況だと、下手をすれば村人から報告が上がり、俺たちの存在が有角族側にバレバレになる可能性があるっていうんだわ。
でも、せっかくだから村人と話をして、詳しい事情を訊いてみたい。
なんか方法ないかな、と思っていたら、水谷さんがこんなことを言い出した。
「私の<幻術>で、有角族のように見せられれば、村に入れるかもしれないわ」
確かに、今までだって目元を誤魔化していたんだもん、もうちょっと広範囲に<幻術>を使って誤魔化せれば、有角族みたいに見せられるかもしれないな。
で、せっかくだから試してみようってことになって、人目につかない藪に囲まれたところに移動し、有角族に見せかけられるかどうかやってみることになった。
で、実験台は火村。
早見さんのアドバイスで、頭の部分だけそう見せればいいってことになって、<幻術>をかけまくることに。
1回目や2回目は全然似ても似つかないものになったけど、3回、4回と繰り返すうちに、だんだんそれっぽくなってきて、ついに6回目に有角族そっくりな姿になった。
火村の頭の両サイドからは、ヤギみたいな角が生えてるように見える。
どのくらい持つものか、自然に魔法が解けてしまうまで、放置してみることになったんだけど、結局2時間くらいで角が消えてなくなった。
2時間かぁ。
何とかなるかなあ。




