19.かつて何かあったかもしれない?
明けましておめでとうございます。
今年も頑張って書き続けますので、温かく見守っていただければ、幸いです。
本年もよろしくお願いします。
ただ、シェルターの内部は、埃まみれの蜘蛛の巣に半分覆われ、掃除しないとちょっと……という感じだった。
どうしようかと思っていたら、早見さんがぽつりと言った。
「……掃除するくらいなら、このまま進んだほうがいい。下手にきれいにすると、不審に思われる……」
「え、だって、人の行き来なんてないんだろ? だったら、いいじゃん」
火村が反論すると、早見さんは真顔になって言った。
「確かに街道はさびれてると思う。でも、人の行き来が全くないとは思わない。よく見てごらん、道を外れたところに、何らかの足跡が見えるよ」
足跡~?
言われてみると、そういやなんだか足跡のようなものが、乾いた砂混じりの土の上にちょっとだけついている。
なんだろ、あの足跡。
消さないように慎重に近づいて、【鑑定】をかけてみた。
『“ガルーボ”の足跡の可能性が高い』
ガルーボっていうのは、俺が“色違いのチョ〇ボ”って呼んでたあの鳥のこちらでの呼び方。
それの集団が、通った跡らしい。
でもそれが何か……?
「気が付かないのかい? あんな足跡が消えやすいところに足跡が残っているということは、ついさっき、通ったばかりってことだよ」
あ、そうか!
あんな足跡、強風が吹いたり、ひと雨降ったりすれば、簡単に消えちゃうじゃないか!
ってことは、本当についさっき、集団で通ったってことで……
「ちょっと嫌な予感がするんで、近くの藪に隠れたほうがいいかもしれない。この足跡を付けた連中が、戻ってくるかもしれない」
早見さんの言葉に、みな顔を見合わせながらも、近くの藪の中にもぐりこんで、中にちょっとだけあった空間に座った。
5人も入るとちょっときついけど、みんなが座ることが出来るぐらいの広さがかろうじてあったから。
嫌な予感って言ってるけど、実際は超感覚で感知したんじゃないかって思うんだけど。
そうやって藪に隠れて間もなく、遠くから動物が走る足音のような音が聞こえてきた。
藪を透かして見ていたら、ガルーボに乗った有角族の一団、どう見ても、連中の騎士階級だなって装備を身に着けたのが、かなりの勢いで通り過ぎて行った。
その数、さっと6~7騎。
それにしても、あの連中なんだか妙に一目散っぽく走ってったな……
「……ねえ、さっきの一団、あの廃村のほうから走ってこなかった?」
水谷さんが、疑問の声を上げる。
あれ、そういえば……
「確かに、ヤツらの来た方向って、あの廃村の方向だな」
火村もうなずいた。
でも、どういうこと?
「あの連中は、おそらくこの地域の巡察隊なんだと思う。近くの駐屯地から、このあたりの様子を見回ってるんだろう。もしかしたら、あの廃村のあたりも、管轄なのかもしれないね」
早見さんの言葉に、なるほどとうなずく俺たち。
でも、またちょっとした疑問がわいてきた。
「でもさ、さっきのスピード、すっごく速かったよ。あんなに勢いよく走って、見回りになるの?」
土屋さんの疑問に、そういやそうだとなった。
「……もしかしてなんだけれど、有角族もあの廃村の怪異に巻き込まれたんじゃない? そうなら、遠目に見るだけ見て、ダッシュで戻ってくるって対応になってても、不思議じゃないわよ」
水谷さんの推測に、アッと思った。
そうだ、巻き込まれてれば、危険地帯扱いされて、逃げ帰るような対応になっててもおかしくはないぞ。
「……そういえば、あの動く骸骨の中に、妙なのがいたな。頭蓋骨の両方の側面が、かなり大きく破損してるヤツが2、3体いたんだ。あれが、角の生えていた部分が欠け落ちたと考えれば、つじつまが合う」
早見さんまで、そんなことを言い出した。
でも、それがほんとなら、普通の人族とは比べ物にならない能力を持っている有角族が、あっさり動く骸骨にやられちまったってことになるんだけど……
「言っとくけど、あの村は特別だ。かつての村人の残留思念が焼き付き、あの村の中はある種の結界になっているって言っただろう。結界の中に入り込んでしまえば、敷地の中から出られなくなるのは、いくら有角族であろうと同じこと。僕が守りの結界を張っていたから君たちは無事だったけど、そうじゃなかったら金縛りにあって動けなくなっていてもおかしくない。これは、魔力が多かろうと何だろうと、霊的な力に対抗出来なければ金縛りにかかる。一度そうなってしまえば、あとはなすすべなんかないよ」
……金縛りで動けなくなったまま、動く骸骨に襲われたら……
考えただけでぞっとする。
で、無念の思いを抱えて死んだら、この世界ではやっぱり不死者の仲間入りってことになるみたい。
……そういう意味では、嫌な世界だなぁ……
こっそり早見さんに確認したら、あの廃村、まだ残留思念は残ってるそうだ。
ただ、早見さんが動く骸骨をすべて祓い清めたんで、徐々にそれは薄れていって、あと10年ぐらいで消えるだろうって話だったけど。
「残ってるといっても、もう結界の中に封じ込められるほどじゃない。妙な物は見るかもしれないけど、それだけだ」
「……妙なものって……?」
「まあ、動く死体の幻覚を見るぐらいだよ。実害はない」
……それって、下手したらトラウマものなんでは……?
それで、実害なし?
そう思ったら、早見さんにとっての実害って、実際に健康被害が出たり、場合によっては命を落としたりするほどの害が出た場合に“実害”となるんだそうな。
元の世界でも、まれにそういうことを引き起こす悪霊や怨霊は出るそうだ。
……それってシャレにならないんでは……
ちなみに、早見さんが本性を現して全力で浄化したら、完全にまっさらに出来たらしいけど、曰く『そこまでする義理はない』だって。
まあ、そうだよな。動く骸骨を全部きれいに祓い清めただけで、もう充分すぎるくらいだもんな。
しかし……俺たちがいた元の世界って、意外と物騒なのでは……?
「いくらなんでも、“実害”が出るほどの存在には、そうそう出くわさないからまず大丈夫だよ」
そう願いたいなあ……




