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森の童子  作者: 日向彼方
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紅き夜

【残酷な描写】事件・火災等の描写があります。


私が八歳のクリスマスイブの日、両親と一緒に明叔父さんが島にやって来た。

皆で夕食を食べている時、明叔父さんに

「ねぇ、“神様の湯”ってどこにあるの?」

いきなり聞かれて私は困った。

秘密の話を父が叔父さんに話してしまったのだ。

話したであろう父はもう忘れていたのだろう、不思議な顔をしている。

祖母の顔を見ると困った顔をして、

「子供の遊び場のことですよ」そう誤魔化した。

「でも、本当に洋子ちゃん咳をしなくなったよね」

叔父さんはしつこく語りかけてくる。

「大きくなって身体が丈夫になったのね。良かったわ」

母の助け船だった。

父が睨むとそれ以上叔父さんは聞いてこなかった。

しかし明叔父さんは夕食後にこの島にリゾート施設を作りたいと言い出した。

祖母はまた困った顔をしていた。

小学生の私には難しい話で眠くてあまり覚えていない。

ただ、「温泉があるなら……」だけ聞き取れた。

私のせいで祖母が困っていると理解できたが、睡魔が思考を停止させた。


 明叔父さんは本気でこの島にリゾート施設を作ると宣言し、しばしばこの島を訪れていた。

島民を集めて森の土地を買い占めようとしていた。

初めは島民の意見が賛否両論で、温泉リゾート化には島民の半分が反対した。

反対派のリーダーが陽くんの父、神道忠陽だった。

しかし、森を半分以上壊す計画を知って、一ヶ月も経たずに島の賛成派が激減してくる。

一度島民と喧嘩している凄く怖い声を聞いた。

私は叔父さんが怖くて仕方が無かった。


 私が知る限り初めて祖母が熱を出して寝込んでしまった。

そんな時火災が起こった。雪がちらつく寒い夜だった。

階段の上が赤々としている。

夜の空が異質な空間を作り上げて幻想的だった。

神社の裏の陽くんの家が燃えていると大騒ぎだった。

放火も疑われたが、すぐに火元は天ぷら油と特定された。

火事が起こった時、一番疑わしいとされた叔父さんは夕方のフェリーでこの島を出た後だった。

また島民は皆自宅にいたし、不審な人物が居たという情報も無かったからだ。

陽ちゃんの家は火事で全て消えた。

灯油に燃え移りあっという間に家は炎に包まれたらしい。

神社の裏側も一部が焼失した。

大人二人分の遺体が発見された。たぶんおじさんとおばさんのものだろうと……。

そして、陽くんは行方が解らなかった。

逃げようとして裏の崖から落ちたのではと言われた。


紅い空を見ながら私は倒れてしまったらしい。

私の記憶から島の事が消えた。

火災の後すぐに私は両親と共に東京に帰って転校したのだ。

帰ってきてからは私も両親も島の話を一切しなくなった。

今日まで島での事と神道家の記憶が綺麗に無くなっていた。


拙い言葉の羅列ですが、読んで頂き有り難うございます。

感想等いただけると幸いです。

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