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森の童子  作者: 日向彼方
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隠れ家

「なんてことを。私が宝生家の旦那と関わったばかりに……」

「お婆ちゃんは何も悪くないわよ……たぶん」

祖父には奥さんがいたのだと思い出してしまったのは内緒だ。

「そうだよ。悪いのはこの人と絢美って人だ」陽くんが強く私に同調してくれた。

「その通りです。俺あいつを連れて自首します」

叔父さんはまた頭を畳に擦りつけている。

話を聞くと、絢美さんの兄は良くない人たちと関わりがあるようで、隣の大島に数人の男性を連れて来ているようだ。

「暫く姿を隠すのはどうだい?」

「どこに?」

「橋もフェリーも待ち伏せされているはずだが」

「陽くんにお願いしてもいいかい?」

祖母が尋ねると顔を赤くした陽くんが頷いた。

「二人っきりで?」叔父さんが心配そうに声を掛けてくる。

「大丈夫よ」祖母の笑顔が少し怖い。

三日程、森に二人で隠れることにした。

一応念の為『後部座席に隠れてフェリーに乗りました』と携帯に嘘の連絡を入れておく。

これを見て諦めて帰ってくれると良いのだが……。

叔父さんが付いていると言ってもやはり祖母が心配だ。

大丈夫だと笑って私達を送り出してくれる。


 昔のように二人で目を閉じて御神木の元に行くことが出来なくなっていた。

「ごめん」と陽くんが力なく謝る。

「大丈夫よ」私は不安を見せない様に頑張った。

鳥居に向わず違うルートで森に入ることにする。

森に入り足跡を消しながら御神木に進んでいく。

彼が御神木に触れると、昔のように小さな穴が広がり入り口が出現する。

御神木は私達を受け入れてくれたが、私は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

私は深く一礼して入って行く。

借りてきた真新しい茣蓙(ござ)を開くとい草の良い匂いが湯の間に広がる。

お菓子を並べると遠足のようだ。

緊張していたせいか横になるとすぐに睡魔が襲ってくる。

彼は入り口の方の様子を確かめていてくれる。

私が目覚めたのに気付き、彼がこちらに戻ってきた。

茣蓙の上に座りなおすと、彼も隣に腰を下ろした。

そっと手をつないだ。

私は指を絡ませての恋人つなぎに握りなおした。

陽くんは驚いた表情から少し恥ずかしそうな表情になり、顔を上げ小さく微笑むと私の唇に優しくキスをした。

そのまま私たちは愛し合った。

御神木の葉がザワザワと音を立てていることも気付かなかった。

読んで頂き有り難うございます。

感想等いただけると幸いです。

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