デート
陽くんを家に連れて行きお婆ちゃんに真実を話した。
祖母も陽くんを見て少し驚いていた。
陽くんの両親を殺したのは明叔父さんだが、放火は絢美さんだ。
事件の後明叔父さんが乗ったのは17:30のフェリーで間違いない。
翌朝に島中を探したが、島民以外誰も居なかったとの警察の発表だった。
あの頃あった駐在のお巡りさんと自警団の皆の調査結果だ。
放火は絢美さんがやったことだと陽くんと御神木が証言している。
間違いなく犯人は絢美さんだ。
「隣の大島までは700m!絢美さんなら泳げるわ」
絢美さんの趣味はトライアスロンだ。
叔父さんの家に居た時写真やトロフィーがあったのを思い出す。
穏やかなこの海なら夜でも泳ぐことは可能かもしれない。
大島の灯台を目指せばいいのだ。
「ただ、海の冷たさはどうにもならないかな?」
「あの日は雪がちらつくほど寒かったし」
もしそうなら最低でも事前にウエットスーツ等を用意していたことになる。
何のために……?
考えても解らないことばかりだ。
ただ祖母は「身内がすまないことをした」そう言って頭を下げていた。
陽くんは「大丈夫です」といいながら祖母の手を取る。
同時にお腹がグーと音をたてた。
一緒に朝食を取りながら、三人で話すが理解するにはあの時の私達は幼すぎた。
祖母は何か言いたげではあったが、まだ思案を重ねているようだった。
祖母は大人になった陽くんを見て
「そうだ、洋服を買いに行ってきなさい」
タキさんの車に二人無理矢理乗せられ大島の方に連れて行かれた。
軽自動車の後部座席に小さくなって座り込んだ陽くんがとても可愛い。
大型の洋品店でインナーもそれ以外も数点ずつ選んでいく。
何着も何度も着替えさせて楽しんだ。
靴も選んで、二十九センチもあることに驚いた。私は二十三センチしかない。
身長も百八十を優に超えている。
脚が長い。Gパンの裾を切らずに履けるのだ。逆に感心する。
店で着替えさせてもらい、お昼を近くのファミレスで取ることにした。
陽くんが熱々のグラタンに興味津々なのが面白かった。
帰りは二人でバスに乗って帰った。
一番後ろの席に座り、恋人つなぎをした。
まるで、中高校生のデートのようだ。
心がワクワクした。自分の気持ちがあふれ出さないように強く陽くんの手を握りしめた。
彼も耳を赤くしながらもう片方の手で二人の握った手を包み込んだ。
大きく優しい温かさだった。
「本当に叔父さんと叔母さんのことごめんなさい」
「そう思うなら、一つお願い事きいて」陽くんの微笑む顔が眩しい。
彼の髪を切ってあげた。
それが陽くんの願い事だった。
凄いイケメンに仕上がって皆驚いた。
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