帰島
―― ようちゃん! ――
この声で私は目覚めた。
梅雨前の爽やかな海風とフェリーの揺れが気持ちよく、デッキの椅子でいつの間にかうたた寝をしていた。
目の前を小さな男の子が走っている。
そのあとを若い母親が名前を呼びながら追いかけている。
この母親の声が私を起こしたのだとわかり、私は小さな欠伸をしながら立ち上がった。
フェリーの汽笛が鳴った。
もう目の前には緑の森に覆われた、懐かしい島が見えていた。
瀬戸内海に浮かぶ周囲七キロほどの小さな島だ。
島の中央には御神木と呼ばれている巨木が頭ひとつ飛び出して、その威厳を放っている。
この島で、九十歳をこえた母方の祖母 嘉神しのが、まだ元気に太公望相手に民宿を営んでいる。久しぶりの帰島だ。
今年が両親の十三回忌だから六年ぶりだ。
七回忌からあっという間に六年が過ぎていた。
この島でフェリーを降りたのは、私を含めたった三人だけだった。
あの親子も次の大島まで行くのだろう。
フェリーの階段を下りながら見上げると山の中腹にある神社の赤い屋根の部分が見えていた。
よくあそこで遊んでいた。
「 誰と? 」「 誰かと……? 」
拙い言葉の羅列ですが、読んで頂き有り難うございます。
感想等いただけると幸いです。